想い想われ?



04・史明視点




「んっ……はふっ……んんっ……」

2人で奪いあうようなキスを繰り返した。

この人と知り合ったのはついさっきだというのに……知り合ったばかりとは思えないほど
僕は彼女にのめりこんでた。

今まで知り合って、そのままその日になんていうことは随分昔にしたことはあった。
まだ自分のことを “俺” なんて言ってて、こんな丁寧な話し方じゃなかったころだ。

自分で言うのもなんだけれど、学生のころは “家” という鎖に束縛されることも多少あったけれど
それなりに青春を謳歌してたんじゃないかと思う。
その中で何人かとは付き合った経験もあるから、ごくごく普通の経験を積んだんじゃないかと思う。

日本に帰ってきて、自分がそれなりの責任を負う立場だと理解してからは、軽率な行動はしていない。
祖母の体調が優れなくなってからは、余計に女性関係からは遠のいた。

そんな自分が知り合って、間もない人とこんなキスをしてる。

でもナゼかやめられない……彼女も慣れているんだろう。
だからこんな、流れるようにお互いの舌が絡み合うんだろうか?

初めてのはずなのに、お互いのタイミングが合うような……
お互いの舌をどう動かせば感じあえるのかわかってるみたいな濃厚な大人のキスだ。

なにも考えず、無意識のまま彼女とのキスを堪能する。
目を閉じて、視界が何も映さない中、クチュクチュという音と時々聞こえる彼女の
ハァと息をつく音が聞こえてさらに僕の気持ちは高鳴る。

嫌がられてはいないと感じることができてホッとする。

安心しながら、ならばこのままこのキスがずっと続けばいいと思う。
そう思いながら、彼女の口内を自分の舌で犯し続けた。

彼女は最初から僕に優しかった。
だから、僕を心配してくれていると感じたら、彼女に近づきたくなってしまった。

彼女から伝わって来るのは、僕を無条件で受け入れてあげるという優しさだった。

僕はその優しさにどっぷりと浸かりながら、少しでも僕の気持ちを彼女に返せればと思う。




「んぁ……は……」

彼女の首に優しく唇で触れると、彼女の口から甘い吐息がもれる。
彼女の肌は暖かくて、柔らかな匂いが彼女に集中する僕のハナをくすぐる。

ああ……たったこれだけのことで、心の中が落ち着くのはナゼなんだろう。

「……もっと……乱暴にして……いいよ……」

僕の耳に囁くように告げられた彼女の言葉。

「ダメです……貴女にそんなことできません」

そう……乱暴にだなんて、できるわけがない。

「楡岸さんの好きにして……今だけでも何もかも忘れてほしい」
「そんなことしなくても……忘れられそうです……貴方が……僕を癒してくれるから」

女の人を抱いて癒される……今まで、そんなことがあっただろうか?


僕達の出会いは偶然だったんだろうか?
こんなにも心を許せる相手に出会えるなんて。

もしかして、祖母が彼女に会わせてくれたのか?そんなことをまで思ってしまう。

彼女はこの僕との出会いをどう思っているんだろう?
僕と同じ気持ちなんだろうか?それともただの気紛れなんだろうか?

優しい彼女だから、落ち込んでた僕を見捨てておけなかっただけ?

それでも今は……今だけは、僕は彼女を離すことができない。

「脱がしても……いいですか?」
「…………」

最後の最後で彼女の気持ちを尊重する。
もしちょっとでも迷いや、後悔が感じられたらやめるつもりだった。

でも彼女はクスリと笑ってから、コクンと頷いた。


片方の肘を着いて自分の身体を支えると、空いた手で彼女のブラウスのボタンを外し始める。
全部のボタンを外して、ブラウスの袂からスルリと手を滑り込ませた。
そのまま肩まで伸ばして、撫でるようにブラウスを肩から脱がせた。

彼女自身も、身体を浮かせたりして脱がせやすいように動いてくれた。
現れたブラのホックを見もせずに、背中に回した手で外すと彼女が一瞬だけど僕を見た気がした。
指先が器用なのか、昔から簡単に外すことができた。
ここ最近、そんなことをしたことはなかったけれど、なんとなくできてしまった。

逸る気持ちをなんとか抑えて、彼女の着ていた服をすべて脱がした。
今、僕の下には生まれたままの彼女の姿がある。
女の人の裸は久しぶりだったけれど、それだけじゃない胸の高鳴りだと思う。

「はっ……はっ……んあ……あっ……」

引き寄せられるように、彼女の唇に何度も何度もキスを繰り返しながら自分の服を脱いでいく。
露になった僕の身体に、彼女の腕が触れた。

服を脱ぐ前にメガネは外していたから、彼女の瞳とレンズ越しじゃない視線が合う。
ちょっと潤んでて……とても色っぽい視線だった。


「あん……あっ……やぁ……んんっ……」

やんわりと胸を揉んで、指で撫でて、先端を口に含んで舌先で弄る。
反対の胸も同じことをして、何度か交互に繰り返した。

「あ……ふぁ……」
「柔らかいですね……それにいい匂いがします」

彼女の身体からは懐かしいというのか、とにかくあのキツイ香水の匂いのとは違う
仄かな柔らかな匂いがする。
石鹸の匂いなんだろうか?

「ひゃっ」

胸からゆっくりと上がって、彼女の耳にそんな言葉を囁いた。
そのまま耳にキスをして、舌で耳の形をなぞると小さな悲鳴が聞えた。

「あっ!やぁ!!」

そのままハムッと耳朶を甘噛みすると、また小さな悲鳴をあげて肩を竦めてしまった。

「もしかして、耳が弱いんですか?」
「わ……わかんない……あっ!やだ!」

そう質問しながら、反対側の耳にもさっきと同じことをしたら、また肩を竦めてしまった。
もしかして耳に性感帯があるんだろうか。

「くすっ……他には一体どこがくすぐったく感じるんでしょう。探さないと……ね」
「ひゃん!!あっ!あっ!」

ワザとそんなことを言って、彼女の身体全体を触り始める。
唇で軽く触れたり、チロリと舌先で舐めたり、指先で肌に触れたり……。

そうやって触れる度に、ふるふると彼女の身体は戦慄(わなな)く。

どこもかしこも柔らかくて暖かい。
だからなのか、無意識に肌を吸いあげて、赤い印をいくつかつけてしまった。

彼女は気付くだろうか?

「やっ……くすぐったい!!」
「もしかして身体全部ですか?」
「!!」

わかっていて、うつ伏せの彼女の背中に唇を押し付けて、ちゅっと音がするように
離すという行為を繰り返してた。
その度に、彼女の身体がビクンと跳ねて震えてたから、あまりの予想通りの反応に
思わず口元が笑ってしまった。

ときどき、クスリと笑った声が聞えてしまっただろうか?
彼女の “くすぐったい” と、訴える声がちょっと怒っていたように感じたから。

それでも、そんなイタズラはやめられないのだけれど。


「ん……んん……」

彼女の身体を仰向けに戻して、顔の横に肘をついて髪を撫でながら顔中にキスを落とした。

頭の天辺から始まって、額に瞼に睫毛にハナの頭に頬に……ちゅっちゅっと、
軽く触れるだけのキスを繰り返す。

最初から彼女のことが愛おしくてしかたがなかったから。
触れるだけの軽いキスも、貪るような深いキスも、何度しても飽きることがない。

彼女には、付き合ってる人はいないのだろうか?

パッと見た部屋の感じからは、男性が出入りしているような感じはなかったけど。
男物もなにも見当たらないし、特定の人はいないのだろうか。

でも彼女なら、もし付き合ってる相手がいるならば僕とこんなことにはなっていないんじゃないかと思う。
そんな相手を裏切るような行為を、彼女が平然とできるような人とは思えないし思いたくもない。

彼女は誰のものでもない……そう思いたい自分がいる。

それにもしそんな相手が彼女にいるとしても、もう今さらやめる気なんてコレっぽっちもない。


今……この瞬間は彼女は僕のものだ……僕だけのものだ……。








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