想い想われ?



05・史明視点




「うあっ!! あっ……ああんっ!!!」

なにか考えごとをしていたのか、どこか上の空の彼女になんの前触れもなく、自分自身で一気に貫いた。
突然のことで彼女の背中が大きく反って、僕に回されていた腕に力がこもる。

「痛い……ですか?」

ちょっと急速だったか?
彼女にも刺激が強すぎたかもしれないけれど、女性を抱くのは久しぶりだった自分にも刺激が強かったみたいだ。
久しぶりの相手が、彼女だというのもあったかもしれない。
彼女に持って行かれそうになってグッと堪える。

「ううん……大丈夫……熱くて……あなたをすごく感じる……あっ……」

彼女が話してる間も、まだ完璧に彼女の中に入りきれてない自分を奥まで入り込ませるように軽く腰を動かした。
その度に、小さく揺れる彼女から声が漏れる。

「……そんなことを言って、僕を煽(あお)ってるんですか?」
「そんなつもりない……はぁ!!」

彼女が僕を受け入れてくれてるとわかって、嬉しくなる。
だからぎゅっと僕の身体全部で抱きしめて、そのまま彼女の中に自身を押し進めた。
彼女も久しぶりだったんだろうか……僕をキュウキュウと締め付ける。

そんな彼女が自分から僕の身体に抱きついてきてくれて、僕と同じリズムで揺れる。

「久遠さん……」
「ん……ぁ……」

押し上げながら、もう何度目かもわからないキスをする。
彼女はそんなキスに応えながら、自分の足を僕の腰に絡ませた。
そのせいで彼女に入る角度が少し変わって、さらに激しく彼女が感じるようになった気がする。

ちゅっと唇が触れる音と、クチュクチュと舌が絡み合う音が響くキスを繰り返しながら、僕は上半身を起こした。
上半身が彼女から離れてもキスはやめず、起き上がったことで深く彼女と繋がって、
何度も何度もお互いの身体が隙間なく触れ合うことに僕はとても嬉しくて満足する。

今、彼女を満たしてるのは僕……。

「あぁ……」

ちゅっと触れるだけのキスを何度かして離れると、彼女は瞑ってた目をあけた。
そんな彼女に微笑む僕を見て、彼女はなんとも言えない不思議な顔をする。

一体なにを思っているんだろう。

きっと優しい彼女は、僕に気を使ってくれてるんじゃないかと思う。
自分はちゃんと、僕を満足させてあげているのだろうか? とか。

「アンッ!! あっ! あっ!! ああぁ!」

繋がったまま腰を引き寄せて、グッと彼女の中の一番奥に僕自身を押し込めると、
彼女は息を詰まらせて大きくのけ反った。
のけ反って現れた彼女の白い喉に、カプリと噛みつき甘噛みしながら腰を大きく彼女から引くと、
引いたときと同じ速さでまた奥を突いた。
それを何度も繰り返す。

僕が押し上げるたびに漏れる彼女の声が、僕を余計に舞い上がらせる。
段々と彼女を攻める動きも速くなる。

「んあっ! やぁ……」

激しく揺さぶられていた彼女が、自分の腰を掴んでる僕の腕をギュッと掴んだ。
僕の身体に絡めた彼女の足にも力がこもって、押し上げられる度にずり上がる身体をなんとか堪えているみたいだ。

もっと欲しい……この人が欲しい。

そう改めて思うと、勝手に身体が今まで以上に彼女を求めてしまう。
もっと密着して、僕をあなたの奥の奥まで刻み込ませたい。

「あっ! あっ! ああっっ!! ひゃあ!! やあっ!!」

彼女の最も奥を突きながら、僕と一緒に揺れ動く彼女の胸を片手で掴んで強めに揉んだ。
揉みながら胸の先端を、指の腹で押し潰して擦る。
彼女の身体がビクン! と大きく跳ねて、今までで一番の大きな声が聞こえた。

そのあと目を閉じたままクッタリとしていたのに、フイっと横を向いてしまった。
横を向いた顔は朦朧としつつも、なにかを考えてるみたいだ。

「考えごとですか? 余裕ですね」
「あっ…やん……」

こんなときになにを考えているのかと、ちょっとムッとしつつも、ならばとまた彼女の奥を攻めた。
同時に胸を揉んで、胸の先を口に含み舐めあげて舌先で転がして散々嬲る。
身体を捻りながら、チラリと睨まれた気がするのは気のせいだろうか。
なにか言いたそうな彼女だ。

「あっあっああっ!!」

そう思ったとき、ガクガクと彼女の身体が揺れた。
イッてくれたらしい。
心の中でそんな彼女に満足して胸から手を離す。
離した手で彼女の腰を掴んで自分のほうに引き寄せた。

「……ハッ……ああっ!!」

彼女の身体の奥を逃がさないとばかりに攻めつづけると、フルフルと頭を振る彼女の手が伸びて、
僕の手首をぎゅっと握り締める。

「あっ! あっ! やっ……あんっ!!」
「……っ」

そろそろ自分の限界が近いことを悟ると、今まで以上に彼女の身体を激しく押し上げた。
自分の身体を彼女に叩きつけるように。

そんな動きであっという間に限界が来た。
素早く彼女の中から抜け出そうと自分の腰を引く。
避妊をしてなかったから。

しばらくこういう行為はご無沙汰だったし、いつも持ち歩いてるわけでもない。
彼女も持っていなかったみたいだったし。
その前にそれが後回しになるくらい、お互い急速に求め合ってた。
でもそのとき……。

「あ! ダメ!」

彼女の声と同時に引こうとした僕の身体を、彼女の手と足で引き止められた。
え? ちょっ……どういう?

「久遠さん!?」

さすがに慌てて、彼女の名前を呼ぶ。

「大丈夫……だから……このまま……」
「…………」

弾む息を誤魔化しながら言う彼女としばらくの間、視線を外すことなくお互いに見つめ合ってた。
彼女の潤んだ瞳を見ながら考える。

もしこのまま彼女の言う通りにしたとして、彼女が妊娠しないとは言い切れない。
大丈夫と言っているのは彼女で、僕には本当に大丈夫なのかなんてわからないからだ。

もしかして、後々子供ができたら僕に結婚を迫るため?

でも彼女は、僕がどこの誰かは知らないはず。
だから僕の地位や財産目当てで、そんなことを言っているわけではないと思う。
それに彼女は、そんな打算的なことをするような人じゃないと僕はわかってる。
どうしてそう思えるのかと聞かれても、理由なんてわからない。
僕がそう信じているし、信じられるからだ。
だから彼女が僕の全てを受け止めてくれるのなら、僕はそれを信じるだけだ。

それにもし万が一彼女が妊娠することがあったとしても、僕はなんの迷いも抵抗もなく、
彼女も子供も受け入れる覚悟がある。
このほんの数時間の付き合いだけれど、僕はそう思えるほど彼女のことが愛おしいんだ。

だから……

「久遠さん……わかりました」

フッと微笑んで、彼女の膝の後ろに手を差し込むと、そのまま両足を抱えながら倒れ込む。

「ハァ……ふぅっ……んあっ!!」

さっきとは違う体勢で彼女の奥に入り込んだから、彼女の息が詰まって、浅い呼吸になる。
彼女には辛い体勢かもしれないけれど、僕は彼女にギュッと包まれて気持ちがいい。

「ハッ……ハッ……」
「久遠さん」
「?」

こんなときになにを話しかけてくるの? なんて顔された。
彼女の目はぼんやりとしてて、そんな眼差しで僕を見てる。

「名前……教えてください」
「はぁ……はぁ……え?」
「名前です。貴方の名前」

今、彼女の名前をどうしても知りたかった。

「ああ……んっ……静乃……です。久遠静乃」
「静乃……さん」
「はい」

確かめるように、ゆっくりと彼女の名前を口にして、ニッコリと微笑んだ。
名前で彼女を呼ぶ。
それが今この瞬間だけでも、彼女をもっと身近に感じた気がした。

「静乃さん……最後まで続けても?」
「…………」

頷いてくれなくても、先に進める気満々だった。
彼女はそれを知ってか知らずか、コクンと頷いてくれた。
頷いたのを見た途端、待ちきれなかったようにまた彼女の中を堪能する。

「あっ! あぁ!! あっあっ……」

最初から激しく彼女を揺さぶって攻めると、すぐに快楽の頂点に上り詰めた。
あっという間にイった彼女の身体を、休む間も与えず容赦なく激しく押し上げ続ける。
彼女はビクンビクンと身体を反らして、僕を締め付ける。
さっきギリギリ限界だった僕も、急速な動きと彼女の身体の気持ち良さとであっけなく限界を迎える。

この出会いが偶然だったのか必然だったのかわからないけれど、僕には静乃さんとの出会いは必要だったと思う。
順番は多少ズレたけれど、それはこれからやりなおせばいい。
もしこれで静乃さんが妊娠したっていい。
そのときは、僕がちゃんと責任をとる……だから……。

「静乃さん!僕を受け止めて」
「あっ! やああああ!!!」

ガクガクと激しく揺れるお互いの身体と、肌と肌がぶつかる音と、静乃さんの声が全部一緒になって僕の中に響いてくる。

静乃さんが声にならない声を上げるて、大きく仰け反った。
両手はしっかりと僕の背中に回されて、全てを堪えるように爪を立てる。
多少ピリッと痛みが走ったけれど、そんなことは気にするほどのことでもない。

同時に彼女の中に、自分自身を解放する。

「……くっ!!」

なんとも言えない開放感と安堵感……他にも色々な感情が沸き起こったけれど、
まだまだ舞い上がった自分を抑えきれなくて、そのあとも何度が激しく静乃さんを攻め立てた。

最後にグッと自分の身体を静乃さんに押し付けて、やっと自分の身体から力が抜けてた。

「…………はぁ……」

なんていう気持ちの良さなんだろう。
今まで味わったことのない満足感だ。
大きな息を吐いたあと、静乃さんの上に倒れこんでそのまましばらく動けなかった。
はぁはぁとふたりの浅く速い息が、部屋の中でしばらくの間続いていた。

お互いの呼吸が落ち着いたころ、床の上でクッタリしてる静乃さんを抱き上げてベッドの上に移動した。
僕は静乃さんの上に、当たり前のように覆い被さる。
僕を見上げた静乃さんの瞳がちょっと驚いたようだったけれど、僕はそれを見てみないフリ。
だってやめる気なんてサラサラなかったし、まだまだ全然足りなかったから。

さっき感じた満足感なんてあっという間になくなって、今はもう静乃さんが足りないくらいだ。

「静乃さん……」

僕は静乃さんの名前を呼んで、そっと触れるだけのキスをするとまた静乃さんの身体に手を伸ばした。








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