想い想われ?



23・史明視点




「もしかして、この前のヤケ酒は彼女が原因か?」
「はい……」
「フラれたのか」
「僕達は……付き合っていたわけではないんです。テルさんのことで落ち込んでた僕を彼女……
静乃さんが慰めてくれて……それから時々彼女の部屋で会っていました。でもそれは、男女の関係ではなくて
友達同士という感じでです。……ああ…でもフラれたというのは正解かもしれません。僕は静乃さんに好意を
抱いてましたし、できればお付き合いしたいと思ってましたから。でも、彼女は僕に黙って引っ越して、携帯も
着信拒否されて連絡が一切取れなくなってしまいました」
「ふみクン!久遠さんに何したの!!」
「え?うわっ!」
「あの久遠さんがそんなことするなんて、ふみクンよっぽどなにか久遠さんにヒドイことしたのよ!どんなヒドイことしたの?」
「ちょ、ちょっと梨佳ちゃん?」

いきなり肩を掴まれて、揺さぶられながら文句を言われた。

「ちょっ……ぼ、僕はなにもしてませんってば!」
「本当に?本当に本当?」

揺さぶるのがおさまったと思ったら今度は “じとぉ〜〜” っという感じで肩を掴まれたまま顔を覗き込まれた。
……なんでそんなに疑ってるんですかね?

「知らない間に僕が静乃さんを傷つけてしまったかもしれませんけど……僕にはそれがなにかわからないんです。
だからもう一度、静乃さんに会って確めたかった。教えてください!梨佳ちゃん」
「え?」

今度は逆に、僕が梨佳ちゃんの肩を掴んだ。

「今、静乃さんはどこに住んでるんですか?」
「ふみクン……」
「もう静乃さんに会えないのはイヤなんです。会ってどうして急に僕の前からいなくなったのか理由を知りたい。
どうして僕との連絡を一切絶ったのかワケを知りたいんです。誤解があるなら解きたいですし、嫌われているなら
どうしかして好かれるように努力したい」
「ふみクン……」
「そんなに好きなのか」

裕平が頬杖をつきながら、僕をじっと見つめる。

「……好きです……きっと一目惚れなんだと思います」
「なんで俺達に言わないんだよ」
「そうよ!言ってくれてたら久遠さんがウチに来たときフミくんに教えてあげられたのに」
「……えっと……それは……」
「 「それは?」 」

なんでそこでハモるんですか?

「僕は今まで、女性とのお付き合いで長続きしたことがなかったんです」
「そういえばそうね」
「たしか、こっち戻ってからは誰とも付き合ってないよな?」
「はい……全然そういう気持ちがなかったわけではないんですが、この人と想える人もいませんでしたし、
仕事やテルさんのこともあってなかなかそこまで気持ちがまわらなくて」
「まあ、それは仕方ないんじゃないのか」
「え?じゃあ、そんな気持ちだったのに久遠さんは違ったのね?」

なぜか梨佳ちゃんが、ニコニコ笑いながら聞いてくる。

「はい……静乃さんとはすぐに終わるようなお付き合いはしたくなかったんです。だから、じっくりと
時間をかけて僕を好きになってほしくて……」
「久遠さんはふみクンのこと好きじゃなかったの?」
「嫌われてはいなかったと思います。でも、異性として……恋愛対象としては見られていなかったみたいで……
なので、ちゃんとお付き合いできるようなったら2人には話そうと思ってたんですけど」
「その前に逃げられたか」
「う″っ……は…はい」

裕平……ストレートすぎますって。

「んー、でも久遠さんってワケもなく、いなくなるなんてことするような人には見えなかったけどな」
「そうよね……ふみクン、本当になにも思い当たることないの?」
「……はい」
「やっぱり本人に聞くのが一番か」
「はい、なので梨佳ちゃん静乃さんの住所を……」
「私も住所まで憶えてないわ。会社に行けば調べることはできるけど……それって個人情報に
係わる気がするんだけど」
「そこをなんとかお願します!」
「その前に、携帯に連絡してみればどうだ?出るんじゃないのか」
「ええ?どうかしら?私達がふみクンと久遠さんが知り合いってわかっちゃってるのよ。出てくれるかな?」
「とにかくかけてみろよ」
「うん」

思ったとおり、静乃さんが電話に出ることはなかったしメールも返事がかえってくることもなかった。。

「はぁ〜史明、お前マジで避けられてるな」
「ぐっ!」

そんな改まってしみじみと念を押さなくたっていいじゃないですか。
グッサリときてるんですからね。

「やっぱり直接会いに行くのが一番よ!」
「そうですね」
「明日、朝一で会社に行って住所調べてあげるから」
「ありがとうございます!!」
「いい?ふみクン」
「はい?」
「必ず誤解を解いて、とにかく謝って、久遠さんとやり直してちょうだいね!!」
「は、はい……でも、やり直しすと言ってもおつき合いしてたわけじゃないんですけどね」
「そんな弱気でどうするの!ふみクンには久遠さんが必要なんでしょ!好きなんでしょ!!恋人になりたいんでしょ!!」
「は……はぁ……」

また肩をつかまれて、ガクガクと揺さぶられた。
なんだか梨佳ちゃんのテンションが怖いんですけど……。

「でも、彼女の決意も半端ないと思うからしっかりしろよ」
「裕平」
「裕平ちゃん」
「俺と梨佳の幼なじみが史明ってわかってたはずだ。なのにそのことには触れずに黙ってた、
それに梨佳から自分の住んでるところがバレるのも気づいてるはずだから、もしかしてまた逃げられるかもしれない」
「……もしまた僕の前からいなくなったとしても、必ず捜し出します」
「もしかして捜してたのか?」
「はい、竹之内さんに頼んで」
「そっか」
「本当は静乃さんは僕に捜してなんてほしくないのかもしれませんけど」

でも……さっき静乃さんと会って、改めて思ったことがある。

やっぱり僕には、静乃さんを諦めることなんてできないんだ。

この先、どんなに静乃さんに拒まれても僕は傍を離れたりしない。



お店の前で2人と別れて家に帰ったけれど、その日はなかなか寝付けなくて、まんじりとしたまま朝を迎えた。








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