想い想われ?



番外編・プレゼント大作戦! 09 悪代官の気持ちも分かる気がします




「今日、勝浦さんと帆稀さんに言われたの」
「なにを言われたんですか?」
「これからは、こういう着物も必要になるからって」
「静乃さん……」
「私、自覚が足りなかったの。史明くんが責任を持った会社の重役だったって。私がちゃんとしてないと
史明くんに迷惑をかけちゃうってことなのよね」
「そんな……迷惑なんてことはありません」
「ううん。私のせいで史明くんが疎まれたり、軽んじられたりするのは嫌なの」
「それは、考えすぎですよ。でも、静乃さんが僕のことを思ってくれるのは嬉しいです」
「これからは少しずつでも勉強して、史明くんの足を引っ張らないように頑張るわね」
「静乃さん……」
「もしかしたら、今度はサンタじゃなくて史明くんに洋服のこととか相談するかもしれないけど」
「もちろんです!! そういうことなら僕に任せてください! どこに出ても恥ずかしくないものを静乃さんにプレゼントします!」
「ありがとう、史明くん。でも、だからって必要以上なことはしなくていいから。帆稀さんには、わからないことがあったら
帆稀さんのお母様に相談してみればって言ってもらえたし」
「そうですね。鞠枝さんなら適任だと思いますよ」
「今年のクリスマスはとっても豪華だったわ。史明くんからと、サンタからプレゼントを貰えたんだもの」
「静乃さんに喜んでもらえて、僕も……きっとサンタも喜んでると思いますよ」
「ペンダントもこの着物も大切にするわね」
「はい……」
「ふふ」

優しく微笑む静乃さん。
ふたつのプレゼントを受け取ってもらえて、僕も嬉しいです。

「静乃さん……」
「はい?」
「本当に綺麗です。それに、とても似合ってます」
「ありがとう。でも、久しぶりに着たからちょっと心配で」

そう言って自分の姿をキョロキョロと見回す。

「大丈夫ですよ。ちゃんと着こなしてます。惚れ直してしまうほど」
「もう……史明くんったら大袈……んっ……」

そっと静乃さんを抱きしめてキスをする。
最初はお互いの唇を重ねるだけの軽いキスから、どちらからか求めるように舌を絡ませる深いキスになる。
シンと静まり返る部屋に、静乃さんの漏れた吐息とお互いの舌を絡めた水音が響く。
自分が普段仕事をしている部屋で、愛してやまない静乃さんとこんな淫らなことをしてるなんて。

「静乃さん……」
「史明くん……あ……んんっ」

唇から耳朶に唇を移動しながら、静乃さんの肌の感触を味わう。

「はあ……」
「史明くん……」

露になっている項から、スルリと指を滑らせて結いあげられた髪の毛を撫でる。
そのまま後頭部に手を添えて、撲のほうに静乃さんを引き寄せた。
そのまま近づいた静乃さんの唇を、ペロリと舐めて触れるだけのキスをする。
何度も何度も。

「今度は髪飾りを買いましょう」
「あ……」

耳に唇が触れるか触れない位置で囁くと、静乃さんの身体がフルリと震えた。

「静乃さん……」
「?」
「静乃さんは自分で着物が着れるんですよね?」
「着れる……けど?」
「では、脱がしてもいいですか?」
「え!?」

返事を聞く前に、帯締めに手を伸ばす。

「ふ…史明くん?」
「女性に服をプレゼントするのは、その服を脱がせたいからだと聞いたことがありますが、本当ですね」
「史明くん?」

解いた帯締めを傍にあるソファに置く。

「悪代官の気持ちも分かる気がします」





目の前には長襦袢姿の静乃さんが俯き加減で立っている。
脱いだ着物は皺にならないようにと、気休めかもしれないけれどソファの背凭れにかかるように置いた。

「あ…」

立っている静乃さんの腰に両腕を回して、囲うように閉じ込めて自分のほうに引き寄せた。
着物や帯のなくなった分、静乃さんの体温が身近に感じて温かい。
静乃さんは僕に近づいた分、両手を僕の胸にそっと添わせた。
僕は静乃さんに微笑んで、そっとキスをすると静乃さんもそれに応えるように顔を上げて僕を受け入れてた。
そのあとはもう自分を抑えることができなくて、ここが職場ということも忘れて静乃さんを着物の置いていない
もうひとつのソファにゆっくりと押し倒した。
ベッドとは違う軋む音を聞きながら、静乃さんに自分の体重をかけないように覆い被さる。

「んっ……ふぁ……」

何度かキスを繰り返して、そのまま頬を伝って耳に軽くキスを落とす。
舌の先で舐めて耳たぶを甘噛みして、唇を首筋に軽く押し当てながら長襦袢の衿元に手を入れて肩から脱がせると、
静乃さんの白い肌が目の前に現れる。

「下着……着けていなんですね」
「着物のときは……着けないの……下は……穿いてるけど……」
「ああ……もう……」

頭の中で、下着を着けずに着物を着ている静乃さんを想像してバカみたいにテンションが上がる。
そう思いながらも、そんな静乃さんを他の男達が見ていたのかと思うと鳩尾の辺りがズシンと重くなった気がした。
そんな思いを拭うように、脱ぎかけた長襦袢の肩の辺りを掴んで引き下げると上半身が露わになった。
露わになった静乃さんの胸に顔をうずめる。
ふんわりと香るのは石鹸の匂いだろうか。
静乃さんの体温で、仄かに香ってくるその匂いは僕にとって馴染んだ匂いでホッとする。

「いい匂いです……」

柔らかな胸の膨らみに唇を押しつけて、チュッとワザと音を立てて放す。

「んっ……史明くんだって……使ってる……じゃない……」

押し倒してすぐに静乃さんの膝を割って滑り込ませた僕の身体を、静乃さんの両脚が軽く挟む。
狭いソファの上だから仕方のないことなんだけれど、積極的に僕を誘っているのかと自分のいいように錯覚してしまう。

「そう……不思議ですよね。同じものを使っているはずなのに……」
「あ……んっ……」

立てられた静乃さんの膝から手を滑らせて腿を撫で上げた。
柔らくてなめらかで、僕の手に馴染んでいる静乃さんの身体。
そのまま唯一身に着けている下着に手をかけて、スルスルと引き下げると静乃さんも身体を浮かせてくれた。
片足だけ引き抜いて、仄かに潤ってきたそこに手の平で優しく触れると静乃さんが恥じらうように身体を捻る。

「力を抜いてください」
「んあっ……あ……」

ゆっくりと、2本の指を静乃さんの中に埋めていく。
静乃さんの感じるところを目指しながら、ときどき周りも擦るように指を動かすと無防備にも白い首を
僕に差し出すように静乃さんが仰け反る。
当然のようにその白い首に軽く歯を立てて、舌を這わせた。
フルリと身体を震わせて、僕に回されていた静乃さんの両腕に力がこもって僕を抱きしめる力が強くなる。
そう、そうやって僕をしっかりと抱きしめていてください。

静乃さんの中にある自分の指を動かしながら、静乃さんの身体中にキスをしていけば、ほんのりと潤っていたその場所は
滑らかな動きができるほどに濡れてきた。

「あんっ……あ……ダメ……ソファが……汚れちゃ……んあっ……」

自分の今の状況を理解したのか、静乃さんが途切れる言葉で言いだした。

「余裕ですね……静乃さん」
「そ…んなんじゃ……ああっ……」

中にある指を動かしながら、親指ですぐ傍にある肉芽を少し強めに押し潰した。
その瞬間、ビクンと大きく静乃さんの身体が跳ねてしばらく震えると、くにゃりと力が抜けて身体全体で息をする。
そんな力の入らない静乃さんの身体から指を抜くと、その濡れた指をぺろりと舐める。

「そうですね。でも、汚れるとかその前に……」
「?」
「ここでこれ以上したら、このソファに座るたびに今夜のことを思いだしてしまいそうです。
それに、誰かがこのソファに座ると思うとそれだけで嫉妬してしまいそうです」
「……え?」

自分で言っていても変なことを言ってる気がするけれど、静乃さんとすごしたこのソファに誰かが座ることを想像するだけで
ふたりの世界を邪魔された気がするから不思議だ。

「あ……」

ソファに横たわる静乃さんの背中と膝裏に手を入れて抱き上げた。
慌てた静乃さんが、僕の首に腕を回してしがみつく。

「あの扉の奥に、狭いですが仮眠室があるんです。家のとは比べものになりませんがベッドもありますし、
ゆっくりと静乃さんとふたりの時間を過ごすことができます」
「でも……ここ、史明くんの職場で……」
「今さらなにを言ってるんですか? 静乃さん。今夜はクリスマスですよ。僕にも2つ目のプレゼントをください」
「……史明くん」
「静乃さん……」

仮眠室のドアを開けて、置かれているシングルタイプのベッドに静乃さんを下す。
ベッドに片膝をつけたまま暖房のスイッチを入れて、ジャケットを脱いでネクタイを緩めて外す。
全部ベッドのそばに置いてある独り用のイスに放り投げた。
ワイシャツのボタンを外すときふと静乃さんを見下ろすと、恥ずかしそうに長襦袢の衿元をギュッと握って肌を隠していた。

「静乃さん?」
「だって……なんだかこの場所が恥ずかしくて……いつも史明くんが仕事をしてるところだもの……」
「そんなことを言わないでください。ここに、静乃さんの訪れた記憶を残していってください」

キシリとベッドを軋ませて、静乃さんに覆い被さるように抱きしめてキスをする。
何度も何度も角度を変えて、舌を絡ませるキスを繰り返す。
キスをしながら腰紐を解いて、着なおした長襦袢をまた肩から脱がせた。
脱がせた長襦袢が静乃さんの腕に絡まったままの姿は、いつもより増して悩ましい姿だ。
しかも、裸に近い姿に足袋を穿いたままなんてどれだけ僕を煽れば気がすむのか。
露わになった胸を手の平で包むように揉みながら、胸から鳩尾、お腹から腰にキスを落としていく。
舌で舐めることも、赤い印をつけることも忘れない。
足首を軽く掴んて持ち上げて腿の内側から膝、そのまま脹脛(ふくらはぎ)から足首ににかけても唇で触れた。
その度に、フルフルとふるえて甘い吐息を漏らす。

「はあ……静乃さん……」

いつも以上に時間をかけて、静乃さんを味わうことにしようと心に決める。
それはいつもと違って、本当ならありえないはずのこんな場所で静乃さんと愛し合えるからなのか。

「あっ……史明くん……激し……あっあっ……」
「静乃さん……静乃さん……」

僕から離れないように背中に回された静乃さんの腕も、膝裏で僕の腕に抱え上げられ押し上げるたびに
激しく揺れる静乃さんのしなやかな脚も、僕の耳に聞こえる静乃さんの甘い吐息も、
なにもかもが狂おしいほど愛おしい。
お互いを確かめるように指を絡めて繋ぐ手も、何度交わしても飽くことのない口づけも、静乃さん……貴女だから。

何度果てても尽きることのない静乃さんへの欲情がやっと治まったのは、日付も変わったころだった。
もう少ししたら可哀想だけれど、静乃さんを起こして家に帰らなければならない。
本当ならこのままここで朝を迎えたいところだけれど、そういうわけにもいかない。

初めてふたりで過ごしたクリスマス。
お互いに予想外のプレゼントに驚きつつも、満たされた2日間だった。
来年は一体、どんなクリスマスを迎えるんだろうか。
僕の腕の中でスヤスヤ眠る静乃さんの寝顔を見て考える。

ただ言えることは、もう静乃さんにはサンタは現れないということか。
次に我が家にサンタが訪れるのは、サンタが訪れることを心待ちにする僕達の子供にだろうか。

「フフ……そのときはもっと上手く、サンタを演じなくてはいけませんね」

静乃さんの解かれた髪に自分の頬をすり寄せながら、そう遠くない未来を想像して目を閉じた。









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