「親父達は?」
ご飯を頬張りながら向かい合って座ってる隼斗(hayato)が聞いてくる。
隼斗がお風呂から出て来るのを待って早速2人で夕飯を食べてる。
「カラオケ!近所の人と…オールナイトなんて言ってたけど…」
「はあ?親父め…オレに全部押し付けて行きやがったな…」
「やっぱり1人じゃキツイ?」
「まあ…そんな難しい修理じゃ無いから何とかなるけど…オレ仕事早いし ♪
良い旦那になるぞ千夏(chinatu) ♪ 働き者で奥さん一筋で ♪ 」
「そうね…奥さんになる人は幸せかもね!」
顔も見ないでご飯を口に運びながらムッスリと言ってやった。
「わかってるならいいや」
「誰も私なんて言ってないでしょ?」
「じゃあ今夜は久々に2人っきりかぁ〜〜 ♪ 」
人の話はスルーかっ!ちゃんと聞け!そして理解しなさいよ!!
「……え?」
「だから2人っきり ♪ 」
隼斗がニッコリと笑う。
「…………」
しまったーーーーっ!!!先にお風呂入っとけば良かった!!
「きょ…今日は友達の所に泊まりに行くから…」
シドロモドロになりながら何とかそんな言葉が出た。
「ふ〜ん誰ン家?」
「え?……あ…会社の人……」
「ふ〜ん…じゃあ今日は行けないって断れな」
「…………」
「今ここで断る電話しろ ♪ 」
ニッコリ笑顔でご飯食べながら言わないでよね〜〜
「………」
「下手なウソつきやがって…フン!」
「は…ハナで笑ったわね!!本当なんだから!今から出掛けるの!」
「じゃあ送ってってやるよ千夏……運転手付きなんて最高だろ?」
「…………」
片方の口の端を上げて目を細めちゃってさぁーーー!!
ムウ〜〜〜〜そのわかってる顔がムカつくっ!!!!
「そんなにオレと2人っきりが怖いの?」
「……そ…そんな事無いわよ…別にあんたなんて…」
「じゃあいいだろ。後で2人で何かするか?ゲームもなぁ…DVDでも借りてなんか見るか?」
「え?借りに行ってくれるの?」
「いいぜ…何かあんの?」
「うん!映画が公開された時結構話題になって……ハッ!!」
しまった!!つい……
「やっぱ友達の所に行くなんてウソじゃねーか!ペナルティ1な!」
「な…何よ!ペナルティって!!」
「さあ?」
「さあ…って……」
怪しい……怪しすぎる……
隼斗はその後も何事も無かった様にご飯をおかわりまでした…
でも私は何となく気になってご飯なんて味がわからなかった。
「これがタイトルでこれが会員証」
「は?」
隼斗の手の平にメモと会員証を掴ませたら物凄い怪訝な顔された。
「何?オレ1人で行くのかよ?」
「そう。よろしくね ♪ 」
「千夏は何してんだ?」
「私はその間にお風呂入ってるから」
「はあ?」
「自分の身は自分で守らないとね」
「………」
「ほら事故らない様にゆっくりね」
親がいない時の隼斗は危ないから…少しでも遠ざけないと…
だから別に心配なんてしてないけど気にかけてる様な言葉を掛けた。
それを気にしてゆっくり行って来てくれるように!!
「わかった…行ってきてやるよ」
「………」
隼斗が意味ありげにニヤリと笑う…何…その不敵な笑いは……
バタンとドアが閉まる音がして隼斗が出て行った。
「よし!急ぐわよ!」
速攻自分の部屋から着替えを持って浴室に飛び込む。
「あと20分って所かしら…」
車で往復でそのくらい掛かるはず…
混んでたりしたらもっと遅くなるかもしれないけどなんせ相手は隼斗だから…
余裕は持たない方がいい…
隼斗は両親がいないと急に大胆になる。
今まで何度行き過ぎのセクハラされたかわからない…
高校を卒業してから急に隼斗は私に絡み始めた…
だからって…無理矢理何かされるわけじゃないけど…
「よし!」
全部済んでお風呂の蓋を閉めて完璧!まだ隼斗は戻ってないは……ず…
「ほら借りて来たぞ ♪ 」
ガチャリと浴室のドアが開いてレンタルビデオの袋を見せながら
隼斗がドアの前に立ってた。
「きっ……きゃあああああ!!!」
「オレの方が早かったな ♪ 」
「バカ!出てってよ!!」
私はその場で身体を隠してしゃがみ込んだ。
「何だよまだ入ってたのか」
「今出るところだったのよ!!!ばかっ!!」
私はその場にしゃがみ込んだまま文句だけは言い続けてた。
「仕方ねえな…ほら」
「仕方ないじゃないでしょ!」
隼斗が放り投げたバスタオルを身体に巻いて立ち上がった。
言いたいことが山ほどあるわよ!!
「随分早いじゃないよ!」
予定してた時間よりもちょっと早かった。
「バイクで行ったからな。空いてたし ♪ 」
「バイク?バイクなんてズルイ!」
てっきり車で行ったのかと思ってたのに…
「はあ?どこが?」
「………」
「どこがだよ…千夏?」
腕を組んで私の事を見下し目線で見てる……憎たらしい顔…
結局言いたいことは殆んど言えずに終わってしまう…
「体重変わらずってトコか?」
「!!」
「千夏……」
中には入って来ないけど…隼斗の腕が伸びて私の濡れた髪を一抓み掴む…
「色っぽいな…千夏…」
ヤンワリとした隼斗の笑った顔……
髪の毛を摘まんでた指先が私のまだ濡れてる頬を軽く撫でながら離れていく……
「!!」
ドキンと胸が高鳴った……
油のしみ込んだ指先だけど…隼斗の指は長くて男らしくて……暖かい……
「サッサと見るぞ」
「……うん…」
そう言うと隼斗は何事も無かった様に浴室から出ていく…
そんな隼斗の後ろ姿と閉まるドアを眺めてた……
「………」
いつもそう…こんなに私をドキドキさせて…焦らせて…挑発するくせに…
結局いつもそれ以上は踏み込んで来ない…
今だって人の裸まで見といて…何もしないって……
隼斗は私とどうなりたいの?隼斗は私に何を求めてるの?
小さな頃から隼斗は私をお嫁さんにするって…結婚するって言い続けてるけど…
まだキスもしたことないんだよ…隼斗……
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