keep it up !


05




中学の時千夏とオレの親が再婚した。

その話を4人で話し合った時オレは

 『 2人が再婚しても千夏と結婚させてくれるなら許す 』 と言い切った。

当然だろう?2人が再婚した為に千夏と結婚出来なくなるならオレは猛反対してやる!

親父達は呆れてそんなに千夏が好きなのかと聞くから好きだと答えた。
そしたら2人の邪魔はしないと約束してくれた。
千夏にはバカじゃないの!なんて言われ…でもオレはそんな事気にしない。

千夏が好きで好きで仕方がない…

でも好きすぎて千夏に何も出来ない…


高校に入ると更に女らしくなっていく千夏…

身体だってそれなりに成長して女らしく丸みを帯びてくるし…
何人か狙ってる奴がいると小耳に挟めば大々的に千夏はオレの女だと宣言した。

良い意味でも悪い意味でもオレは目立ってたからそれで効果は十分だ。
ただ千夏にはいい加減にしろとクレームが入る。
その度に 『 結婚するんだから当たり前! 』 と言い続けた。

不思議なのはこんなに長い間千夏は文句は言うが
オレと結婚しないと言う言葉は一度も言った事がない…

かと思うと時々妙に素っ気なかったり…相手にされてないと感じる時もあったし…

女心はわからない…


自分ではどうしようも無かったアッチの衝動も女を抱いた回数と誕生日を迎える度に
大分落ち着いてかなり免疫がついたらしい…

そうそうそんな欲望の衝動に振り回されなくなって千夏を押し倒したい衝動も
自分でコントロール出来る様になった。

経験と歳と…思春期なんて言うものが通り過ぎたからか…

18になるまで千夏にやたらと触れるのは止めてた。

どんなキッカケで千夏に押し倒して最後まで行くかわからなかったし
万が一それで子供が出来たら18歳以下じゃ千夏を嫁に貰うことも出来ない…

あんだけ千夏を嫁にすると言ってていざその時は歳が足りなくて残念でしたなんて
そんな情けねぇ事なんか出来るか。

だからグッと我慢してたんだよ…
最近じゃホント我慢して…女断ちもどの位たっんだろうと言うくらい…



「慰安旅行?」

ある日の夕食時…お義父さんが言い出した。

「会社じゃ良くあるだろう?ああ…社員旅行か?」
「社員旅行って…思いっきり身内じゃない。それに私はここの社員じゃ無いし」
「自分の仕事が休みの日とか普段も電話番とかしてくれるだろう?
千夏も立派なここの社員だ。」

お義父さんが自慢げにそう言ってくれた。

「滅多に無い事なんだからいいだろ?千夏。」

隼斗まで乗り気なんだ…

「そりゃ…別に構わないけどさ…で?いつ行くの?」
「来月の大型連休の後に行こうと思ってる。連休はどこも混んでるしホテルの値段も高いしな」
「仕事は平気なの?」
「一泊2日くらいならどうにかなる。その辺は心配すんな」

一応社長のお義父さんがそう言うなら……

「お母さんも行くんでしょ?」
「行くわよ〜〜旅行なんて久しぶりだもん ♪ 温泉につかってお肌も潤さなくちゃね〜〜ふふ ♪ 」
「知子さんはまだまだ若いから大丈夫。」
「ありがとう〜〜〜隼斗君 ♪ ホント隼斗君ってば昔から嬉しい事ばっかり言ってくれるわよね〜」
「皆で行くなら私は構わないわよ」

嬉しそうにしてるお母さんを見て私も改めて賛成する。

「じゃあ決まりだな。隼斗明日から仕事調整しながら進めるぞ」
「ああ。」
「家族で旅行なんて随分久しぶりよね。2人が中学以来かしら?」

お母さんが嬉しそうにニコニコの笑顔で話す…そんなに嬉しい??

「そうだっけ?まあなかなか行けないものね。で?何処に行くの?」

最初は乗り気じゃ無かった私も行くと決まればやっぱり気になる。

「○×温泉 ♪ 会川さんの知り合いのコネでちょっと安くしてくれるって。」
「へえ…」

会川さんは同じ自治会の班長さん。
行き先は旅行雑誌でも良く取り上げられる結構有名な場所で
泊まるホテルも名の知れた所だった。

食事中もその話で盛り上がって…皆気持ちはもう旅行に行ってるみたいだった。



「知子さん嬉しそうだったな。」
「そうね…皆で旅行なんて本当に久しぶりだからね…って何で隼斗が私の部屋で寛いでんの!」

しかもベッドの上で……勝手に寝転んでるんじゃないわよ!

「え?ああ…たまには一緒に寝ようと思ってさ」
「はい?」

何を寝ぼけたことを言ってんのかこの男は…

「何で隼斗と一緒に寝なきゃいけないのよ!」
「子供の頃良く一緒に寝ただろ。」
「幼稚園の頃ね!」
「いや小学校の1・2年の頃まで寝てただろ?」
「似たようなもんでしょ!寝るかっての!」
「練習 ♪ 」
「なんの?」
「旅行行くだろ?」
「は?」

行くけど何だって言うのよ。

「同じ部屋で寝る練習」
「バカじゃないの!お義父さんやお母さんだって一緒なんですからね!」

まさかそこで変な事しようなんて思ってないでしょうね?
私は疑いの眼差しを隼斗に向ける。

「だってさ…」
「?」
「同じ部屋で寝るのも久しぶりだろ?」
「………」

まあ確かに…久しぶりだけどさ……久しぶりどころじゃないか?

「親父達が抑制になるか自信が…」

真面目に悩んでるのが怖いんですけど?

「……真面目な顔で怖い事言わないでよね!」
「あ!平日行くんだからなちゃんと休み取っとけよ」
「本当…安い日狙って予約入れたわよね」

旅行の予定は木・金で次の日は土曜で仕事は休み…
だったら土・日で予約すれば良いのに…

「こっちなんて次の日仕事だっての。でも土曜日じゃないと半端ないくらい料金違うらしいぞ」
「そりゃ自営業だからそっちは融通きくからいいけどさ」

出来れば有給使わないで済ませたいじゃない。

「もうあきらめろ」
「え?なにを?」

隼斗は横になって片手で肘をついて私をニッコリ見てる。

「ああ…平日行くこと?まあ仕方ないわよね」
「混浴あんのかな?」
「さあ…あっても入らないけど」
「何でだよ?オレと一緒に入るんだよ」
「嫌よ!何で隼斗と入らなきゃいけないのよ。
それにそれって見ず知らずのアカの他人とも一緒になるって事なのよ。わかってるの?」
「そっか…チッ!楽しさ半減だな。」
「何期待してたのよ。ほら!出ていって!寝るんだから」
「だから一緒にって言って…イテテテテ!!」
「早く出てけっつーの!」

加減無しで耳を引っ張ってベッドから引きずり落とした。
そのままドアまで背中を押して押し出す。

「おやすみなさい。お兄様 ♪ 」

ニッコリと笑顔で言ってやった。

「…………」

背中越しに顔だけ隼斗が振り向いて私を恨めしげに見てる。
そんな事知るかって言うの!

「おやすみ」

ベーっと舌を出してドアを閉める。

ガシッ!!

「!?」

いきなり隼斗の手が閉まるドアを掴んで止めた。
私はびっくりで…

「な…?あ!」

隼斗が掴んでたドアを少し開けるとすぐそばにいた私の腰に腕を廻して自分の方に抱き寄せた。

「ちょっと…」

片手は私の背中に廻されてぎゅっと抱きしめられる。

「何セクハラしてんのよ!お兄様!!」
「可愛い妹を抱きしめてんだよ。」
「結構です。離して!」
「…………」
「ちょっと隼斗!!」

何でこんなしっかりと…いつもはこう…もうちょっと距離を取ってるのに…

「近いよ!」

そう言って隼斗の肩を掴んで引っ張ったけど服が伸びるだけで肝心の隼斗はびくともしない。

「隼斗!!」
「千夏…」
「な…なによ…」

腕の力はそのままで顔だけが私に向けられる。

「………」
「な…なによ…」

何だか無言が続いて…ふっと隼斗が微笑んだ。

「!!」

不覚にもそんな隼斗の笑顔に心拍数が上がってしまっう…なんで…?
しかも隼斗の視線が私の唇に向けられたのもわかった…
だから…キスされると思った…

「……ぁ…」

隼斗の顔が近付いた時…小さな声が漏れてぎゅっと目を瞑った。

「チュッ ♪ 」
「!!」

隼斗の唇が触れたのは……私のオデコ…しかも前髪の上から…

「………」

私は俯いたままぎゅっと瞑ってた目を開けた。

「旅行楽しみだな ♪ 」

ニッコリと隼斗が笑う。

「………」

何笑ってんのよ!!って気持ちが一瞬で湧いた。
そう思ったら手が出てた。

バ ッ チ ーーーー ン !!!

「…って!!」

結構な強さで隼斗の頬を張り倒した。

「は?」

隼斗が叩かれた自分の頬を手の平で押さえながら私を振り返る。

「妹にセクハラすんなっっ!!フンっ!!」

バタン!!と大きな音を立てて自分の部屋のドアを閉めた。
最後まで隼斗はビックリしたマヌケな顔だったけどそんな事はまったく無視して
最後までガチャリと隙間無くドアを閉めた。

「まったく……」

何考えてるんだか…
まあ今に始まったことじゃないけど…相変わらず過ぎて隼斗のやる事には腹が立つ。



「………」

オレは乱暴に閉じられた千夏の部屋ドアの前で叩かれた自分のヒリヒリする頬を
手の平で撫でながらしばらくの間そのドアを見つめてた。

何でオレは叩かれたんだか…わかる様な…わからない様な……

「……はあ…」

マジで一緒に寝ようと思ってたんだけどな…
さすがに突拍子もなかったか??なんて思わないわけじゃ無い。

高校も卒業した…親父の仕事を手伝う為に自動車の専門学校も出た。
一人前になるまではと思ってずっと堪えてた…でも……そろそろいいよな?

これでも 「もう隼斗にここを任せられるな!」 って親父に太鼓判押されてるんだぜ…


頑張っただろ…なあ…千夏……

オレはドアの向こうにいる千夏に向かって…心の中でそう呟いてた。





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