keep it up !


07




「ええーーー!?行けないってどう言うこと?」

旅行出発の当日の朝…下におりていくとお母さんがバタバタと慌ただしく動き回りながら
いきなりそんな事を言う。
なに?旅行の支度でバタバタしてたんじゃないの?

「私と忠司さんの2人の共通の知り合いの人なのよ」
「最近会ってはいなかったがまさか身体を悪くしてたなんてな…」

そんな事を言いながらもお義父さんもバタバタと慌ただしく動き回ってる。
昔お世話になった人が昨日の夜亡くなったと早朝連絡が入ったらしい。
私や隼斗とは面識も無く名前くらいは聞いた事があるかも?なんてくらいの相手だったけど
お義父さんとお母さんには昔からの知り合いで旅行には行かずにそちらの家に向かう事になったらしい。

「あちら奥様1人で何かと大変だと思うのよ。だからすぐに行ってあげたいの」
「じゃ…じゃあ今回の旅行は見送ってまた改めて皆で行こうよ」

そうよ。そうすればこの旅行の話もお流れに!

「何言ってるのよ。千夏達は気にする事なんて無いから2人で行ってらっしゃい」
「え?いやでも…」
「当日キャンセルは宿泊費まるまる取られちゃうのよ!食事は仕方ないけど部屋代は
あんた達が行けば払った意味があるじゃない!どうせ払わなきゃいけないんだから」

って…そんな力説されても…

「でも…」

2人きりって言うのが問題で……

「ほら!私達の事は気にしないで行ってらっしゃい。折角休みも取ったんだし」
「…………」

確かに泊まらないのにお金払うなら泊まった方がいいんだけど…
チラリと隼斗を見るとごくごく普通の顔でタバコを吸ってた。
ここでニヤリなんて笑われたら即止めたんだけど…

「ほら隼斗早く支度して行け。俺達も一緒に出る」
「ああ…」

え?何?決定?2人で旅行に行く事決定??

「千夏荷物」
「う…うん…」
「早く支度して来いよ」
「うん…」
「また今度予定立てましょうよ。これから4人で出掛けるなんていつだって出来るわよ」
「……うん…じゃあ…行くね」
「お土産ね」
「わかった…」


それから手早く支度をして4人で外に出る。
お母さんがガチャリと玄関の鍵を掛けた。

「千夏達も鍵持ったわね?」
「うん」
「じゃあ気を付けてな。隼斗千夏の事頼むぞ」
「わかってる」
「お義父さんそれってどう言うこと!」
「事故も無く無事に2人で帰って来いって事だ」
「親父達も気をつけろよ。歳なんだし」
「馬鹿野郎!車に関しちゃお前なんか足元にも及ばねえんだからな」
「それと運転技術は比例しねーだろ」
「まだ隼斗には負けん!」
「ヘイヘイ」
「じゃあ2人共楽しんでらっしゃい」
「お母さん達も気をつけてね」
「大丈夫」

そんな会話を玄関先でしてから先に隼斗と私が車に乗り込んだ。

「行ってきます」

助手席の窓からお義父さんとお母さんにそう言うと運転席の隼斗も軽く手を上げる。

「おう」
「じゃあね」

ニッコリ笑顔の2人…そんな2人に見送られて私達の車は走り出した。

「さて俺達も行くか」
「そうですね」
「また計画立てて今度は4人で行こう」
「千夏にもそう言ったんですけどね…」
「ん?なんだ?」
「いえ…」
「?」
「次は5人で…なんて思ったもんですから」

フフッっと智子が笑う。

「そいつはどうだかなぁ…隼斗の奴案外不甲斐ねぇからな。千夏に関しては……」
「高校卒業したらすぐに結婚するのかと思ったんですけどね…5年過ぎましたね」
「だな…まったくあんだけ宣言しといて未だにだからな…」
「千夏も素直じゃ無いから…」
「今回で少しは進展するかな?」
「どうでしょうね…」

そんな会話を両親がしていたなんてまったく知らない隼斗と千夏は目的地に向かって
高速に乗った所だった。


「んんーーーー」

途中で寄ったSAで私は大きく伸びをした。
家を出てから約1時間…チラリと隼斗を見るとのんびりとタバコを吸ってた。

「隼斗」
「ん?」
「コーヒー買うけど?」
「ああ…」

そう返事をして隼斗はタバコを灰皿に揉み消した。

「後どのくらいで着くの?」
「んー1時間チョイは掛かるんじゃね」

2人で建物の中に入るとズラリと並んだ自動販売機の前に並ぶ。

「何だか悩むな」
「色んなメーカーがあるわね…どれがいいかな」

ちょっと悩んでお互い無難なコーヒーを買った。

「横に広場あったからそっちに行くぞ」
「うん……あっ!」

無言で手を繋がれた。
隼斗は私の方を振り向きもしない…いきなりこんな事しないでよね!!焦るじゃない!!
なんて隼斗には言えずに心の中で文句を言ってた。

「………」

建物のすぐ横に芝生の広場があった。
ここが高速道路のすぐ近くなんて思えないほどの空間…

まあこんな所があれば運転手も同乗者もリラックス出来るわよね…
それに今じゃ犬も何匹か遊んでるし……

「最近のサービスエリアは洒落てんなぁ」

そんな事を言いながらスタスタと歩く。
テーブルとベンチのセットが何箇所もあったけど隼斗はベンチだけの場所に私を連れて行った。

「美味い ♪ 」

隼斗が買ったばかりのコーヒーをすすってそんな事を言う。

「あのね…」
「ん?」
「飲みにくいから離して」

繋がれたままの手に視線を落とす。
自分の利き手が繋がれてたから…

「ホテル行く前に何箇所か寄るからな。楽しみだな〜 ♪ 」

シカトかいっっ!!

「もう……」

諦めて慣れない左手でカップを口に運ぶ。
その後は他愛もない話をして車に戻った。

「お義父さん達もどの辺まで行ったかしらね」
「親父の運転じゃ3分の2くらいか?」
「………」
「何だよ?」

助手席からチラリと横目で見てたら気付かれた。
って言うかワザと見てたんだけど…

「なんか随分大人しいな〜と思って」
「はあ?そう?ってか一体どんなの想像してたわけ?」
「え!?あ……」

うっ!クスリと笑われて何だかムカつく!
だって普段のあんたの態度ならこんなもって来いのシュチュエーションで
浮かれないわけないじゃない!!って思ってたのよ!

でもそんな事言うと墓穴掘りそうだから黙っとく。
言ったがためにそんな気が起こったら最悪だから。





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