君のそばにいたいから…



05・将宗視点




あれから2ヶ月、毎日が順調に過ぎていく。
今までの惰性な日々が嘘のように充実してて、毎日楼々と過ごす時間は
俺が今までに味わったことのない至福の時間だった。

「真面目に付き合いたい子ができたんだ。だから今までの俺はもうお終いにする」

「 「 「  はあ? 」 」 」

教室で “脱チャラ男宣言” をしたら、友達に思い切り驚かれた。
最近自分ではチャラ男とは思ってなかったんだけど、楼々の認識はまさにそれだった。

今までの自分の行動から否定出来なかった部分もあるからそのままにしてたけど、
今さらながらそれはマズイと危機感が出た。

「だから、ちょっと協力してくれ」

まず最初にしたことは、俺の周りに不用意に女の子を置かないことだ。
いつもの大名行列ならぬ、女の子との教室移動はどうにかしなければならない。

別に好きな子がその中にいたわけじゃないし、そんな取り巻きがなくなったからって俺は困ることはない。

逆に楼々に誤解されるほうが困る。

楼々…… “ちゃん” を付けなくなっただけで、なんだか自分の彼女になったみたいで
嬉しい気分なのはなんなんだ。
自然と顔が緩んでしまう。

「おい!将宗、なにニヤけてんだよ」
「俺に女の子が近づかないようにしてくれ」
「 「 「  はあ? 」 」 」

受け取り方によっちゃ、なんとも贅沢なお願いなのかもしれないが俺は超真面目だ。

「お前、本当にマジなんだ」
「マジだ。これで上手くいかなかったら俺、犯罪者になるかも」

その言葉に友達の顔が引き攣った。

半分は冗談だけど半分はありえそうで怖い。
もし楼々にフラれたら……?もし楼々が他の男と付き合ったりしたら……?
俺はまともでいられる自信ない。
下手すりゃストーカー、最悪は楼々を拉致って監禁なんてありえそうで怖い。

そんな俺の胸のうちを知ってか、友達は出来る限り協力するって言ってくれた。

やっぱ頼りになるのは友達だ。
いつかこの恩は必ず返そうと決め、俺は友達皆に頭を下げた。


やっぱり一番の問題は女の子達だった。
昨日まで俺にくっついてても俺は文句を言わなかったのに、今日から突然女の子達を避けだしたからだ。

「えーなんで?どうして?一緒にいるくらい、いいじゃん!」

何度言われたことか。
だからって話くらいはしたりするけど、ふたりっきりにはならないようにしようと思う。
常に誰かしら友達といるようにしてる。

特に教室移動は、友達に協力してもらって女の子を追い払ってもらった。

今まで何気なくしてことが、いざ本気の相手が現れたとき、こんなにも障害になるなんて
思わなかった。
誰とは言わなかったけど、本気の好きな子が出来たからって正直に話した。

まあその日の放課後、楼々を教室まで迎えに行っちゃったからバレちゃったけど、
それは別に気にすることじゃない。

そんな俺の今までとは180度手のひらを返したような行動は、女の子の中には不満な顔をする子もいたし、
いきなり俺に告白してきた子もいたりしたけど、丁寧にお断りした。

だって、俺にはもう楼々だけだからさ。


初めて楼々を連れての帰り道。
真っ直ぐ帰るのは勿体なくて、行ったことのあるアイス屋に向かう。

男の中でも評判の店で、楼々も気に入ってくれて連れてきて良かったと思った。

2人で食べたアイスはいつもより美味しくて、次はお互いのアイスの食べっこをするぞ!
と心に決めた。
想像するだけで、俺の心臓はドキンドキンと跳ね上がってた。

しばらくの間は時々女の子から携帯に電話が入ったりしてたけど、それも数日で治まった。
いつも周りにくっ付いてた女の子も話すくらいで、俺のあとをついて来なくなった。

そこには友達の説得とかもあったみたいで、俺から言うよりも話を聞いてくれたかもしれない。

楼々との関係も順調だ。
なるべく自然を装って、緊張しながら楼々の髪や頬に触れたけど、嫌がる顔も態度もしなかったから
警戒はされてないみたいだ。
それにしても、たがが女の子の髪の毛や頬に触れるくらいで、こんなにも緊張するなんて初めてで
触れたあとの楼々の赤くなって照れた顔がなんとも可愛い。
その初心な態度に俺はまた囚われてしまう。
このままでいけば俺のことを “彼氏” と認めてくれる日も近いかもしれない。
そうしたら……きっと今まで以上に2人の一緒にいれる時間は有意義で、濃密な時間になることは間違いない。

楼々とつき合えたらまずは学校中に2人の交際を宣言して、楼々を俺のモノ宣言だ!
ああ……考えただけでもウキウキのワクワクで舞い上がってる。

できれば、期限前でもいいからつき合うことをOKしてくれないかな?
もう、つき合ってもいいんじゃないかな?
楼々も俺と同じ思いだと思うんだけどな……自惚れかな?


そのときの俺は間違いなく楼々とつき合えると思っていたし、確信できてた。

だから急に楼々の態度がよそよそしくなって、もうすぐ3ヶ月目を迎えようという頃になっても、
つき合い始めようという気持ちが、楼々にないことに気づいた俺は愕然とするしかなくて……。


一体どうしてなんだと、楼々を責めてしまいそうな自分を何とか堪えるので精一杯だった。





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