ひだりの彼氏 番外編 クラスメイト・須々木君とツバサ 1



02




「オイ!ツバサーーーー!!なに帰ろうとしてんだよ!!」

階段をのんびり下りてるツバサを見付けて後ろから肩を組んで捕まえた。
朝の約束を無かったことにして帰ろうっちゅー魂胆だろうがそうはいかないっての!
そんなお前の行動はお見通しだ!

「帰りたいから」
「バカ野郎!今日はこれから俺とゆっくり話す約束だろうが!逃げんじゃねーよ!」
「そんなの知らない」
「はいはい!じゃあ行こうか ♪ 」
「だから行かないって。行く意味がない」
「お前には無くても俺にはあるんだよ!いいから付き合え!とりあえず飯食うぞ」
「ヤだ」

ぼそりと本当に嫌そうにツバサが呟いた。

「だからそんな意見は却下だ!却下!ホラ行くぞ。飯食ったら俺んちな」
「えーーーじゃあご飯代須々木の奢りね」
「はあ?ナメてんじゃねーよ!なんで俺がお前の分まで出さなきゃなんねーんだよ」
「奢るのは当たり前じゃん。オレは別に須々木に付き合う義理は無いんだから。ならもうお終い。バイバイ」

冷めた視線を向けられた。
これ以上はマジに機嫌損ねそうだったから仕方なく俺が折れる。

「わかったよ。でもハンバーガーのセットだぞ。俺だってそんな金ねーし」
「だったら誘わなきゃいいんだ」
「だからお前と話するためだろ!ほらいいから行くぞ」
「めんどいな……」
「ダレてんじゃねーよ!奢ってやるんだからしっかり喋れよ」
「………」

諦めたようなツバサだけどこっから先がまた大変だったりするんだよな…
絶対素直になんて喋べらねーよな……コイツ。


高校から家が近い俺は徒歩通学。
だから本当は遠回りになるが駅前まで出てお馴染みのハンバーガー屋に入る。
始業式とあってウチの高校の生徒やら近隣の高校の生徒やらで結構混んでた。
それでもまだ数席残ってた座席に向かい合って座って食べ始めた。

ツバサは男のクセに大喰らいじゃない。
ガツガツと食べるわけでもないがだからってチマチマ食べるわけでもない。
至って普通に食べるのになんでだかそんな食べ方に女共は視線を奪われるんだよな。
おかしいだろ?ただ食べてるだけで?

「ねえ…」
「?」

黙々と食べてると(ツバサはワザと喋らないから)横にウチの高校の女子2人組みが
食べ物が乗ったトレーを持って立ってた。
顔は見たことある子達で確か同じ学年だったはず。

「ねえ一緒に食べていい?」

確かに4人座れるテーブルに2人で座ってるんだから別に一緒でも構わないんだが…

「ヤダ」

速攻ツバサが女の子2人を拒否した。

こいつの女子嫌いは筋金入りだから。
どうしてそんな嫌いなのか俺にはわからない。
ってか折角モテる容姿なのに勿体ないと俺は思う。

「だって4人掛けでしょ?いいじゃない4人で楽しく食べようよ。ね ♪ 三宅君?」

やっぱツバサ目当てか…殆どクラスメイトや同じ学校の奴とつるんで放課後に遊んだりいないツバサだから
こういうところで会うなんて珍しいからな…チャンスは逃がさないってことか?

「あなたは構わないでしょ?」

俺の名前は知らんのか?チッ!ちょっと凹むじゃないか!

「俺は構わないけど…」
「!!」

言った瞬間ツバサが俺を見た。
のほほんとした顔だったけど不機嫌オーラ出しまくって拒絶反応全開だ。

「ね?彼もイイって言ってくれてるんだし ♪ 」
「お邪魔しま〜〜す ♪ 」

そう言って女の子達が1人ずつ俺とツバサの隣に座ろうとした瞬間ツバサが立ち上がった。

「須々木行くよ」
「へ?な…え?」
「もう行くって言ってる。どいて邪魔」
「え?」

隣に座ろうとしてた女の子に超不機嫌に素っ気無くそう言ってツバサがトレーを持ち上げた。
って俺まだ食い終わってないっての!!

「ちょっ…ツバサ俺まだ食い終わって…」
「トロイな」

言い終わる前にズバッと言い切られた。
ってかお前だって残ってるじゃんかよ!!

「邪魔」
「え?あ…ごめんなさい……」

おどおどしながら女の子が席から通路にでるとツバサは無言で歩き出した。

「オイ!待てって!!ああ…ごめんね…あいつ愛想無くて…また機会があったらね ♪ 」

なんで俺がフォローしなきゃいけないんだっての!
まあ今度学校で擦れ違ったら声掛けるキッカケくらいにはなんだろう。

あんな素っ気ない態度だったのに言われた女の子は何気に嬉しそうなのはなんでだ?
おかしいだろ?それ?

なんて思いながらツバサのあとを追った。

「勿体ねーな…まだ残ってんのに」

俺はゴミ箱の前でブツブツ文句を言ってた。

「はい」
「え?」

そんな俺の前にお店の紙袋が差し出された。

「これに入れてお持ち帰り」
「はあ?何だよそれ?だったら最後まで食えばいいじゃんか!アホクサ!!」
「なんで女子と一緒に食べなきゃいけないんだよ。食べ物が不味くなる」
「な!?お前マジ言ってんの?」
「当たり前。それに早く帰りたいから須々木んちで食べる」
「まあいいけどさ…お前そこまで女子嫌いなの?」
「嫌い」

それが何か?と言いたそうな顔されて俺は言い返すこともせず渋々と残った食べ物を紙袋に入れた。
食べかけをお持ち帰りって…初めてだよツバサ君!

ツバサは全く気にした様子も無く紙袋片手に飲みかけのシュースを飲み始めて外に歩き出した。



「自転車って乗らないで押して歩くって結構疲れるんだよね」

俺の家に着いてリビングのソファに座るとツバサがそんな愚痴を溢した。

「だから途中から俺が代わりに押してやったじゃねーか!文句言うな!」
「誘ったの須々木だもん。当たり前」
「………」

当たり前当たり前って…この野郎〜〜!
でもコイツの機嫌を損ねるわけにはいかないからもうちょっとの我慢我慢!!


「マジで食べるのか?」
「当たり前」

そう言って食べかけの冷めたハンバーガーを食べるツバサがいた。

「温っためてやろうか?」
「いい」
「うまいか?」
「女子と食べるより数倍おいしい」
「あっそ」

冷めたハンバーガーをうまそうに食べる男…変わった奴だ。

「で?」
「でとは」
「だからあの年上の彼女だよ!彼女なんだろ?誤魔化すなよ」
「だから違うって」

ハンバーガーを食べ終わって出してやった飲み物を一口飲んだツバサは朝と同じ言葉を言った。

「まあいいや。でも付き合ってるっつーのは確かだよな?」
「付き合ってるわけでもないけど」
「じゃあどんな関係なんだよ〜気になるじゃん!」
「須々木が気にすることじゃない」
「なんだよ〜なんでそこまで隠すんだよ。変な奴め…まあお前等の関係は置いといてだな〜」

俺はニヤリと笑う。

「……」

ツバサは表情を変えずに俺を見る……いつもの無表情だ。

「あのお姉さんとどこまでイってる?」
「……」
「なあ…あんな濃厚なディープキスする仲なんだからもうやりたい放題なんだろ?ぶっ!!イデッ!!」

いきなり顔面にツバサのパンチが入った。
咄嗟に後に身体を引いて直撃を免れたがそれでも結構な勢いで拳が顔面に当たった。

「痛てぇなっ!」
「下種の勘繰り」
「は?」
「次言ったら喋れないようにその口塞ぐ」
「はあ?」
「……」

その無表情な顔となんの感情のない目が怖いわっ!!

「なんだよ〜ツバサ〜キス以上させてもらえてないのか?」
「別に」
「隠すな隠すな!まああんな年上だもんな〜高校生じゃガキに見えちゃうのも仕方ないよ」

俺はウンウンと頷いた。

「……」

ツバサは無言だ。
もしかして呆れ果ててるのかもしれないがそこはあえて無視する。

「と言うわけで!これから俺がお前に数々のテクニックを授けよう!」
「テクニック?」

お!食いついたな!!ヨシヨシ ♪

「ちょっと待ってろ」

俺はツバサを1人リビングに残して階段を駆け上がり自分の部屋に飛び込んだ。
そして必要なモノを持って一段抜かしで階段を下りる。

「待たせたな ♪ 」
「?」

俺は持って下りたDVDの1枚をデッキに入れてリモコンの再生ボタンを押す。

「お手本になんぞ〜」
「?」

相変わらずの無表情な顔のツバサがどんな顔するか楽しみだな〜 ♪





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