ひだりの彼氏 番外編 クラスメイト・須々木君とツバサ 2


01




「ん?」

放課後ダチと喋ってたら携帯が鳴った。
ディスプレイには見慣れない名前が表示されてた。

「え!?マジ!?」

何かの間違い?

「どうしたん?須々木?」
「いや…」
「なに?元カノ?」

なんで元カノなんだよ…確かに今付き合ってる女はいないけど。

「違うって」

多分初めてじゃないか?……ツバサから電話が掛かってくるなんて?
俺からは何度か掛けたことはあったけど……

「はい」

『……オレ。今どこ……』

やっぱりツバサ…一体何がどうした?

「まだ教室にいるけど?」
『じゃあ自転車置場に来て……』
「はぁ?」
『いいから1分以内ね。すぐ来て』
「な!?あ!おいツバサ?」

言いたいことだけ言って切れた…俺は何だか狐につままれた気分だ。

言われた通り自転車置場に向かうと本当にいたよ!ツバサが!!
しかも珍しく女と一緒にいる。
制服を着てないところをみるとうちの生徒じゃないらしい。
一体誰だ?ツバサが女といるなんてどうしたんだか?

声をかけたらなんとつい先日までここに来てた教育実習の神山芽衣子ちゃんだって言うじゃねーか ♪
ここに実習に来てたときよりもバッチリと化粧してて大人の色気がムンムンしてる。
しかも俺に会いに来たって?マジか!?
ツバサは相変わらずの無関心で俺と芽衣子ちゃんをおいて自分は自転車に乗ってサッサと帰って行った。
俺は微妙にぎこちない芽衣子ちゃんと多少かみ合わない会話をしながらこの後教室に残ってるダチと一緒に
カラオケに行くことに頷かせた。

後で知ったが本当はツバサを誘いに来たんだと芽衣子ちゃんに愚痴られた。


次の日の朝昇降口でツバサに会った。

ナゼかいつもの無表情の顔なのにムッとしてる気がした。

「ちょっと」
「なんだよ?」

上履きに履き替えると廊下の隅に連れて行かれた。
昨日からツバサの行動に驚かされる。
とにかくツバサから行動を起こされるなんて珍しいことこの上ないんだ。

「二度としないで」
「は?」

何を?

「人の携帯番号アカの他人に勝手に教えるな」
「え?」
「昨日のあの女」
「………ああ!!」
「ああじゃない。エライ迷惑。個人情報」
「いや〜だって腕絡ませて身体押し付けられてあの豊満な胸が当たって上目使いの
甘〜い声で 『教えて〜 ♪ 』 って言われたら教えちゃうだろ?」

男なら!

「馬鹿なの」
「ぐっ!」

すんげー呆れ返った言い方されたっ!でも顔は無表情だからなんか恐えぇ〜

「大体なんで携帯番号?まあメールアドレスでも同じだけど」
「ほら!アドレスだと変更すんの面倒だろ?電話なら着信拒否で済むだろうが?」

って本当は芽衣子ちゃんにメールアドレスじゃなくて番号教えてって言われたからなんだけどさ〜
アドレスは変えられたら終わりだかんな…携帯番号なら最悪公衆電話からでも掛けられるし。

「着信拒否も同じだよ。メンドイことには変わりない。いい?もう二度と誰にもオレの携帯番号教えるな。
メールアドレスも同じ。わかった」
「……」

じっとツバサに見つめられる。
感情の篭ってない瞳なのになんで?なんか恐いんですけど?
って言うけどなぁ〜お前の携帯電話教えるとそれなりに見返りがあるんだよ。
それにそんなにだれもかれも教えてるわけじゃねーし。時々だよ時々。
でもまあとりあえず今は頷いとけ。

「わ…わかったって…」
「……」

う…なに?疑ってる?ツバサの視線が外れない?

「え?」

そっとツバサの右手が上がって俺の左肩にふんわりと置かれる。

「本当にもう二度としないよね」
「へ?」

俺の肩に手を置いたまま今度はツバサの左手が俺の左手首を掴んだ。
なんだ?

「う″っ!!」

肩の手と手首の手が同時にほんの少し動いたと思ったら肩に激痛が走った!

「イっ!!??」

なんだ?

「本当にもう二度としないってオレに誓う」
「…っ…は…あ?」

なんだ?ツバサがなんかしてんのか?

「誓わないとこのまま肩外すけど」
「はあ?!」

なに言ってんだーーーー!!コイツぅ!!!でも痛いってーーーー!!イデデデデ!!

「ねえ誓う」

首傾げながら恐いこと言ってんじゃねーよ!!でもマジだよコイツ!無表情でもわかる。
やる気満々だよ!!

「ち…誓う!誓います!誓わせてください!!」
「……」
「…ぅ」

未だにじっと見られてる……なんだ?ダメか?

「約束ね」

そう言うとツバサの両手が俺から離れた。
痛みがウソのように引いていく。

「……」

俺はその場で立ち尽くす。
心臓がバクバクのドキドキの冷や汗タラタラだ。
ツバサは無言で教室に向かって歩き出した。
俺はそんなツバサをジッと見つめて見送った。

一体なんだったんだ?あのツバサは?

そう言えば昔先輩に呼び出し喰らっても平然と帰って来たって噂は本当だったのか??
なんて考えてたらツバサが振り向いた。

「次はないから」

「!!」

だからその無表情はやめろっての!!
俺は無言でコクコクと激しく頭を上下に振った。

相変わらず謎の男ツバサ……益々興味がわいてくる。

ただ接し方を間違えちゃいけないんだよ……
と今回のことを肝に銘じつつ外されそうになった左肩を無意識のうちに撫でていた。

その後はいつものツバサで休み時間は気持ち良さそうに昼寝をしまくってた。







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