ひだりの彼氏 番外編 クラスメイト・須々木君とツバサ 3


01




街並みがクリスマスのイルミネーション一色に変わる頃またツバサをからかうアイテムを手に入れた。
ゲーセンのUFOキャッチャーでゲットした品物……真っ赤なミニスカートバージョンのサンタの衣裳。

「で?一体誰に着せるつもりなん?須々木」
「……」

さあ?誰だろうな……なんで俺こんなの取っちまったんだだろう?
結構な金つぎ込んで……ハマったのか?
巷のこれでもかってほどのクリスマス・アイテムに?

「なに?これからクリスマスに向かって彼女でも作んの?」
「でもいきなりコスプレは受け入れてもらえなんじゃね?ブハハハッ!!」

一緒にいる奴等は好き勝手に言って盛り上がってる。

「そんな趣味ねぇって」

なんて言いながら可愛い女の子がこれ着て誘って来たら……やっぱ飛びつくよな。

そんな妄想を抱いても現実になることはないと確信できるのが悲しい。
でも遊んでそうな女なら着てくれっかもしれねーよな?

「でもよーこんなの着た年上のナイスバディなお姉様に誘われたらぜってー乗るよな ♪ 」
「イブの夜中に枕元で 『あたしが・プ・レ・ゼ・ン・ト・よ〜 ♪ 』 なんて起こされたら……
かあぁぁぁぁ!!俄然その後頑張るぜ!オレは!!」
「うわっ!俺想像しちまったじゃんよー!!」

「………」

そんな会話を聞きながら俺はある人物を思い出す。

ツバサ……あいつの彼女は年上だったよな〜くふふ ♪
しかも天下の往来であんな濃厚なディープキスまでする相手だぜ?絶対着るって!
よし!ここは俺がツバサにクリスマスプレゼントとして譲ってやろう!

そんな決意をしてから数日後の2学期の終業式の帰りにツバサを呼び止めた。
理由は知らんが珍しくツバサがケガをした。
毎年恒例の球技大会もそれを理由にサボってたし…いくら理由を聞いてもツバサは訳を言わなかったけど…
もしかして彼女を守っての名誉の負傷か……それとも…ツバサには似合わない喧嘩?

「なに」

そのとんでもなく迷惑そうな視線と喋り方はやめろ。
ホントツバサはいつも相変わらずだ!コイツには喜怒哀楽ちゅーもんが無いのか??

「今日クリスマス・イブだろ?一足先にお前にクリスマス・プレゼントやるよ」
「いらない」
「なっ!?」

この野郎ソッコーで拒否しやがったな!!

「なんでだよ。有り難く受け取れって」
「だからいらない」
「なんで?」
「どうぜロクなもんじゃないし」

スゲー呆れた眼差しくれやがった!
こいつあのゴムを勝手にカバンに入れといたの根に持ってやがるな?
へっ!俺の行為をないがしろにするからだ。
今度は1ダース入れといてやろうか?

「馬鹿野郎!せっかく俺様がお前と年上の彼女の為にプレゼントしてやるって言ってんだぞ!受け取れ!」
「余計なお世話だし絶対いらない」
「いいのか?見たら欲しくなると思うけどな〜〜」
「?」

お!少しは興味持ったか?

「じゃあーーーん ♪ どうだ?ホレ見ろ!超ミニのサンタ服だぞ!」
「………」

俺は持ってた袋からババーーン!!っと真っ赤なサンタの服を取り出してツバサの目の前にかざした。
ツバサは無言でソレを見つめてる。
そうだろ ♪ そうだろ ♪ 惹きつけられんだろ ♪

「お前のために一生懸命頑張って手に入れてやったんだぞ」
「欲求不満」
「ちっ……ちがーーーーう!!お前のためだ!お前と彼女のために俺が自腹で用意してやったんだぞ!」
「いらない」
「ツバサ!」
「いらない」
「いいか?聞けツバサ!」

俺は片手にサンタの服を握り締めて反対の手でツバサの肩を掴んだ。

「これを彼女に着せてみろ?夜中に枕元で 『あたしが・プ・レ・ゼ・ン・ト・よ〜 ♪ 』 なんて起こされるかもしれないぞ」
「………」

そんな話を振ってもツバサの無表情な顔は変わらなかった……クソ…ダメか…

「ん?」

スッと俺の手からサンタの服が奪われた。

「袋」
「へ?」
「このまま持って帰れない」
「あ!ああ…」

俺は最初に入れてきた袋をツバサに渡すとツバサはその袋に
サンタの衣裳を詰め込んでサッサと俺に背を向けて歩き出した。

ええっっ!?うそ?……マジか?マジでアレ……持って帰るのか??

ウソだろーーーーーー!!??ツバサが??ホントマジであの服を彼女に着せるのか??

俺はツバサの帰っていく後ろ姿を見送りながらチラリと見たツバサの年上の彼女を思い出した。
顔はもうおぼろげで覚えていないがアレを着てくれそうだったか?

いやいやいや……そんなことはどうでもいい!
ツバサだよ!あのツバサが彼女にコスプレさせるのか??
そりゃそうさせるつもりで俺もツバサにわざとあの服を渡したんだが……

知りてーーーー!!!
一体どんなクリスマスを過ごすんだ??ツバサ!!!


俺はその後も気になって次の日にツバサに 「どうだったか教えろ」 とメールを送ったが
いつもの如くあっさりとスルーされた。
電話なんかかけても同じだ。
出る気配も無い!ってか電源入ってねーし!!くそぉーーーーー!!

俺は気になるぞーーーーツバサ!!
夜中に彼女をプレゼントされたのか?ツバサ!!


結局年末も正月もそのことが気なって仕方なかった須々木君。

3学期が始まってツバサに懲りもせず追求してもツバサが答えるわけもなく
あのサンタの衣裳をツバサの年上の彼女が着たの着なかったのか…

2人でイイ思いをしたのかどうか永遠にわからないままだった須々木君でした。







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