「トイレ行ってくるから待ってて。」
「は?」
携帯を取り上げられ…耳元にそんな事囁かれ…た。
しかも 「もう我慢できない…」 なんて意味深なことまで言われて…
でもそれはトイレ我慢できないだったなんてからかわれて……
「はあ〜スッキリ。」
トイレから戻って来た彼が珍しくホッとした顔に見えた。
そんなにギリギリだったの?まったく…
「デリカシー無いわね…」
「そう?何だか奈々実さんだと言えちゃうんだよね。」
「そうよね…若い子にそんな事いったら引かれちゃうものね。」
どうせそんな事も気にならない年上女だと思ってるんでしょ!
「そう?でもオレ周りの女子には言わない。ここまで話したいとも思わないし。」
「………」
「ん?」
「ホントあなたの精神構造良くわからないわ…はい!携帯返して!」
「あ…覚えてた?」
「覚えるわよ!」
「奈々実さんはトイレいいの?」
「平気よ!大人だから!」
「ほう。」
「それにもう帰るだけだし。」
「え?もう帰るの?」
「当たり前でしょ!映画は観たし用は済んだもの。」
「何か他にウィンドウショッピングとかしようとか思わないの?」
「今別に欲しいモノ無いし。」
「オレともっといたいと思わないの?」
「は?何でよ!」
「!!」
「何であなたとこれ以上一緒にいなきゃいけないのよ!」
「だよね ♪ 」
ん?今の顔……なに?
まいいか!
「コーヒーご馳走様。じゃここでさよなら!」
「え?何で?」
「だってあなたまだここでウィンドウショッピングするんでしょ?」
「だから何で?」
「人にしない事呆れといて自分はしないの?」
「しないよ。興味無いし。」
「あ…そう。とにかくさよなら。本当にもう私の車に乗って来ないでよね!」
「何で?」
「迷惑だからよ!自分で気付きなさいよ!」
「そう。」
「………」
まったく!と言う目付きで睨んだ。
「ん?」
「何でついてくるのよ!」
「使う駅も下りる駅も同じなんだから行く方角も同じなの当たり前でしょ。」
「!!」
確かに…そうなんだけど…
「じゃあ私ちょっと買い物して帰るから…」
「さっきはしないって言ったのに。」
「気が変わったの!あなたは帰るんでしょさよなら。」
「大人はすぐウソをつく…」
「ぐっ!」
「嘘つき。」
「………」
もーーーまたあの無表情な顔で言われた!
でもなんか変な罪悪感?いや…起きるのおかしいでしょ?
どう見ても迷惑被ってるの私の方なのに…
「座れて良かったね。奈々実さん。」
「………」
何で同じ電車で隣同士で座ってるの?私…
「…………」
「…………」
また彼は私の左側…彼の右顔…
「じゃあ本当にここでさよなら。今日はお疲れ様でした!」
最初に乗って来た駅のロータリー…
もう面倒だから下手に出て早々にお引きとり願う事にした。
「送る。」
「え?」
「女性の1人歩きは危ないから。」
「は?ってまだ昼の2時なんだけど?こんなに人通り激しいでしょ?」
どれだけの通行人がいると思ってるのよ…
またおかしな事を言い出す…この高校生は……
「そう?」
「だから必要ありませんのでお気遣い無用ですから。」
「遠慮しなくていいから。」
「します!本当にあなた一体どう言うつもり?しつこいわよ!
構われるのがイヤだってあなたならわかるでしょ?」
「オレに構われるのイヤ?」
「イヤったら嫌ったらいや!!」
「ふーん…」
「何よ…」
「「イヤ」の三段活用。」
「むっ!!」
「ホント奈々実さんって貴重な存在だよね。」
「は?」
「いいから!人の好意は素直に受けた方がいいよ。」
「え?ちょっと!」
「ほら行こう。」
「………」
彼が私の先を家に向かって歩き出す…
そう言えば彼は私の家知ってるのよね…はぁ…
「何でこんな目に……」
「ん?」
「災難だなって言ったの!」
「そう?」
あら…ちょっと笑った?
「本当にここでいいから!」
家の門の前で彼に振り向いてそう言った。
「うん。」
「じゃあ今日頼んだ事守ってね。」
「覚えてたらね。」
「現役高校生でしょ!」
「そうだった。」
「………」
「奈々実さんの部屋ってどこ?」
「え?」
「あのオレンジ色のカーテン?」
「そうだけど……」
2階の角部屋…
「何で?」
「聞いただけ。それじゃ。」
「サヨナラ!」
もう会わないつもりのサヨナラの言い方をしたのに…
家に入って雑用を済ませてコーヒー片手に自分の部屋に行ったら………
「なっ…!!??」
部屋の入口のドアでガクッ!っとなって後退りした!
「遅いな。奈々実さんは。」
どうして???彼がベッドを背もたれにして床に座ってた!!
「な…な…な…な…なんであなたが私の部屋にいるのよーーーーーっっ!!!」
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