「お帰り奈々実さん。」
ちょっぴり笑顔(に見えたのよ!)で首をちょっと傾けた彼が玄関を開けたら目の前に立ってた。
「お出迎え嬉しい?」
「はい。鍵返して!」
そう言って彼の目の前に手を差し出す。
「ただいまくらい言って欲しかったな。鍵はあっち。」
そう言って部屋の方を視線だけで見る。
「今日は帰っ…」
彼の横をすり抜けて奥に向かうと…キッチンのテーブルの上に料理が置かれてた。
「夕飯作った。2人分。まさか追い出さないよね。」
言いながら料理が並べられてるテーブルのイスにさっさと座る。
「………食べ終わったら帰ってね。」
私はバックを置きに奥の部屋に入る。
「どうだろ?」
そんな返事が帰ってくる。
「帰ってね!」
「いただきます。」
「ちょっと…人が落ち着くまで待ちなさいよ!」
「いただきます。」
「ちょっと…ってこれ何?」
「スポーツバック。」
「は?」
確かにバックよ…大きめのスポーツバックがドカン!とキッチンの奥の部屋の畳の上に置いてある。
「だから何でこんなバックがここにあるの?」
「オレの最低限の必要なもの。」
「何で?」
「ホームステイ。もう忘れたの?頭大丈夫?」
「だからOKしてないでしょ!」
「オレの方が大丈夫なら良いんでしょ。いただきます。奈々実さんも早く手洗って。」
「人の話を…」
「いただきます。」
こっち見なさいよ!
「もーーー!!待ちなさいよ!!」
慌てて手を洗ってイスに座る。
「いただきます。」
「いただき…ます…」
「もう何回言わせるんだか。」
「こっちのペースに合わせないからでしょ!大体いきなり夕飯って…」
「その方が後でゆっくり出来る。」
「あなたは帰るんだから!」
「今日のデザートはシュークリームだから。」
「え?どこの?」
思わず食いついてしまった。
「今流行ってるコンビニの?」
「そう。」
確か以前そんな話しを彼とした様な気が…
「ちゃんとご飯食べたらね。」
「………子供じゃ無いんだからちゃんと食べるわよ。」
言われたからじゃないけどちゃんとご飯を食べた。
「はい。」
そしたら食後のデザートがちゃんと出て来た。
「ねえ…」
「ん?」
「本当に帰ってね。」
「ホント奈々実さんて貴重な存在だよね…やだな…」
「え?」
やだな…って…どう言う…意味?
「帰らないよ。自分の気持ちがこのままじゃ嫌だから。」
「は?」
「このまま考えすぎて病気になってもいい?」
「はあ?」
「きっと今自分の家に帰ったら夏休み中その事考えて病気になる。」
「あなたがそんな病気になるなんてあるわけ無いでしょ!
今だってその無表情で全然平気っぽいじゃない!」
「そんなのわからないでしょ。」
「………自分の気持ちがハッキリしたら帰って…くれるの?」
「どうだろ。」
「何よそれ…」
「まあ夏休みが終われば帰る。」
「あと40日近くあるじゃない!」
「だね。」
「お家の人にちゃんと話したの?」
「うん。全然大丈夫だった。まあ時々は帰るけどね。」
そう…一番の難関だと思ってた絢姉さんは何だか他に気になる事があるらしく
オレの話も上の空だった。
一体どうしたんだかわからないけど…まあ丁度良かった。
「…………」
「じゃあ…布団用意しないと…」
「勿体ないからいいよ。」
「良くない。私が良くない!」
「勿体ない。あのベッドでも十分2人で寝れる。」
「だから…」
「オレ布団なんか買わないよ。なに?奈々実さんが出してくれるの?」
「何で私が出すのよ!」
「じゃあ決まり。ああそれともこれからのお泊りに備えて置いておく?」
彼がテーブルに頬杖を着いてちょっと首を傾ける。
「冗談でしょ!」
「じゃあ布団買わない事で決まり。ご馳走様でした。」
「え?!ええ??」
彼が食べ終わった食器を持って流しに向かう。
私はシュークリーム片手に何だか…言いくるめられた気がしなくもなくて…
納得がいかなかったのに…それ以上何も言えなくなってしまった…
はあ〜〜〜〜 参ったな…
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