ひだりの彼氏


24




「………」

夕飯を食べた後お互いシャワーを浴びてベッドが置いてある部屋とは違う部屋で
2人並んで座ってる…
出来ればテーブルを挟んで座りたいのに彼がそれを許さない。

考えてみたら彼って結構隠れ俺様?いや〜ちょっと違うかな?
いつの間にか相手を自分のペースに乗せるが上手なだけ?

だからって何って訳でもなく…私は読書彼も読書…

黙って2人で読書…
別にそれでなんの苦でも無かったんだけど何となく音楽を掛けた。
ごくごく普通の今人気の女性ボーカルの歌。

音楽が流れた瞬間彼が私を見る。

「嫌?」
「ううん。今度オレもCD持って来る。」
「そうね…でも私ロックとかヘビメタはパスだから…ラップ系もダメ。」
「大丈夫。そう言うのは持って来ないし持ってない。」
「ならいいけど…」

その後また2人して読書に集中…
って彼はそうかもしれないけど私はそんな素振りをしながら彼を何となく観察。

真剣な顔なのかいつもと同じ顔なのか…良く分からない…

でもこれは…やっぱりどうにかしないと本当にマズイ事よね…
こんな同居と言うか下宿と言うか…
まず同じベッドで寝泊りする事自体おかしいんだから…

何で彼にいつも振り回されるんだか…
ガツン!と言うつもりがいつも逆に丸め込まれるって…どう?26歳…


「ねえ…」
「ん?」
「こんな事してて本当にあなたいいの?」
「とは?」

本を閉じて私の方に向き直る。

「だから…こんな何も無い間柄の私と貴重な高校生最後の夏休みを過ごしちゃって良いのかって聞いてるの。」
「そんなに貴重?高校最後の夏休み。」
「貴重じゃない?年齢だって10代も残り少ないし…大学生とはまた違うでしょう?」
「そう?」
「そうでしょ?友達とかと一緒に遊べばいいのに。」
「だから絡まれる嫌いなの。嫌なんだって馴れ馴れしく触られるの。」
「だからそれはスキンシップでしょ?今時珍しいわよね…あなたみたいな男の子。」
「どう?」
「だって普通同年代の女の子とかに興味湧くでしょ?
好きな子が出来てその子と付き合いたいとか思わないの?」
「だから女子は嫌い。鬱陶しい。」
「だから私も女子だって…」
「だよね。」
「だから…」
「なのにこうやって一緒にいれるのはなんでなんだか知りたいの。」
「わかるの?こうやって一緒にいれば?」
「さあ。」
「あのね…」
「奈々実さん。」
「な…なに…」

急に真面目な顔するからドキリとなる。

「ドライヤー貸して。あふ…髪乾かして寝る。」

「!!」



「…………」

本当に寝た……

先にベッドに横になってる彼を隣の部屋から見てる…
ベッドに仰向けで片足は膝を立てたまま寝てる…即熟睡って流石と言えば流石だけど…

どうしよう…こうなると後からベッドに入るのって何だか緊張するわよね…
しかも私の方が奥の壁際だし…彼を跨がなきゃいけないし…ああ…本当どうしたらいいかしら………

う〜ん…う〜ん……ん?

『オレ女子にかまわれるの嫌い。』

そうよ!そうじゃない!彼って女子にかまわれるのが嫌いだって言ってじゃない!
だったらかまってみればいいんじゃない?
私は何気に彼に係わらない様にしてたから…だから彼だってそんな所が気になってるんじゃないかしら?
だったら他の女の子と同じ様に彼の事をかまえば……彼も私の事気にならなくなるんじゃないかしら!
そうよ!何で今までそんな事思い付かなかったのかしら!

そうよね ♪

私は1人そんな事を考えてニマニマしてた。



「…………」

何でだか違和感で目が覚めた。
横を見れば奈々実さんがいない…でも部屋の電気は消えてる。

「……奈々実さん?」

時計を見れば午前2時過ぎ…
こんな時間に何処に行ったんだ?

「ん?」

良く見ると隣の部屋に何やら視界に入るモノが…
念の為に見に来ると…

「奈々実さん…」

奈々実さんが座布団を2枚並べてその上にタオルケットに丸まって眠ってた。

「………すぅ…」

「…………」

声を掛けたら起きるよな…ってこれでも起きるかな?

なるべく振動を与えない様に奈々実さんの身体に下に腕を差し込む。

「………くぅ…」

「…………」

起きない……まあ起きても面白そうだけどね…

何とか奈々実さんをお姫様抱っこで抱き上げた。
ちょっと静止して様子を見る……やっぱり起きる気配なし。

そのままベッドまで連れて行ってそっと下ろした。
昨日と同じ壁際…

「ん…」
「………」

奈々実さんは仰向けオレは俯せ…
自分の両腕を組んでその上に頭を乗せて奈々実さん見てる。


仰向けの奈々実さんの横顔…初めて見た時の横顔とは違う…穏やかな顔…





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