「はあ…」
「疲れた?」
「んーやっぱり足がね。それに帯が苦しい。」
あの後…私は迷子にはならずに無事に帰って来た。
って当たり前だけど…
家に着くまで私は彼と手を繋いでたから彼とはぐれる事なんて無くて…
振り解くことも出来ずにって言うかそれも面倒で…
だからされるがままだったって言った方がいいかな…
高校生って言ってもやっぱり男の子よね…繋いでた手は…私より大きな手だった…
「はあ…さてと…先にシャワー浴びてもいい?」
部屋に入ってすぐにキッチンのイスに座って溜息…
「いいけどその前に奈々実さんちょっと。」
「ん?」
彼が流しの前に立ってチョイチョイと私を呼ぶ。
「なに?え?あ…ちょっと!」
いきなり彼が私の肩を抱き寄せたからびっくりして身体が跳ねた。
「奈々実さんこっち。」
「え?」
気付けば目線よりちょっと上に彼の携帯が私達の方に向けられてた。
「あ…やだ…」
「記念。はい撮るよ。」
「ええ!?」
「撮り直ししないから一発勝負。」
「ええ!」
そんな事急に言われたって…それに写真撮るのも…
「1・2の3。」
「!!」
カシャリと音がしてどうやら撮れたらしい。
何とか目も瞑らず…一応カメラ目線で撮れたとは思うけど…ってそうじゃ無いって!
「はあ〜」
「そんなに緊張?」
「だって写真撮ったのも久しぶりなのよ。何で写真なんて…」
「なんとなく。見る?」
「見たら消すけど。」
「じゃあいい。」
そう言うと彼はパタンと携帯を閉じてズボンのポケットにしまう。
「二度と見ないでよ。」
どうせロクな写り方してないだろうし…
「じゃあ本当に貴重な1枚。オレも写真なんて滅多に撮らないから。」
「なら撮らなきゃいいのに。」
「だね。」
「もう…」
じゃあ何で撮ったのよ。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「ん?」
「へえ珍しい奈々実さんの携帯が鳴ってる。」
本当に驚いてる言い方だったからムッと来た。
でも顔はいつもの如く無表情…ホントこの男は良くわからない……
「失礼ね!自分だって滅多に鳴らないじゃない!」
「マナーモード。」
「ウソ?」
「うそ。」
もーーーームカつく!!
「掛かって来ても面倒だから。出ないの?」
「え?あ…」
そんなやり取りしてたら電話が鳴ってるの忘れてた。
「はい?………え?あ!細川さん?お久しぶりです…」
掛かって来た相手は前に務めてた会社の同僚だった。
結構仲が良かった人で…最近はご無沙汰だったけど…
それから5分ほど話して切った。
「なに?」
「え?ああ…今度結婚して辞める人がいるんだけど私も働いてた時一緒の部署だったから…
内々でやる送別会に来て欲しいって…」
「奈々実さん会社辞めたことあるの?」
「え?……あ…うん…半年くらい前にね…」
「………そう言えば奈々実さんって出戻ったんだっけ?」
「 !!! 」
この男は何でいきなりそんな事を…しかもまたその無表情な顔して…
「そう言ってたよね?安奈先輩。」
「た…確かに出戻りだけど……別に結婚してたわけじゃ無いんだから…」
「そうなの?」
「そうよ!ただ1度ちゃんと家を出たのに戻ったから安奈がからかってあんな風に言ってるだけで…」
「そう。」
「バツイチとか…思ってたんでしょ?」
そう言う顔してたし…言い方だったもの…
「普通出戻りなんて言ったらそうでしょ?よっぽど奈々実さんが帰って来たの困ったんだ。」
「失礼ね!……まあもうその時は安奈結婚してたしね…焦ったかもね。」
「…………」
「なに?」
「いや…で?送別会出るの?」
「うん…私の後に入って来た子で色々教えたりした子だから。」
「いつ?」
「今度の金曜日…」
「それじゃ仕方ないね。いいよ行って来て。」
「何よ!その言い方!!なんであなたに許してもらわなきゃいけないのよ!」
随分上から目線の言い方じゃない!!
「奈々実さんは危なっかしいから当たり前。」
「ホント失礼ね!それに生意気!年下のクセに!」
「子供のクセに?」
「 !! 」
「その子供にご飯食べさせて貰ってるのにね。」
「何よ!あなたが勝手に押し掛けて勝手にご飯の支度してるんでしょ!!」
「さあ。」
「何がさあよ!大体…」
「早くシャワー浴びて来なよ。」
そう言うと彼はふっと私から離れて奥の部屋に入って行った。
そんな彼の態度が何だか気になった…
……何よ…私は間違った事言ってないんだから…怒るのは私の方でしょ!
って彼が怒ってるのかどうかはわからないけど…
私はそんな事を思いながら…着替えを持って浴室に繋がる洗面所の扉をバタンと思い切り閉めた。
私の後に彼がお風呂に入った後は何を話すわけでもなく…2人でそれぞれ勝手な事をしてた。
それからお祭りの疲れが出たのかお互いに欠伸が出だして何となく寝る雰囲気になって…
どちらともなくベッドに入った。
もう…何度目の夜だろう…1つのベッドで並んで寝るのは…
彼は私の方を向いて自分の胸の前で腕を組んで眠ってる…
私は彼に背を向けるのも悪いかな…なんて思うけどだからって彼の方を向いて寝るのもちょっと無理で…
姿勢正しく仰向けでやっぱり自分の胸の上でパジャマを掴んでる。
でも朝になるとどうしてだか絶対彼の腋の下に頭を突っ込んで寝てるのよね…何でだろう?
チラリと彼を見た…普通の寝顔…いつも変わらない彼…
あんなキスしたかと思うと(本人はそう思ってないみたいだけど…)こうやってまったくのスルーだし…
隣にキスまでしたことのある女性が一緒に寝てるのに何とも思わないのかしら?
そもそもこれでも(って言うのも悲しいけど…)女性が毎晩一緒に寝てるのに何とも思わないのかしら…
だからって何かして欲しいとかじゃ無くて…って私ったら何考えてるのよ!!
…はっ!
「………」
彼がいつの間にか起きててジッと私の事を見てた。
「お…起きてたの?」
「気配で起きた。」
「神経質…」
「違うでしょ。寝れないの?」
「別にそう言うわけじゃ…」
「背中トントンしてあげようか。」
「は?」
「寝れるよ。」
「い…いいわよ…子供じゃあるまいし…」
「じゃあ手繋いであげようか。」
「だ…大丈夫だって…何でそうやって子供扱いするのよ…私26なのよ。
あなたより8歳も年上なの。あなたのお姉さんと同じなのよ。」
「でも奈々実さんはオレの姉さんじゃない。」
「そ…そうだけど…歳はそうだって言ってるの!」
「だから。」
「だ…たから…自分に合った歳の子と…」
「またそれ?」
「またって大事な事でしょ。」
「じゃあ奈々実さんの年上妥協年齢っていくつ?40くらい?」
「え?……まあそれくらいでも構わないけど…できれば35歳くらいまでがいいかな…
って何言わせるのよ!」
真面目に答えちゃったじゃない。
「年上9歳から14歳までOK。」
「だ…だから?」
「別に。」
「………」
「なに?」
「別に。」
「人の真似しない。」
「ふにゃ!!」
ムニュっとハナを摘まれた。
「ちょっ…」
「そんな事考えてるから寝れないんだ。」
「は?」
「考えても仕方ない事は考えない。」
「………」
「答えが出るなら考えればいい。」
「………」
「でしょ。だからおやすみ。」
「考えたら答えが出るかもしれないじゃない。」
「でも奈々実さんは出ないんでしょ。」
「う…」
「寝不足はお肌の敵だってさ。」
「自分の肌がツルツルだからってイヤミ?」
「ツルツル?そう?」
「自覚無いのがムカつく!」
「いたい。」
「頬っぺた抓ってるんだから痛いわよ。」
「なら早く寝ればいいんだ。」
「誰のせいで眠れないと…」
「え?奈々実さんオレの事考えて寝れないの?」
「え”っ!?」
「…………」
「…………」
ひゃああああ…な…なんで??どうしてそうなるのよ!!
そんなこと無い!絶対に無い!!
「おやすみ!」
彼に背中を向けて寝る体勢に入る。
冗談じゃない…なんで彼の事なんて…
「奈々実さん?」
「もう寝れる。」
「そう。」
「寝る!おやすみ!」
「おやすみ。」
「 !! 」
「チュッ ♪ 」
彼が背中越しに覆い被さって来て私の頬にキスをした。
「ちょっ…!!」
「おやすみのキス。今日からする事にした。」
「今思いついたんでしょ!断固拒否するから!!」
「そう。」
私の言ってる事なんて全く気にする様子がないんですけど!
「あ…あなた勝手にするつもりなんでしょ!!」
「おやすみ。」
「ちょっと!」
「おやすみ。」
「………したら張り倒すわよ。」
「そう。」
「……ウソだと思ってるんでしょ。」
「さあ。」
「ちょっと!!!」
「おやすみ。」
そう言ってさっさと寝る彼……
これって…絶対…確実に…私って……彼に遊ばれてるーーー???
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