薄暗い中でも彼の顔が近付いて来るのがわかる…後ろはすぐ壁で…
「奈々実さんならオレ遊ばれてもいい」
「!!」
彼がそんな事を言いながら近付いて来る!!ちょっと!!
「あ…相手選ぶのよ!」
「そう言えば彼氏がいるんだってね」
「え?」
「どこの誰」
「へ?」
「初耳」
「………」
もうさっきから嫌な汗がじんわりと浮かんでくる…
心臓も変にドキドキするし…何だかだんだんとマズイ雰囲気?
「あんなにオレと一緒にいていつ会ってたの」
「……えっと…」
「ああ会社の人」
「あの…」
「紹介してよ」
「えっ!?」
「随分心の広い彼氏だよね。自分の彼女が他の男と一緒に寝泊りしてても文句言わない」
「………」
「そんな彼氏いらないでしょ。ね」
「う……」
えっと……これは…どう逃げれば良いんだろう…
あの時彼女に言ったことは全部ウソで…話の流れでその場で喋っただけ…
だから今改まってその事を追及されると答えを用意してなかった私は答えに詰る。
しかも変に答えるとまたそれに彼は質問を投げ掛けてくるし…
うう…どうしよう……
「オレなら絶対許さないけど」
「だから……そこが…大人だからで……」
「そんなの大人じゃないでしょ。奈々実さんに無関心ってこと」
「………」
意味ありげにニッコリと笑ってる…
薄暗いのにそんな表情がわかるほど顔が近いって事で…
いつも笑わない彼が笑ってるって……怖い!!
それに無関心って…実際はそんな相手なんて存在しないんだから…
絶対彼わかってて言ってるのよーーーー!!!もう!!性格悪っ!!
「ウソついたって認めれば?」
「……ぐっ」
「そうやって適当に話作るからこうやって突っ込まれるんだよ。ホント奈々実さんって抜けてる」
「!!」
カチン!と来て彼を睨んだ。
薄暗くて彼に私の顔が見えるのかどうかわからなかったけど。
「じゃあハッキリ言うわよ!」
「逆ギレ」
「う…うるさい!!!今日で思い知らされたのよ!!」
「思い知らされた?何を」
「自分が年上だって事に……」
彼から顔を逸らして俯いた。
「今更」
「そりゃ…今更だけど!!……今更だけど…どうしようもない本当の事だわ…」
「奈々実さん?」
「私の歳であなたとはどう見たって私があなたを弄んでるとしか思われないのよ…」
「違うのに?」
「そんなのいちいち相手に説明なんてしないでしょ。相手はそんな目で見るのよ!
それを今日嫌ってほど思い知らされた!しかも自分よりかなり年下の相手に!!」
「気にしなければいいのに」
「それはあなたは自分が若いから…そう思うのよ……」
「そう」
「私…もう26よ…すぐに27になる…」
「まあ誕生日が来ればそうだよね」
「そう言う事じゃなくて!!!」
「じゃあなに」
「け……結婚とかだって考える年頃なわけ!」
「したいの」
「したいとかじゃないけどそう言う事も考えてるってこと!そんな相手に高校生は含まれないってこと!」
「言ってる意味が良くわからない」
「………望みも無い相手に…貴重な時間は割けないってことよ……」
「………」
「私だってそこまでバカじゃ無いわ。8つも年下の高校生にそんなこと望まない」
「そう」
「だからもう会わない方が良いと思うの!このままもう……
あなただってこれから大学受験も控えてるし…大学に行けばもっと色んな人がいて…
きっとあなたに似合う人と出会うわよ…
こんなもうすぐ30に手が届くおばさんなんて相手にしなくたって……」
自分で言ってて何だか虚しくなる……
自分の年がそんなに卑下する程の歳じゃ無いとは思うけど……
相手が十代じゃそんな風に思うのも仕方ないじゃない……
「半年待って」
「……え!?」
「流石に今は籍は入れられないから。高校卒業するまで待ってて」
「は????」
私は彼の言ってる事が理解出来なくて……頭の中に疑問符が一杯…
「ただ問題は収入かな。大学卒業するまでは親が産んだ責任で学費も生活費も
出してくれるって言ってるけどバイトでまかなえるかな」
「え?え?なに??あなた一体何言ってるの?」
「何って結婚したいんでしょ。奈々実さん」
「そ…そりゃ…いつかは…とは思ってるけど……」
でも…今…何だかとんでもない事が彼の口から出てるんじゃないの??
「しばらくは共稼ぎかな」
何やら具体的なことを言い出したから余計訳がわからない!!
「ちょっ…ちょっとあなた一体何言ってるの?自分が何言ってるかわかってる?」
「わかってるよ。高校卒業したら奈々実さんと結婚するって言ってる」
「はあ???」
一体何がどうしてそんな事になるの?
彼はいつもの様に無表情の変わらない顔と声で……
でも私の頭はショート寸前の…真っ白の…でもぐちゃぐちゃで……
だ…誰か……ちゃんと……説明してーーーーーーっっ!!!
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