ひだりの彼氏


80




「んんっ……」

彼が私の身体をくまなく確め終えると私を仰向けにしてベッドに肘をついて見下ろした。

「…………」
「奈々実さん」
「?」

私は浅い息を何とか隠して彼を見上げる。
隠しても大きく上下する肩と胸で意地張ってるのはバレバレなんだけど。

「何で泣きそう」
「泣きそう…なんかじゃない!」

ワザとですか?
誰のせいでこんなに身体が火照ってドキドキしてムズムズして泣きたいくらいに
どうにかなりそうだと思ってるのかしら!!

騙された!!騙されたに違いない!!
絶対初めてなんてウソだ!ウソに決まってる!!

初めての相手だった彼だって私で2人目だったはずだけどこんなに
身体の自由が利かなくなることなんてなかったもん!!

しかもまだ本番前だっていうのに!!
明らかに経験値 『豊富』 な方に振り切ってるでしょ?!

「もっと奈々実さんの感じるところ確めたいけどいい加減にしとかないとね」

そう言ってクスリと笑ったから別の意味で心臓がドキリとなった。
まさか……こんな時にまで私をからかうなんてこと……しないわよね?

「奈々実さん」

名前を呼びながら私の身体の上を彼の手の平がゆっくりと滑り落ちてくる。
温かくて優しい手触りと肌触りで……

「……ンア!!」

辿り着いた手の平から彼の指がゆっくりと私の身体の中に沈められた。
その指先はずっと私に与えられてたものと同じ力加減で
私はぎゅっと目を瞑ると顎が軽く上にあがった。

「痛い?」
「大……丈夫……んっ……」

でも……なんの戸惑いもなくストレートに指を入れたわね!ちょっとビックリしたじゃない。

「ヒヤッ!!あっ…」
「ここ?」

私の中で彼の指が動いた。
しかも一番感じるところをあっさりと知られてしまうなんて……

これは誤魔化すべき?

「あっ…あ!」

一体彼は誰ですか?何で迷いがないの?

「やぁ……フゥ…ンッ!」

声も一緒に彼の口に塞がれる。

「ンン!ん…んっ…」

彼の親指と人差し指と中指が私の身体の中と外で別々に動いて……その動きに私は身もだえる。

「……んあ……」

彼が唇から離れると熱の篭った息が私から洩れた。

「奈々実さんをもっと知りたい」

そう言うと彼が私に覆いかぶさったまま右腕だけ伸ばしてベッドの下に手を入れた。

「?」

彼は一体なにをしてるの?
ゴソゴソと動いて腕を戻したとき彼の手の中に何か握られてた。

「え?」

なに?それ?

「オレはなくても構わないんだけど奈々実さんはイヤでしょ」
「な…え?」

なんで?彼が手に持ってたものは所謂大人の家族計画に必要なもので……

「な…なによ!いつの間にそんなの用意してたの!?」
「嫌」
「嫌とかじゃなくて…」

なんだか前もって準備してたのがイヤ!
本当は当たり前のことなんだろうけどこの惚けた態度の無表情な顔の男が
こんなしっかりちゃっかり準備してるところがなんか腹立つ!!

「別に用意してたわけじゃない。クラスメイトが勝手にくれて持ち歩いてても仕方ないからここに置いといた」
「い…いつもらったの?」

まさか知り合った最初から?

「夏休み明けくらい」
「そ…そんな前?」
「まったく必要なかったけどね。要らないって言ったんだけどあんまりにもしつこいから面倒になって
無視したらいつの間にか鞄の中に入れられてたらしい」
「……」

まあ……今時の健全な青少年ならそう言うのも持ってる…か?
でも……

「あなたにもそういうのを渡してくれる友達がいるのね」
「友達じゃないし」
「まあいいけど」
「使わないとダメ」
「え?」
「奈々実さんに任せる」
「……今日は……大…丈夫…」

私はボソリと呟く。
ああーー恥ずかしい!

「そう」
「!」

そう言うと彼は箱の封を切って中から1つ出した。

「?」

大丈夫って……言ったのに……

「最後はなしでする」
「は?」

最後は?って……何回するつもり?

「ちゃんと最後まで付き合ってね。奈々実さん」

無表情な顔で見下ろされてそんなこと言われて……ちょっと変なドキドキが……

「さて続き」
「あ!」


そう言って私の胸に顔をうずめた彼がまた唇と舌と手の平で私の身体を確かめ始めた。





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