もっともっとあなたを好きになる



08




─── ん?

なんでしょう? 身体になにか温かい感触がトロトロと動いています。

「またひーちゃんねてるの?」
「よくねるなーおとなのくせに」
「疲れてるんだろ」

─── そうなんです。疲れてるんです。
どうしてだかは大きな声では言えませんけどね。
りゅうちゃんとお子ちゃまたちの声が聞こえます。
それにときどき顔にポツポツと小さな粒らしきものも当たります。
一体なんなんでしょう?

「…………ん?」
「あ! め、あけた!」
「やっとおきた」

薄っすらと見えたのは、上から覗き込んでいるお子ちゃまふたりの顔。
でも、なんでしょう? 違和感が……ああ、髪の毛が濡れてるんですね。
んーーどうして?
キョロキョロと周りを見回すと、水の跳ねる音とモワモワと漂う蒸気。
ここって……お風呂場ですか?
目が覚めてくると、身体が濡れてることに気づきます。
それに背中や腕に感じる自分以外の人肌……人肌!?

「ひえっ!!」

ガバッと身体を起こしました!
無様な格好だったかもしれませんが、今はそんなことかまってられません。

「きゃはは♪ ひえっ!! だってえ〜」
「ひーちゃん、へんなこえ〜」

ワケがわからないままの私を湯船に入ってキャッキャッと笑って見てるふたり。
えっと……これってどういう?
ふと、視界に入ってきたのは、浅黒い肌の足の裏。
どうやら胡坐をかいているようですが、どうみても男の人の足ですよね?
それも、一体どういうことでしょう?
顔を確かめようと、そのまま視線を上にあげると……

「ひっ! ……きゃあああああああ!!」
「ひきゃあだってえ〜」

またもやお子ちゃまたちに笑われましたが、私は今それどころじゃありません。
だって……だって!!
そりゃ、男の人の裸を見たことがないわけじゃありませんが、こんなにもハッキリと
視界に入れたのは初めてなんですよーーーー!!
何度か経験のあるあの行為でも、致したあとは布団の中に潜って相手の男性の
背中くらいしか見たことはありません。
それもどれだけ前の話? というくらい前ですよ。

「え? え? なんですか?」
「みんなで風呂に入ってんだよ」
「え? お風呂?」
「ひーちゃんがおきないからりゅうちゃんがだっこして、からだをあらってあげてたんだよ」
「ふええーー」

なっ……なんですとーーーーーー!!
かっ……身体を!?
今さらながら胸の前で腕を交差させて隠します。
下半身は膝を片方だけ立ててキュッと内股に力を入れて、なるべく見えないように隠しました。

「クスクス……今さらだって」
「い……今さら!?」

どういうことですか?

「昨夜もみんなで一緒に風呂に入ったんだぞ」
「へ?」
「ひーちゃん、どろんこだったんだよ」
「みんなであらってやったんだぞ」
「ええーーーーー」

衝撃的な告白です。
みんなで洗った?
誰を? どこをですか?

「わかったか? だから今さらだから気にするな。ほら、まだ途中だから戻ってこい」
「え!? い……いえ、自分でできますから!」
「遠慮すんな」
「ひゃああああ〜〜」

狭いお風呂場で逃げ場がありません。
あっさり腰に腕を回され、りゅうちゃんの腕の中に引き戻されてしまいました。
ワシャワシャと頭を洗われます。
横からお子ちゃま達の手も伸びてきて、一緒になって私の頭を洗います。
子供の手といっても6本の手で洗われたら、頭の泡がとんでもないことになりました。

「うわ〜ひーちゃん、“アワアワせいじん”だー」
「ぷあ! ちょっと……」

ピンチです!
目があけられません。

「ぶっ……はっ!」

容赦なく頭からお湯をかけられました。
本当に息が……!

「お前ら、いい加減にしろ。ひかりが苦しがってるだろうが」
「はあ…はあ……」

りゅうちゃんの言うとおり、疲労困憊でフラフラです。

「だいじょうぶか? ひかり」
「だいじょうぶ? ひーちゃん」
「…………んむっ! 大丈夫……です」

りゅうちゃんに顔をタオルで拭いてもらったので大丈夫。
叱られてシュンとなってしまったみたいなので、ちゃんと笑って返事をしました。

「よかった」

ふたりもにっこり笑ってくれました。

最初はいきなりお風呂なんてビックリでしたけど、こんなふうにワイワイとみんなでお風呂に入ったのなんて何年ぶりでしょうか。
高校の修学旅行以来でしょうか?
家ではいつもひとりですし。
そういえば、りゅうちゃんのような若い男性とお風呂に入ったのだって初めてです。
未だに目のやり場に困ります。

「お前ら、そろそろ出ろ。今度は俺とひかりがあったまる番だからな」
「はーい♪ かつや、10かぞえるよ」
「うん」

ええ!? ちょっと待ってください!
もう上がってしまうんですか? おふたりさん?
マズイです。
それはいけません。
それでは私とりゅうちゃんのふたりきりになってしまいますよ!

「あの! わ、私も上がります!」
「えーだめだよ、ひーちゃんは。まだあったまってないでしょ」
「だ、大丈夫です!」
「ちゃんとあったまらないと、カゼひいちゃうんだぞ」
「そうよ、ひーちゃん。ひーちゃんは大人だから100までかぞえないとだめなのよ」
「ええ! そんなにですか?」

ナゼ10倍?

「そうだぞ。ちゃんとあったまらないとな。ひかり」

りゅうちゃんが私の肩越しにうしろから顔を出して、ニッコリと笑って言います。
さっきから身体に添えられてる両手は、控え目ながら私の身体のあちこちを行ったり来たりしています。
きっとお子ちゃま達の手前、大胆に動くことができないのでしょう。
なので、ここでお子ちゃま達がいなくなってしまったら……私は狼の前に投げ出された生け贄の羊状態じゃないですか!?
しかも、すでに裸です。
秒殺です。イチコロです。

「……8…9…10!ポーッとなったらあがりましょ。ポッポー♪」
「あ……」

勢いよく湯舟から立ち上がると、ふたり揃ってパウダールームに飛び出します。

「ちゃんと拭けよ。それと水分補給な」
「「はーい♪」」
「ひーちゃん、ちゃんとあったまるんだよ」
「……はい」
「クスッ。大丈夫だよ、俺がちゃんと見てるから。だから心配しないで向こうで待ってろよ」
「わかった」

ひえっ! 何気にこちらに来ないように誘導しましたよ、この人!
純真無垢なお子ちゃま達は素直に頷いちゃったじゃないですか。

「す、すぐに出ますから!」
「うん、わかった〜」

本当に本当に、すぐに出ますからね!

目の前でドアがパタンと閉まりました。
まだドアの前にふたりの気配があります。

「ほら、ひかり入るぞ」
「は、はひぃ…」
「はひぃって……そんなに緊張すんなよ。それこそ今さらだろ。昼間のこともう忘れたのか?」
「へ? ……あ!」

お姫様抱っこで抱き上げられました。
そのまま湯舟にふたりで浸かります。

「昨夜もこうやって、ふたりで入ったんだぞ」
「……昨夜?」
「酔っ払ってて、コケて水溜まりに顔面から突っ込んだんだよ」
「ええー!?」

が、顔面からですか?

「それで泥だらけだったからお風呂に入れたの。ガキんちょらも一緒だったから、変なことはしなかったから安心しろ。
その代わりじっくりしっかりひかりの身体は見せてもらってけどな」
「うぅ……」

温まったからではない頬の赤みが濃くなります。
恥ずかしくて俯いてしまいました。

「りゅうちゃん、じゃあね〜」
「はやくあがれよー」

そんな捨て台詞を言ってお子ちゃまふたりは出て行ってしまいました……ああ……ガックリです。

「ひかり」
「!」

今湯舟の中で、私はりゅうちゃんの膝の上で横向きで座っています。
ちょっと狭いですが、なんとか大人ふたりで収まっています。
名前を呼ばれてりゅうちゃんが私の頬に手の平を添えて上を向かせました。
ひゃあああああ……これって……これって……
りゅうちゃんの顔が近づいてきて、私の唇にりゅうちゃんの唇がそっと触れました。
啄ばむようにちゅっちゅっと何度か触れて離れます。

「ふあ……」

今度はりゅうちゃんの唇で私の唇をハムリと咥えます。
最初は下唇をハムハムと刺激します。
次は上唇です。
同じようにハムハムと甘噛みされました。

「……んんっ!」

そんなキスに油断しておりました。
急に力強く唇を押しつけられて、荒々しく私の唇を攻め立てます。

「……んあ……」

あまりの激しさについ声を漏らしてしまうと、その隙間からりゅうちゃんの舌が遠慮なく入ってきます。

「んんっ……んっ……んっ……」

もうスゴイです。
こんなキス、今までしたことがありません。
あまりの押しに私の頭もうしろに横に持っていかれてしまいます。
キスをしながらりゅうちゃんが私の脇の下に手を入れて、身体を持ち上げました。
そして自分の正面に向くように私を誘導します。
りゅうちゃんの膝を跨ぐのに、さらに高く持ち上げられてお互いの唇が離れてしまいました。
けれど、お互いの唇が銀の糸で繋がっています。
りゅうちゃんがそれを舌でペロリと絡めとります。
どうしてでしょう。
そんなりゅうちゃんがとても色っぽく見えてしまったのは、逆上せたせいだからでしょうか?

「……はあ……はあ……りゅうちゃん……」
「ひかり……俺を意識して……」
「…………」
「俺を……ひかりの男にして……」

りゅうちゃんが真っ直ぐと私を見つめています。

「……でも……私……よくわかりません……」

ナゼかハナの奥がツンとします。
本当にわからないんです。
こんなふうに告白されたことも、男の人に優しくされたのも初めてなんですもん。
たしかに幼馴染みも優しかったですが、それは“女の子”としてではなくて、妹のような身内に対しての優しさでしたから。
大学のときにお付き合いした彼も、こんなふうに男の色気を溢れんばかりにアピールするような人ではなかったですから。
ですから私の恋愛経験値では初めても初めてで、自分の気持ちがよくわからないんです。
男の人に……しかもイケメンというジャンルの人に、こんな裸と裸で密着しているシチュエーションだからドキドキして
舞い上がってるのかもしれないじゃないですか。

「りゅうちゃんが好きだからじゃなくて、ただ淋しいから誰かに傍にいてほしいだけかもしれません。りゅうちゃんだって、
こんなふうにすぐに身体を許すような女だから、そんなことを言っているだけかもしれないじゃないですか」
「だから一目惚れだって言ってるじゃん。俺はひかりのことが好きなんだってば。今は信じられないかもしれないけど、
これからはそれが信じられるように俺の傍で俺を見てろよ」
「あ……ありえない状況で絆されているのかもしれません。傷心で……自分にとって都合のいいほうに
流されてしまっているのかもしれなですし……」
「いいから流されてこいよ」
「……え?」
「俺は大歓迎だ。絆されて流されて、俺に捕まっちまえばいい」
「りゅうちゃん……」
「好きなんだよ、ひかり」
「……りゅう……ちゃん……」
「ひかりが他の男のところに行くなんて、絶対嫌だ。ひかりがひとりで泣くのも嫌だ」
「……うっ……」
「だから、他の誰のところにも行くな。泣くなら俺の前で泣け。泣き止むまで抱きしめてやるし、キスしてやるし、
背中でも頭でも撫でてやるから。な?」
「……りゅう……ちゃぁん……」

私は今にも涙が溢れそう。

「俺の傍にいてくれるよな?」
「…………」

私は無言で、コクンコクンと何度も頷いた。
だって喋ったら、声を上げて泣き出しそうだったから。

「俺のこと、好きになりそうか」
「…………」

ニヘッと、笑って返事をした。

「そうか……」
「え!?」

りゅうちゃんが持ち上げていた私の身体をゆっくりと下していきます。
その下し方がなんだか意図的で……なんでしょう?

「んあっ!」

つんっ! っと、りゅうちゃんが私に主張してきました。
りゅうちゃんの脚を跨ぐような姿勢で、脚を閉じることもできません。
ほんの少しだけ、りゅうちゃんが私の中に入ってきます。

「りゅ……りゅうちゃん!?」
「くすっ」

さっきまでカッコよく告白をしていたりゅうちゃんはどこへ?
くすっと笑ったりゅうちゃんの、なんと邪な笑い方なんでしょう。

「ダ…ダメです! 子ども達が……」

そうです。
いくら先に上がってここにはいないとはいえ、いつまたここにもっどって来るとも限らないじゃないですか!

「ああ、だから声を出したらダメだぞ。ひかり」
「ええ!? そんな……」

声を出さないようにだなんて、無理ですって。

「本当はひかりの声、聞きたいんだけどな〜」
「……ひゃっ!! ああ……むぐっ!」

そのままりゅうちゃんの上に落とされて、一気に貫かれました。
痛くはありませんでしたけど、何度受け入れても圧迫感はなくなりません。
しかも座ったままなので、自分の奥の奥までりゅうちゃんに一杯にされてます。
あまりの刺激につい声が出そうになりましたが、なんとか両手で口を押さえて堪えました。
頑張りましたよ、私!

「ひかり……そのまま声、我慢してて」
「んんむぅ!」

りょうちゃんが私の鎖骨から喉と首へと舌でベロンと舐め上げます。
お風呂に入って温かいはずなのに、背中がゾワリと粟立ちます。

「すごい絞まった、ひかり。じゃあコレは?」
「んんっ!!」

今度は鎖骨から胸の膨らみに舌を這わせ、最後に胸の先を口に含みました。
含んだまま、舌で弄り回します。
そんなの耐えられるわけがありません。
もう、りゅうちゃんってば!
口を両手で押さえながら、りゅうちゃんを睨みます。
りゅうちゃんの上に跨っているせいで今は私の目線のほうが上ですから、りゅうちゃんが私の胸の先端を口に咥えたまま、
下から見上げています。
もうなんと言ったらいいんでしょうか……悩ましいです。
洗った髪をうしろに撫でつけているせいで、広いオデコもキリリとした眉も隠れることなく目に映って、
整った顔立ちにドキドキしてしまいます。

「ひかり……」

ちゅぽん! と音がするような離し方で口を離すと、口を塞いでいる私の手の甲に自分の唇を押しつけます。
“どけろ”ということでしょうか?
ユルユルと手を外すと、下から押し上げるように口を塞がれました。

「……んっ……はっ……りゅうちゃん……」
「ひかり……可愛い……」
「……りゅうちゃん……んあっ!!」

可愛いなんて言葉に気をとられていたら、グンッ! と下から押し上げられました。
いつの間にか腰に回されていたりゅうちゃんの腕が上から押さえつけるので、今までで一番奥までりゅうちゃんを受け入れてしまいました。
いつもいつも、どうしてりゅうちゃんはいきなり激しくなるんでしょう?
不意打ちなんてズルいです。
何度も押し上げられて、お湯がバシャバシャと跳ね上がってますよ。
結構な音なんではないでしょうか?

「りゅう……ちゃ……お湯……音……んんっ!」
「大……丈夫。すぐ……終わらせる……から……」
「……ああん! ……ふうぅ……」

言葉どおりにすぐに終わらせるためでしょうか?
さっきより激しさが増してます。
口を押さえているので両手が塞がっていて、私の身体はガクガクと揺れ続けています。
ああ……もう、クラクラですよ。
本当に……私……りゅうちゃんに流されてしまってますね。
でも……ナゼか、なにも考える必要もなくて気持ちは楽なんです。

「……っ……ひかり」
「……んむぅ!!」

このとき流されまくっていた私は、りゅうちゃんが私の中で果てていたなんて全く気づかなかったんです。
お互いクッタリ(りゅうちゃんはすぐに復活して元気でしたが…)しつつも、最後に身体をシャワーで流して出たせいか、
なんの違和感もなかったので余計に気にしなかったんですよね。
あとでそのことをりゅうちゃんに言われて、焦ったのは私だけでしたけど。

 








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