Love You ! 番外編 勘違い症候群☆



02




「ふぅ……あ!」

いつからだったか知らないうちに溜息をつくようになってた。
それは朝起きてベッドから出たときだったり会社に向かう駅の階段だったり
職場でお昼を食べた後だったり……

私そんなに疲れてるのかしら?
あんまり思い当たることがなくて自分のことながら首を傾げるばかり。
でも確実に一日に溜息をつく回数が増えたと思う。
主婦業と仕事の掛け持ちのせいかな?
なんて思うけど今まで辛いと思ったことはなかったのに……

え?まさか……歳のせいですか??

そんなことを自分で考えてちょっと落ち込んでしまった。
今までこれといった病気もしたことがないのに……気になりつつもここ数日過ごしてた。

特に具合が悪いわけじゃないからレンジさんには話さなかった。

でもいつ頃からだろう?レンジさんとのキスがちょっと辛くなったのは?
いつもってワケじゃない。
そう……レンジさんからタバコの味が伝わったときどうしようもなく気分が辛くなってしまう。

自分でもすごいショックな出来事で無意識にレンジさんのことを身体が拒否してるのかと落ち込んでしまいそうなる。
でもだからっていつもそんなふうじゃない。
全然大丈夫なときもあってそんなときはホッとしてしまう。

だってもしレンジさんにそんなことがわかってしまったら?
レンジさんはきっととってもガッカリするだろうし私の気持ちを疑ってしまうかもしれない。

そんなの嫌だ。

私は今もこれから先もレンジさんのことが誰よりも一番好き。
レンジさんとずっと一緒にいたいと思ってる。

でもそんな気持ちとは裏腹に溜息の数は日に日に増えていく。

せっかく始まったレンジさんのドラマも見ながら眠ってしまうことも多い。
放送時間が夜の10時からというのもあるのかもしれないけど始まって10分もすると睡魔に襲われる。

このドラマが始まる前に今回のドラマではキスシーンがあると言っていた。
幼稚園に通う女の子のパパ役だって。
奥さんとも仲が良くてスキンシップのキスがあるって……

"仕事だから仕方ない……” そう自分では割り切ろうと決めている。

だってそれがレンジさんだから。
真面目に仕事に取り組んでるんだもの。
それに対して私が怒るのは間違ってると思うし……でもヤキモチもないわけじゃない。
私が知ってるレンジさんの唇を……キスを……知ってる人がいる。

そう思うと胸の奥がツキン!となるけどそれを打ち消してくれるように
レンジさんは毎日私に言ってくれる。

『智鶴が好きだ。智鶴だけを愛してる』

もちろん愛情のこもったキス付きで。

私もレンジさんが好き。レンジさんだけを愛してる。

なのに……今日はあからさまにレンジさんとのキスを拒んでしまった。

レンジさんに気づかれてしまったかしら?


「あ……」

レンジさんの着替えを寝室のクローゼットの中から取って立ち上がるとクラリと目が回った。

「うぅ……」

思わず片手で額を押さえてレンジさんの着替えを抱え込んだままその場に座り込む。

「…………はぁ……」

しばらくジッとしてたら治まったからゆっくりと立ち上がって浴室に向かった。

「立ち眩みなんて久しぶりかも……」

洗濯機の蓋の上にレンジさんの着替えを置いた。
レンジさんに声を掛けようかと思ったけどシャワーの音がしてたらきっと聞えないと思って
声はかけなかった。

レンジさんがお風呂に入ってる間にご飯の仕度をしようと今度はキッチンに向かう。
夜遅くてもレンジさんはしっかりと食べる人だから普通に夕飯の仕度をするのと変わらない。
さすがにこの時間だからコッテリとしたものは作らないけどあまり軽いものも物足りないかな。
なんて思いながらさっきの立ち眩みのことを考える。

「前はよく生理のとき立ち眩みなんてあったわよね」

もともと貧血気味なところもあるから時々生理のときはクラッとすることはあった。

「そういえば久しぶりかも…………ん?」

ちょっと待って?前の生理っていつだったっけ?
ふとそんなことを思ってカレンダーの前に立つ。

「え?んっと……確か土日に重なって辛い日が休みでよかった……なんて思ったのよね?
えっと……それがこのときでしょ?」

私は2ヶ月ずつのカレンダーを眺めて思い当たる日を指さす。

「だから……次の予定は……んっと……」

トントンと指で日にちをなぞっていく。

「あれ?」

どうもおかしいことに気づいた。

「今日って……ここだよね?」

何度確かめても予定から3週間も経ってる。
そんなに正確に毎月同じ日に来てるわけじゃないけどズレても前後3・4日くらいだったはず。

「え?うそ……??」

約3週間……遅れてる??

「これって??」

コレって!?これって!!??これってぇ??!!
私は心の中で思いっきり叫んでた。

「もしかして赤ちゃん!!??うそっ!!」

もう私の心臓はバクバク!!
カレンダーの前に立ったまま両手で自分の口を押さえて真っ赤になる。
最近仕事も忙しかったしレンジさんも新しいドラマが始まったりとそのことから気が逸れてた。
だって……もしそうだとしたら……レンジさんと私の赤ちゃん!?

「って当たり前じゃないの!!え?でも本当に??」

確かに赤ちゃんが欲しかったけど前回はできてなくて……

「ど……どうしよう。レンジさんに話したほうがいいかしら?でも……違ってたらガッカリさせちゃう」

3週間も遅れてるのは確かにおかしいけどでも他の理由があるかもしれない。
私は流しの前を今度は両手で頬を挟みながら行ったり来たりしてブツブツ呟いてた。

「あ……明日検査薬買って調べて……ううん……明日病院に行ったほうがいいよね?
わぁ〜〜なんだかドキドキしちゃう。落ち着いて私!!」

自分の胸に手を当てて深呼吸をした。

「とにかくレンジさんにはちゃんとハッキリとわかってから話そう。うん!」


未だにドキドキは治まらないけど明日にはハッキリとわかるから今夜だけ……レンジさんには内緒。



その後お風呂からあがったレンジさんにご飯を出して何とかいつもと同じように過ごした。
でも気づけば赤ちゃんのことばかり考えててなんだかずっと上の空だったかもしれない。

その日の夜に久しぶりにレンジさんに求められたけどもし赤ちゃんがいたら妊娠初期で
激しい運動をしてもいいのかと不安になって疲れてるからと言って断ってしまった。

滅多に断ることなんてしないけどレンジさんはわかってくれたらしくそれ以上は無理強いしなかった。
背中から私を抱きしめてくれて"無理すんなよ”って言ってくれた。

私はそんなレンジさんの言葉が嬉しくて……もしかしたら明日……あ!もう今日だよね。
とっても嬉しい報告が出来るかもしれないとレンジさんに背中を向けたままひとりでこっそりと微笑んだ。

だから私の今までの態度がレンジさんに誤解されてそんなに考え込んで思いつめてたなんて……

私は全然気づかなかった。





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