Love You ! 番外編 勘違い症候群☆



06



☆ 最後のほうに超軽めのR18場面あり。


智鶴にキスをしようと顔を近づけると小さく唸って身体を押し戻された。

これは明らかに拒絶だろ?

「そんなに嫌なのか……智鶴」
「…………」
「そんなに俺を許せねぇのか」
「……え?」

レンジさんが搾り出すような声でそんなことを言う。
何が嫌なの?何を許すの?

「ひ……ひどいですーーーーレンジさん!!」
「智鶴?」
「許せるわけないじゃないですかぁ!!ひどい!!」

私は泣きながらポカポカとレンジさんの胸を叩いて泣き喚いた。
みっともないとか恥ずかしいとかそんなことかまってられなかった。

「ひどい!!」

そう言って智鶴が泣きながら俺の胸を叩く。

「悪かった。智鶴がそんなに気にしてるなんて気づかなくて……」

そんな智鶴を抱きしめようと俺は智鶴に腕を伸ばす。
そんな俺の腕から逃れるように智鶴が暴れ続ける。

「気にするの当たり前じゃないですか!レンジさんはなんとも思わないですか!!」
「仕事だから仕方ねえって思うしかないだろ」
「仕事?レンジさんにとって仕事だったんですか?」

赤ちゃんをつくることが仕事?レンジさん……ひどい!!

「仕事じゃなきゃ俺が好きこのんでするわけねぇだろうが!」
「…………」

智鶴が俺のその言葉を聞いてビクリと身体を硬直させた。
そして今まで以上に大きく目を見開いて俺を見つめ続ける。

「智鶴?」
「……ぅ……」
「智鶴!?」

見開いた智鶴の瞳が潤んだと思ったらさっきよりも大粒の涙でボロボロと泣き出した。



「ひどいですーーーーー!!レンジさんひどい!!!そんな仕事だなんて!!そんなふうに思ってたなんて……」

「はあ?なんでだ?仕事だろ?それ以外なにが……」

「赤ちゃんつくることが仕事だなんて……ひどいですーーーーー!!!」

智鶴はそう叫ぶと子供みたいにワンワンと泣き出した。

「は!?」

智鶴は今……なんて言った?

「オイ……智鶴ちょっと待て」
「なんですかぁ!!もうレンジさんのバカバカ!!」

俺の言葉に智鶴はぎゅっと目を瞑ったまま俺の胸を叩き続ける。

「智鶴!ちょっと待てって!!」
「!!」

俺の胸を叩いてる智鶴の手首を両手で掴んで強く握った。
智鶴はそんな俺の行動にビクリと身体を震わすと涙を溢れさせたまま俺を見上げる。

「赤ちゃんがなんだって?智鶴一体何のこと言ってる?」
「…………うっ……なにって……」
「智鶴が機嫌悪ぃのは……俺の今度のドラマのキスシーンが嫌だからだろ?」
「……へ?」

「…………」
「…………」

お互い相手をじっと見つめたまま長い沈黙が訪れた。

「へ?ってなんだ?違うのか?今までずっと態度変だったじゃねーか?
キスシーンが嫌で機嫌悪かったんだろ?」
「……なんの……こと……ですか?」
「あぁ??」
「え?」

智鶴のキョトンとした顔……これはどんなことを意味してるんだ?

「はあ〜〜〜〜」
「レンジさん?」

俺は大きな溜息をついて掴んでた智鶴の手首を離した。
そのまま両方の手のひらで智鶴の涙を拭ってやる。

「どうやらお互いの話しに食い違いがあるみてぇだな」
「はい?」

智鶴は未だに意味がわからないって感じで首を傾げる。

「俺は……ここ最近智鶴がずっと機嫌悪いって思ってた。
俺に対してなんとなく態度がよそよそしいと思ったからだ。
キスも避けられてる気がしたし俺に抱かれるのも嫌がってた気がした」

「!!」

「それって今回のドラマで俺のキスシーンが多くて嫌だったからじゃねえのか?」
「そんなに……今回のドラマってキスシーン多いん……ですか?」

智鶴がバツの悪そうな顔で俺に聞き返す。

「もしかしてあんまドラマ見てねえのか?」
「ご……ごめんなさい!あの……途中までは見てるんですけど……眠くなって……
寝ちゃったりして……あんまり真剣に見てなくて……」
「そうか……」
「ほ……本当にごめんなさい!」
「いや……それはそれでかまわねぇんだが……」

そうなると余計に納得いかねえ。

「じゃあなんで智鶴は機嫌悪かったんだ?その感じじゃ智鶴は仕事って割り切っててくれてたんだろ?」
「そ……そりゃ多少は気になりますけど……でもそれがレンジさんのお仕事ですし……」
「ならなんで機嫌悪かった?浮気なんてしてねえし……俺他に智鶴になにかしたのか?」
「えっ!?あ……したというか……わざとしたってわけじゃ……えっと……」

急に智鶴がモジモジとし始めた。
何気に顔も赤い気がする。

「智鶴?」
「………」

両手で智鶴の頬を挟んで強制的に俺の方に向かせた。
また智鶴の瞳が潤んでるが泣くという雰囲気じゃねえ。

「さっき言ってたよな?“赤ちゃんつくることが仕事だなんてひどい”って?アレはどういう意味だ?」
「ひゃっ……えっと……それは……」

いつになくあわてふためく智鶴をワザとじっと見つめる。

「智鶴」
「……はい……」

「ちゃんと……言えるよな?ん?」

「……ぅ……」

両手で顔を固定され逃げられない私に向かってレンジさんのいつもの落ち着いた低い声と優しい笑顔!!
あらたまってそんなコトされるのは久しぶりで……

今までの変な気持ちが一瞬で掻き消えるほどの衝撃!
うぅ!!素敵ですぅ!!レンジさん!!

「あ……あの……」

レンジさんは黙って私の話すのを待っててくれてる。

「…………赤ちゃんが……できました……」

小さい声だけど……ちゃんとレンジさんを真っ直ぐに見て言えた。

「…………」

レンジさんが私の顔を押さえたままいつもより大きく目を開いて息を飲んだ。

「本当……か?」
「はい……今日お医者さんに行って……おめでとうございますって言われました」
「なんで……もっと早く言わねえ?」
「ご……ごめんなさい……私も気がつかなくて……それにもし……違ってたらレンジさんが
ガッカリしちゃうと思って……ちゃんと確かめてからと思って……」
「そうか……」
「はい……」

レンジさんは私の顔を両手で挟んだままコツンとオデコとオデコをくっつけた。

「……レンジ……さん?」
「…………」

レンジさんはずっと黙って目を瞑ってる。
どうして?……もしかして……困ってる……の?

「智鶴……」
「……はい」

私はちょっとドキドキしてる……レンジさんがなんて言うのか……

「やったな」
「!!」
「ありがとう……智鶴」
「……レンジ……さん……」

あっという間に私の視界はぼやけて頬を涙が伝って落ちていくのがわかった。
目の前にいるレンジさんが笑ってくれてるのが嬉しい。

「勘違いして悪かった。仕事だなんて思ってねぇ……俺だってずっとほしかったんだからよ」
「はい……」

「智鶴」

そのまま顔を上に向かせられてレンジさんの唇がそっと私の唇に触れる。
何度も何度も角度を変えながら触れるだけのキスを繰り返してどちらともなく舌を絡め始める。

「んっ……んん……」

いつの間にかレンジさんの片手が私の顔から離れて腰に回されてた。
そのままグッとレンジさんの方に引き寄せられる。
私は自然にレンジさんの胸元の服をギュッと握り締めてそんなキスに応えて……

「んふっ!」

「!!」

お酒の匂いとアルコールの味が伝わってレンジさんから顔をそらした。

「あ……」

顔を逸らしたあとレンジさんを見るとまた傷ついた顔をしてる。

「ち……違うんです!レンジさん!!これはレンジさんがイヤだってわけじゃなくて……
どうやらつわりのせいらしくて……」
「つわり?」
「はい。自分でも最近気づいたんですけど……今までなんともなかったものが苦手になっちゃって……」

「それは……俺が苦手になったってコトか?」
「!!」

優しく微笑みながら……でもレンジさんの片方の眉毛とこめかみがピクピクとなってる!?

「いえ!そ……そういうことじゃなくて……タ……タバコとお酒がダメみたいで……」
「タバコと酒?」
「はい。今はそれくらいで……あとは朝起きた時とかお腹が空いたときとか鳩尾辺りがムカムカするくらいです」
「ムカムカって……気持ち悪いってことか?」
「吐いたりはしないんですけど……」
「そうか……気分が悪かったのか……気がつかなくて悪かった」

そう言うとレンジさんは私の頭を何度か撫でてそのまま頭の後ろに手を添えて自分のほうに引き寄せた。
目の前にレンジさんの胸があって私はいつもみたいに自分の頬をスリスリする。

ああ……レンジさんだ……いつもの……レンジさんの胸。

「レンジさん……」



智鶴から避けてた訳じゃないと告げられてホッとしてる自分がいる。
ドラマに気を取られ智鶴の具合が悪いことに気づかなかったのは迂闊だった。

俺の腕中にすっぽりと納まってる智鶴を優しく抱きしめて頭を撫でて背中を撫でて……
本当はキスもしたいところだが今日は諦めた。
ったく香川の野郎……マジムカつく。
ニヘラと笑った顔まで思い出してさらにムカついた。

「智鶴」
「はい」

泣き顔のまま智鶴が俺を見上げる。
ああ……いつも以上に智鶴のことが愛おしく思う。

「で?男か女か?」
「はい?」
「子供だよ。医者に行ったんだろ」
「え?い……行きましたけどそんなまだどっちかなんてわかりませんよ」
「そうなのか」
「そうです」
「そうか」
「…………」

レンジさんはそう言うとなんだかとっても残念そうな顔をして私の身体を抱きなおして膝の上に抱え上げた。

「これから身体無理すんな」
「はい」
「なんなら仕事辞めてもいいんだぞ」
「大丈夫です。ちゃんと働きます」
「そうか」
「はい」

そう言いながらレンジさんの顔は納得してないみたいだった。




「あ……や……レンジさん……」
「智鶴」

お医者さんに激しくしなければとお許しが出てるからと今日はいつもに比べれば
とってもソフトに愛し合ってるレンジさんと私。

「ハッ……ハッ……ハッ……んあっ!あぁ……」

いつもは大きく広げられたり肩に抱え上げたりされる足も膝を立ててるだけでレンジさんを受け入れてる。
本当なら激しく軋むベッドも今日は小さくキシキシと時々軋むくらい。

この前レンジさんのお誘いを断った理由もちゃんと話したらレンジさんはわかってくれて今日はとっても優しくしてくれる。
いつも優しくないわけじゃないけど……いつもはその……激しいと言うか……情熱的と言うか……
とにかくワケがわからなくなっちゃうくらいなのに今日はいつもと同じくらい私の息があがってるけど身体はそんなに辛くない。
こんなふうにレンジさんに抱かれたのは初めてかもしれない……なんてホワホワした頭で考えてた。
これなら赤ちゃんが……なんて心配しなくても大丈夫。

「ん……ちゅっ……はふ……んん……」
「ちゅっ……大丈夫か智鶴?」
「……ふぁ……はい……」

今日はレンジさんからタバコとお酒の味がしないからお互い気の済むまでキスをして舌を絡ませあう。

あれからレンジさんはあまりタバコを吸わなくなった。
“このままなら禁煙できるかもしれねえな”なんて豪語するほど。

私は赤ちゃんのためにとも思うけどレンジさんにとってもいいことだど思うから
このまま禁煙が成功すればと思ってる。

お酒はどうしてもお付き合いで飲んだときはレンジさんはとっても気を使ってくれてキスはオデコや頬にしかしない。
それに私にあまり近づかないようにしてくれる。
でもさすがにベッドでそっぽ向かれるのは淋しいからそのときは私の方からレンジさんに引っ付いて寝てる。

つわりはあのあと1ヶ半月程で治まったけどその間けっこうキツかった。

毎日毎日ムカムカの連続でつわりがなかったときの自分を思い出せなくて終わりの見えない気分の悪さに
もしかして赤ちゃんが産まれるまでずっとこのままなのかも?
なんて思ったらとってもブルーな気分になっちゃって……
レンジさんがいるときは時間の許す限りレンジさんに甘えてた。

それだけでホッとして涙まで出ちゃって……
レンジさんはびっくりしてたみたいだけど黙って私を抱きしめて頭や背中をいつまでも撫でてくれた。

会社も休み休み出社してた感じで同じ部署の人には迷惑かけてしまったと落ち込んだりもした。

本当ならギリギリまで働くつもりだったけど5ヶ月に入ったころからお腹が張るようになって
大事をとって会社を退職することになってしまった。

自分としても残念だったけど無事に赤ちゃんを産むためには仕方ないことと割り切った。

それからは無事に赤ちゃんを産めるように気をつけて……だからってあまり神経質にならないように過ごしていた。

ただ……レンジさんの心配ぶりにはちょっと悩んでしまったこともあったけど……


色々ありましたが“鏡 智鶴”!本日無事に男の子を出産致しました!!


レンジさんは仕事でお産には立ち会えなかったけど私としてはちょっと恥ずかしい気持ちもあったから
立ち会えなくても良かったと思ってた。

そのことはレンジさんには内緒ですけど。





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