Love You !



08




彼氏にフラれて夜の街をトボトボ歩いてる…


大体…私なんかが恋愛なんて…男の人とお付き合いするなんて…やっぱり無理なのよ…

中学も高校も好きなった人は全部憧れだけで終わってたし…


それでも…授業中好きな人の背中を見てるだけでも幸せだった…

廊下ですれ違っただけでも胸がドキドキしたし…

たまにちょっと話しかけらてだけで舞い上がるほど嬉しかったのを覚えてる…


でも私は1度も告白なんて事はしなかった…

だって……私なんて相手にされるはずなんかないってわかってたし…

ごくごく普通の…女の子だった…と言うか普通過ぎて目立たないくらい……


『智鶴ってさちょっと恋愛に夢見すぎてない?』

高校の時の修学旅行で一緒の部屋になったクラスメイトにそんな事を言われた。

『まあさ簡単に男に身体許すのも考えもんだけどそんないつまでも大事に取っといてもね〜
だってさ相手が大学生とか社会人だったらそんなの込みの付き合いになるんだよ?』

簡単にそう言う関係って私には無理だと思ってたから…そう話したらそんな返事がかえって来た…

そりゃあ…お付き合いを始めればそう言う事もありだっていうのはわかってる…
だから…本当に好きになったら私だって…きっと出来るわよ…

って思ってたけど…
相手がいないんじゃ話にもならない……


当然の如く何も無かった短大を卒業して…社会人になって…
他の同僚の人の恋愛の話を聞く度に胸がドキドキした…

学生の時とは違う…大人の恋の話…
だから私もちょっとでも勇気を出そうかな…って思って…

初めて誘われた合コンと言うものにも参加してみた。
人数合わせって言うのはわかってた…でも少しでもそう言うのにも慣れなきゃって…そう思って…

こんな私でも男の人とのお付き合いには興味はあったから…

緊張しながらも相手の男の人の話もちゃんと耳を傾けた…

帰る時1人の男の人が送ってくれるって言うからお言葉に甘えたら
いかがわしい場所に連れて行かれそうになって慌てて男の人を振り切って逃げた。

もうそれからしばらくの間男の人が怖くて…合コンのお誘いも断った…
って言っても元々少ないお誘いだったから2・3ヶ月に1度あれば良い方だったけど…


会社に勤めていれば少しは大人のお付き合いも慣れて来て
部署の飲み会でも上司にお酒なんかも勧めたりする事もあった…

入社1年目で…とにかくそれもお仕事だと思って相手をしたけど
段々酔いが廻り始めるとちょっと勘弁して欲しいと思える程のスキンシップをされた。

本当にこれも新入社員の仕事なの??なんて思っても誰も助けてくれなくて…
どうやらこの上司のそんな態度はいつも恒例らしく毎年誰かが犠牲になるらしい…
今年は新入社員の私の番だった…

こんな時助けてくれる様な男らしい人はいないの!!

なんて思ってたら1人の男の人が助けてくれた。


「部長いくら無礼講でもセクハラで訴えられますよ。」


なんて言ってくれて…今の世の中 「 セクハラ 」 なんて言葉は時々有効らしい。
部長は早々に違う人の所に移動していった。

「飲み屋と勘違いするなって言うんだよね。大丈夫?小笠原さん?」

そう言って彼はニッコリと笑った…


その日から私は彼…向居さんを目で追う様になった…


営業マンで真面目で気さくな人で…何気に女子社員にも人気のある人で…

今までの私ならきっとこっそりと見てるだけだったけど…

でも私だってちょっとは大人になったもの…頑張ってみる!


そう思ってこの前助けて貰ったお礼にってお弁当を差し入れた。
他に何の取りえもない無い私…
独り暮らしって言うのもあって料理だけが唯一の自慢できることだったから…

ちょっとびっくりされたけど 「 小笠原さんって結構家庭的なんだね。 」 なんて言われて…

私は嬉しくて…それに向居さんはお弁当のお礼にって私を食事にも誘ってくれた。


緊張しながらの食事で何を話したのか覚えて無かったけど…

最初の合コンの時の男の人とは違って彼は送り狼にはならなかった。



それからは週に1度位向居さんにお弁当を作った…

1ヶ月くらい経ったころいつもの様にこっそりと向居さんにお弁当を渡そうとしたら…


「小笠原さん…」

「はい。」

「あの…悪いけどもうこう言うの止めてもらえないかな…」

「え?」

「君を庇ったのも別に君に何か特別な感情があったからじゃないし…女の子が困ってたら
僕は誰でもああしたし…食事も僕会社の女の子とは誰とでも普通に良く行くから…
君だけが特別ってわけじゃないんだよね…」

「……あ…あの…」

「こう言う彼女みたいな事止めてくれる?」

すごい…迷惑そうな顔…そんな彼の顔…初めて見た…

「……私はただ…」

「向居さ〜ん。電話ですよ〜〜」

廊下の向こうから彼を呼ぶ声がして…

「あ!うん今行く。」

彼はそう返事をするとすぐに身体の向きを変えて私に背を向けた…

「じゃあ小笠原さんもうやめてね。」

「…………」


向居さんの姿がだんだん小さくなる……

私は別に彼女になったつもりなんて思ってなかった…

ただ私はこう言う形でしか自分の気持ちを表現出来なかったから……

喜んでくれたらいいなって…喜んで…もらえたらいいなって…


私は自分の作ったお弁当を両腕で抱きしめて…

その日…家に帰って…中身を捨てた…





Back  Next






  拍手お返事はblogにて…