Love You !



09




どうやら私はちょっとでも優しくされると気持ちが傾くらしい…

趣味と実益と気晴らしを兼ねて通い始めたお料理教室の
人気講師の先生に優しく指導してもらって

「 小笠原さんは筋がいいね。 」

なんて褒められたら舞い上がっちゃって…

料理の先生に料理と言うわけにもいかず…
だから授業の度にクッキーやケーキを作ってきては渡した。

「いつもありがとう。」

って嫌な顔しないで貰ってくれたから…
2回に1回はそんなプレゼントを持って来て先生に渡してた…


でも加瀬先生がそんなに人気のある先生だとは思わなくて…


ある日…帰り際に数人の女の人達に呼び止められた。

みんな同じ教室の人で見た事のある顔だった…

「あなた何1人で抜け駆けしてんのよ!」

「え!?」

いきなりそんな事言われて…言われてる意味がわからなくて…

「加瀬先生には特別な事はしないって暗黙の了解がここの教室にはあるのよ!」
「だからあなたがやってる事って許せないわけ!」

「は?」

「惚けんじゃ無いわよっ!!だから抜け駆けすんなって言ってんのよっ!」

「!!」

思いっきり怒鳴られちゃった…

「もう姑息な手は使うなって言ってんの!」

「そんな…私は別に…」

「別になんてはず無いでしょ!ちゃっかりプレゼントなんか渡してるくせに!」
「いい?次にそんな事したら私達が許さないからね!」

「…………」

私は何も言えず…ただ彼女達が帰って行くのを黙って見てた…

今までの人生の中で生まれて初めての経験で…びっくりのドキドキの…
でも…やっぱり女の人でも怖かった……


当の加瀬先生は今までと全く変わらず…何事も無かったかの様…

と言うか…きっと自分の周りであんな事が起こってるなんて先生は知らないんじゃないかしら…

結局は私は加瀬先生にとってただの一生徒でしかなくて…

そんな事はわかってた事だけど…


なんだかあの人数の女の人達を敵に廻すほど恋焦がれてたワケでもなかったから…

半年の受講期間が終わった時…私の恋も終わった…


そんな事が数年の間にあって…結局私は誰とも付き合うことも無く…

いつの間にか1人でお酒なんて飲む様にもなって…

会社では私はちょっと変わってる子みたいに見られてから…
そんなに親しい人もいなくて…

今夜フラれた彼は久しぶりに出た合コンで知り合った人だった…

ちょっと自分勝手な所もあった人だったけど…
私が世話をやいてもなんとなく受け入れてくれて…

もしかしてこのまま…上手くいくんじゃないかって思えた…

だから…何度目かに彼の部屋に訪ねて行った時…
初めてキスされたけど…嫌がらずに受け入れた…私の初めてのキス…

でも…それから彼の態度は急に変化して…
隙あらば私と身体の関係を持とうとしてた…

彼の事は好きだったけど…怖かったのもあったし…それにまだそこまで考えられなくて…
かたくなに拒み続けた…

食事の支度をして彼が帰って来たと同時に帰ったり…
外でしか会わなかったり…それとなく話を逸らしたり…

最初は大人しく引き下がってくれてたけど…
私が拒む回数が増える度に彼の態度はどんどん粗野になっていった…

会う回数も減ってきて…会ってもほとんど喋らなくなって…

それでも…私はどうしても最後の一線は越えられなくて…

結局はあんな言葉を言われて…フラれちゃった…


だから…お酒も進んで…酔っ払って…

初対面のあの人と…あんな事になっちゃったんだわ!!


「きょうは…帰りたくありまへん…」

この時は本当に帰りたくなかったんだもん…

何だかもう何もかも嫌になって…自分で自分が嫌になって…
どうせ私なんて堅くて重くて…なんの取り得も…楽しみも無い女なんだもん!

だから何だか心もとなくて…支えてくれてるこの人の背中をぎゅっと掴んじゃった…

あんな事を言って私を支えてる人を見上げたら…
その人も私をじっと見てた……

そう言えばこの人…私の事…褒めてくれたんだっけ?
簡単に男の人に身体を許さないのは当たり前だって言ってくれたんだっけ?

そんな事褒められたの初めてだったな……

よく見ると…なかなかのハンサムさんじゃないですか〜

ん?んん??なに?あ……


ハンサムさんが近付いて来て…え?これって…

とっても強引で…乱暴なキスをする……


でも……今の私には…こんなキスはとっても気持ちが良くて…惹かれちゃう…

何だろう…胸の奥がドキドキ…ドキドキ……お酒のせいかな?


なんて思ってる間もどんどんどんどん迫られる…
キスで迫られるなんて思うなんて…初めてで…一体どんなキスなの??

「……んっ……ンン……」

ぎゅっと抱きしめられて…舌を絡められて…

やだ…足が…届かないよ……もう少し…屈んで欲しいな…


なんて酔った頭でそんな事を考えてた……結構おぼろげでも覚えてるもんね…

一体いつまでこのキスは続くんだろう……何だか…流石に頭がクラクラしてきて……

倒れそうでハンサムさんの身体に腕を廻したらとっても逞しい身体だな〜なんて…


ああ…私…本当に今夜は変だ…


自分からこんなに積極的に男の人の身体に密着するなんて……

でも…謙吾さんよりも逞しくて…しっかりしてて…程よい抱きつき加減で…
あったかくて…何かつけてるってわけじゃないんだろうけど…イイ匂いで……

ああ…何よりこの身体全体を包んでくれる安心感♪

最近情緒不安定だったからか…一人暮らししてる私には久しぶりの人の温もりで…
何だかとっても落ち着けて…一体何なんだろう…この人…


だから…私はもうこの人のされるがままに…

抱きかかえられて歩き出してた…





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