「はあ〜〜」
自分の部屋のベッドに腰掛けて…今淹れたばかりのコーヒー片手に大きな溜息をついた。
もう部屋に戻って何度目なんだろう…
だって…だって…酔った勢いでしちゃった相手は人気若手俳優のあの「鏡レンジ」さんで…
しかも…そのレンジさんが私に「付き合って欲しい」なんて言ってくれて…
帰る時もタクシー拾ってくれて…タクシー代も出してくれた…
そう言えばホテル代だって出したんだから…結構な出費だったろうな…
いいって断ったのに…
『本当なら家まで送ってやりたいんだが今時間がねぇ…
次からは必ずちゃんと俺が送ってってやるから。今日はタクシーで我慢してくれ。』
そんな…タクシーだって贅沢なのに…電車だってもう動いてたから電車だって良かったのに…
今日が会社がお休みの日で良かった…だから昨夜は何も気にせずにお酒飲もうと思ったんだけど…
じゃなきゃ完璧に遅刻だもの…
ホテルを出た後はあんまり話さずに別れた…
お互いの携帯番号とメールのアドレスは交換したけど…私からは絶対掛けないだろうな…
だって…もしかしてもう鏡さんは後悔してるかもしれないし…
あの時はその場の雰囲気で責任取るなんて言っちゃったけど…
やっぱり今後の事を考えると1日でも早く私なんかとは縁を切りたいだろうし……
だからこのまま自然消滅だって私は構わないんだ…
告白されたって言う思い出だけでも嬉しいから…しかも相手は有名な俳優さんだもん…
一瞬でも…有名な俳優さんの彼女になれたから…
これで当分…ううん…一生だって自分の支えになりそうなことだから…
だから……大丈夫だもん……
酔って覚えてないと思ってたことも少し思い出して…
本当は自分も受け入れてた上でのしたことだったんだって…思い出した…
鏡さんは酔った勢いって思ってるだろうけど…でも…それでいいよ……
その方が後腐れなくサヨナラできるよね……
「…………」
あれから3日経った……
俺は撮影の合間の度に携帯を眺める日々だ…
何でこの3日間…連絡が来ない???番号教えたよな?メールのアドレスも…
いつもならすぐにでも相手の女からいつ会えるだのここで待ってるだの連絡が来るのに…
あの女からの連絡は一向に来ない……
もしかして……フラれたのか?俺??え?マジか??
あれから1度も会ってないのにか?
で…でも…ちゃんと付き合うって決まってたよな?あれで俺達付き合うって事になったよな??
わかんねぇ……そう思ったのは俺だけか?
いや…ちゃんと 「 宜しくお願いします。」 って頭まで下げたじゃねーか…
あれがウソだとは思えねぇ…
って…やっぱり家まで送って行かなかったから怒ったのか??ウソだろ?マジか??
「……………」
一気に吸ったせいでタバコの残りが根元まで灰になる…
そんなタバコの灰が足元に落ちても俺は気付かなかった…
こ…これは……俺から電話しろって事か??俺が…俺から??
俺は握り締めた携帯をじっと見つめる…それこそ携帯に穴が開くんじゃないかってくらいに…
な…何うろたえる事がある…たがが電話するだけじゃねーか…
女に電話なんて初めってわけじゃねーし…だ…大丈夫だろ?
あ…でも露骨に迷惑って態度されたらどうすりゃいい?
でも付き合ってるんだろ?俺達?!
だーーーーーーわかんねーーー!!!!
「レンジ…さっきから何してんの?」
「 !!! 」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれてギクリ!となって一瞬動きが止まる…
仕方なく顔を上げると…1人の男がニヤニヤ笑いながら立ってた。
くっそーーーー!!一番会いたくない奴に会っちまった!!!!
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