Love You !



15




智鶴は良く喋って良く笑った…

店に入っていきなり智鶴の跳ねた前髪を弄ったら驚かれてトイレに駆け込まれた。
だからいきなり智鶴には触っちゃいけねえのかと思ってそれからは智鶴に触れるのを我慢した。

本当は車に向かう間も車に乗ってからも気を緩めると智鶴に触れそうな自分がいて
何度踏み止まったか…

もう俺の中で智鶴はちっちゃくて健気で良く喋って良く笑う 「 可愛い女 」 だ…

だから道に迷った事をあんなに申し訳なさげに謝られたが内心一緒にいれる時間が増えて
俺は本当にそんな事気にしてなかった。

別れ際のあの智鶴のセリフは何か意味があった気がしたが…そんな事よりも…
俺に向けられた智鶴の眼差しが何もかも物語ってた。

今まで付き合った相手は一度も俺にそんな眼差しを向けた事はねえ…

申し訳なさげな…自信の無さそうな…遠慮がちな顔に瞳…
さっきまでそんな顔してなかったのによ…何で急にそんな顔する…

しかも…別れ際に…

智鶴に背中を向けて歩きながらそんな事を考えてた…
歩いてた足が止まる…やっぱ我慢できねえ…智鶴に向かって歩き出す。

智鶴のびっくりした顔が目の前に来る…
俺の腕と胸ん中にすっぽりとおさめて抱きしめる…ホントちっちぇなぁ…

「ひ…人が…人が来ちゃいます…」

俺の腕の中で智鶴がそんな事を呟く…

「そうだな……」

わかってる…そうかもしれねえが離したくねーんだよ…

智鶴の額の髪の毛を手の平でよけて露わになった額にキスをした…

「チュッ……」

「ひゃっん!」


変わった悲鳴?なのか?

長い間…智鶴の額に唇を押し付けた…
智鶴の頭から髪の毛のいい匂いがふんわりと俺の鼻をくすぐった…

香水なんかじゃねー…なんとなく…素朴な匂い…

本当は唇を奪いたかった…
でも…今智鶴とそんなキスをしたらきっとそのまま部屋の中になだれ込んで
玄関先でも押し倒して智鶴の身体を奪っちまうのは目に見えてたから…

ぐっと堪えて…額にキスだ…

それだってそのまま唇まで移動しそうになるのを必死で堪えたんだぜ…
そう言う俺の気持ち…伝わんねーかな…智鶴…

「じゃあな…」

やっとの思いで額から唇を離す。

「………ふぁい……」

何ともまた変な返事が返って来た…どうした?智鶴…

可愛すぎるだろ?そのホワンとした顔…


何度も振り返って智鶴を確かめながら…
後ろ髪引かれる思いで車を走らせて帰った…

そんな事本当に初めてで自分でもこの気持ちを持て余して戸惑う…

「 !! 」

この俺が戸惑う?この俺が?

本当…不思議な女だよな…智鶴は…



「はぁ〜〜〜」

昨夜から何度考えてもあれは一体どう解釈すれば…

抱きしめてくれてオデコにキスしてくれたって事は…少しは私の事…

「本当かな〜」

私の会社の職場は同じフロアに何個かの部署が仕切り無しで入ってる。
でも1人1人のデスクは仕切られてるから私がそんな事を仕事中に
ちょっと考えても誰にもわからない…

「小笠原さん。」
「はっ…はい!」

なのに急に声を掛けられたから焦った。
振り返ると同じフロアだけど別な部署の…確か営業の人だったかしら?
チラリと首から掛かるネームプレートを見ると 『 永井 友治 』 さん?

「な…なにか?」
「ちょっと資料作りたくてね。小笠原さんに手伝って貰おうかと。」
「は…はい!一体どんな?」
「過去5年遡ったウチのエクステリアの人気商品のデータ欲しいんだけど。」
「あ…確か資料室にそんな感じの資料があったと思いますよ。
以前同じ様な資料作りたいって方がいて確か服部さんが見付けてたと…」
「じゃあ一緒に取りに行ってもらえるかな?一緒に行った方が早いし。」
「はい。」

確か1ヶ月位前に服部さんがそんな事言ってたのよね。
服部さんは私と同じ事務関係の仕事してて…

でも事務と言っても同じフロアの別な部署の雑用やお手伝いもするから…
営業の誰かに頼まれたのね…

そんな事を思いながら永井さんと2人地下1階にある資料室に向かう。

途中雑談を交わしながらあっという間に資料室に着いた。


「どの辺ですかね…私もあんまり資料室って来た事無いんで…
服部さんに聞いてみましょうか…その方が…」

カシャン!

「ん?」

何だか鍵の掛かる音に似てた?

「あの今鍵の掛かる音がしませんでした?」
「したみたいだね…」
「どうしてなんでしょう?誰か間違えて外から掛けちゃったのかしら?
でも中から開きますし…良かったですね。」

「君って天然?」

「はい?」

言われてる意味がわからなくて…

「オレが閉めたんだよ。」
「え?何でですか?」
「君と…小笠原さんとの2人の時間誰にも邪魔されない為さ。」
「え?あっ!」

急に彼が近付いて来て書類棚に肩を押し付けられた。

「え?な…なんですか?資料は?」
「そんなの口実に決まってるだろ。本当マジでわかってないの?」
「………」

見下ろしてる彼の顔がとっても嫌な感じで…

「や…止めて下さい!騙したんですか!」
「騙したなんて人聞きの悪い…だから君と2人だけの時間を
誰にも邪魔されたく無かったって言ってるじゃないか。」
「2人だけの時間なんて必要ありません…資料の事…ウソだったんならもう戻ります。
どいて下さい!」

何とか強気に言ってるけど本当は怖くて怖くて…足が竦みそう…

「慌てなさんなって。ねえ今夜オレと付き合わない?」
「は?」
「食事してお酒飲んで…その後は大人の時間って事で…」
「………」

な…何言ってるのかしら…この人?え?大人の時間って?

「最近…綺麗になったよね〜小笠原さん。」
「え?あ…止めて下さい!」

言いながら私の髪の毛に自分の指を絡ませるから鳥肌が立った。
手でそんな指を払いのける。

「そんなに邪険にしないでよ。他の娘達は楽しんでんだよ。」
「え?」
「服部さん…だっけ?彼女なんて彼氏いるのにオレと3回もお付き合いしてくれたんだから ♪ 」
「………それじゃ…前服部さんに資料頼んだのって…」
「ここに連れて来る口実!もういいだろ?会社終わったら裏の通りで待っててよ。
オレもすぐ後から行くから。時間ずらした方がいいだろ?」
「私…そんなお付き合いしません!失礼します!」

永井さんの横をすり抜けて扉に向かって走った。

「オイオイ!」

パシリと手首を掴まれた。

「!!」
「何で逃げんの?小笠原さんだって少しは楽しめばいいのに。服部さん言ってたよ…
「小笠原さんは男に縁が無くて寂しい思いしてるからたまには誘ってやってくれ」ってね。
フラれたんだろ?合コンで知り合った男に?身体許さないからだって?」
「な…何でその事知ってるんですか?」
「ああ…不思議?」
「………」

またすごく嫌な感じの顔が近付く…

「オレ謙吾とは大学時代からの知り合いなんだ〜この前久しぶりに奴に会ったら
そんな事言っててさ。まさかその相手が小笠原さんだったなんてさ。世の中狭いよね。」

「………」

ニヤリと笑った顔がもっと嫌!

「だからオレが小笠原さんの事女にしてあげるよ。オレ慣れてるから優しくするよ。」

「!!」

「で慣れたら謙吾と3人で楽しもうか?」
「は?」

3人?3人って??どうやって3人で?なんてちょっと考えちゃった。

「もしかして3Pのやり方わかんない?」
「!!」
「可愛いね小笠原さん。」
「嫌っ!!」

近付いて来た永井さんのスネを蹴っ飛ばした。

「ぐっ!!痛てえっ!!」


痛がった永井さんが私の掴んでた手首を放したからその隙に鍵を開けて飛び出した。





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