Love You !



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「はぁはぁはぁ…」

エレベーターは待ってる時間が怖くてそのまま階段を駆け上がって
自分の職場の階まで上がった。

見慣れた風景と人のざわめきでホッとする…そのままトイレに駆け込んだ。

「はぁ…はぁ………怖かった〜〜」

思わず洗面台の前にしゃがみ込む…身体が震えて…
まさか会社でこんな怖い目に遭うなんて思わなかった…

あの人会社に何しに来てるんだろ…

「……はあ〜〜」

やっと身体の震えがおさまって来て落ち着くと何だか…レンジさんの声が聞きたくなっちゃった…
ううん…ダメよ…きっと今仕事中だろうし…
でも…私からも連絡して良いって…それに今は緊急事態だし…

今のままじゃ仕事も手につかないよ…それにレンジさんが出るとは限らないじゃない…


もしかして永井さんが戻って来てるかもと思って恐る恐るフロアに戻る。
ざっと周りを見渡すと永井さんの姿は無かった。
だから素早く自分の席から携帯を取り出してまた素早くトイレに駆け込んだ。

「………ドキドキする…」

初めてレンジさんの携帯に掛けるんだ…やぁ…どうしよう〜
さっきとは別の意味でドキドキする…どうする?レンジさんに迷惑だから止めておく?

でもでも…

レンジさんの声が聞きたいよ……

「えいっ!」

携帯のディスプレイの画面に呼び出し中の文字とレンジさんの番号が交互に表示される…

「ややや…どうしよう!!」

私のバカ〜今更後悔!?でももう切れないよ…相手に着信履歴残るもん!

「!!」

いきなり呼び出し音が途切れた!

『智鶴?』
「ははは…はい!わ…私です。」
『やっと智鶴から掛けて来てくれたか。』
「え?」
『いつ掛けて来るのかずっと待ってたんだぞ。』
「あ…すみません…お待たせしました…」

本当に待たせちゃったかと思って…真面目に謝った。

『くすっ…謝んなよ。』
「ああ…あの…今お仕事大丈夫ですか?」
『休憩中。』
「良かった。」
『智鶴。』
「はい?」
『今日仕事普通に終わりそうか?』
「はい。大丈夫です。」

って言うか今日は早く帰りたい…今すぐにでも帰りたい!!

『じゃあまた迎えに行くから駅前で待ってろ。』
「え?本当に?」
『今日は遅れそうでも急いで走って来なくていいからな。』
「…はい…」
『智鶴が遅くなっても俺はちゃんと智鶴が来るまで待っててやるから…慌てて転んだりしたら困るし。』
「そんな…転びません!子供じゃ無いですから!」
『怪しいんだよ。』
「わかりました…じゃあ遅れない様にちゃんと行きます。」
『そうだな…じゃあ後でな。』
「はい…」
『切るぞ。』
「はい…」

それから一呼吸置いて電話が切れた…


「……はぁ…」

さっきとは違う溜息…

やっぱり…レンジさんに電話して良かった…
嫌がられもしなかったし…それに私から電話掛けてくるの待っててくれた…

待ってたって…言ってくれた……

「ふふ……うふふふふ……」


私はさっきまでの嫌な気分もどこへやら…

女子トイレの中で携帯を握り締めて踊りだしたい気分だった。





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