Love You !



19




「………」

ずっとレンジさんは喋らない…
それに一体どこに向かって走ってるんだろう…初めて見る景色で…

どのくらい走ったのか…どこかの駐車場に入って車を停めた。

「………」

ここって…マンション?
キョロキョロ周りを見てたらいつの間にか降りてたレンジさんが助手席のドアを開けて
今度は私を引っ張り出す。

「あの……」

レンジさんを見てもレンジさんはムスッとしたままで…
私の腕を掴んだままスタスタと早足で歩いていく…
私はついていけなくて小走りになってもレンジさんは気にせず歩き続ける。

正面の入口に着いてロビーを抜けて慣れた手付きでオートロックの鍵を開けるって事は…
やっぱりここってレンジさんの家?

エレベーターの中でも無言で……私どうしたらいいの……

10階でエレベーターを降りてまた早足で歩いた…
ちょっと息が弾んできて…でも…レンジさんはこっちを…私の方を振り向きもしない…

怒ってる…?怒ってるのかな…それとも…呆れてる?
前に付き合ってた人にこんな事される女なんて…面倒だって思ってる……?

レンジさんも…最後に…身体だけでもなんて思って…自分の部屋に連れて来たの?

「…………」

それでも…いいか……レンジさんなら…



スタスタと歩いてあっさりとレンジさんの部屋のリビングに入った…
私の部屋より広くて綺麗で…インテリアは黒で統一されてる…
独身の男の人の独り暮らしだから散らかってるのかと思ったけど…綺麗に掃除されてて…
もしかして女の人が掃除しに来てるのかな…なんて…そんな事を思った…

初めて部屋にお邪魔したのに…何だかゆっくりと見れない…
ずっと床を見つめて…

2人共ソファの前で立ったまま…いつの間にか掴まれた腕は離れてた…

「…………」

ど…どうしよう…何か言った方がいいのかな…
それともレンジさんが何か言うまで待ってた方が……

「きゃっ!!!」

いきなりガバッと抱きしめられた!!それも結構な力で…
目の前にレンジさんの洋服が押し付けらて…シャツの上からレンジさんの素肌の感覚が伝わる…
あったかくて…逞しくて……

酔ってておぼろげな感覚だったけど…そう…この感じ…

「ちゅっ!」

「 !! 」

この前みたいに額にレンジさんの唇が押し付けられて…これってキスされてる?

「ちゅっ!ちゅっ!ちゅっ!!」
「え??ええ?ちょっ…あっ…」

最初額にキスされたと思ったら両手で頬を挟まれて上を向かされて…

「ちゅっ!ちゅっ!ちゅっ!!」

額から両方の瞼からハナから頬から…顔中…何度も何度もキスされる!!

くすぐったい様な…嬉しい様な…恥ずかしい様な…とにかくわけがわかんなくて…

「レレレレ…レンジさん!!ちょっ…ちょっと待っ…!!!」

レンジさんの私の頬を挟んでる手を掴んで叫んだ。

「………はぁ…はぁ…」

今度はレンジさんの息が弾んでる…どうして??

「レンジ…さん?」

未だに私の頬を両手で挟みながら真っ直ぐな眼差しで見下ろされてる…
やだ…それだけでも心臓が破裂しそうなくらいドキドキしてる…

「智鶴が連れて行かれたらどうしようかと思ったんだぞ…」
「……え?」

頬から手が離れると今度は私の両肩を両手でしっかりと…でも優しく掴む。

「もっと周りに気い使え!何が何でも抵抗して大声で叫べ!過剰防衛だろうが何だろうが
相手を半殺しに遭わす位の気持ちで反撃しろっ!!」
「は…半殺し……え??」
「絶対会社で1人になんじゃねーぞ!!あの野郎がいるんだからなっ!
今度ちょっとでもヤツが智鶴に近付いたらすぐ俺に言えっ!」
「は…はい…」

「俺が会社に乗り込んで野郎ブチのめすっ!!」

「えっえっ……そ…そ…それは…ちょっと…」

もの凄い真面目な顔で言ってるんですけど!!

「ああ?何でだ?何であんな野郎庇う?あんなの女の敵じゃねーかっ!!」
「べ…別に庇ってるわけじゃ…あの人じゃなくてレンジさんの事思ってです!!
そんな事したら…レンジさんが捕まっちゃいます!」
「………別に俺は構わねぇ…」
「わ…私が構います!!そんなの嫌です!!」
「………」
「レンジ…さん?」
「本当はあのままサツに引き渡しても良かったんだけどな…
智鶴のこれからの仕事の事もあるし…やめた…」
「ありがとうございます…」
「あの前付き合ってた野郎だって気を抜くんじゃねーぞ。1人歩きはなるべく避けて夜遅くは出歩くな。」
「……はい…」

何だか親みたいな事言うんだなぁ…なんて思っちゃった…

「はぁ…まったく…」

そう言ってレンジさんが私の肩に腕を廻してドサリとソファに座った。
だから必然的に私も一緒に…レンジさんに寄りかかった形でソファに座った。

きっともの凄くレンジさんは私の事気にしててくれてるんだってわかってるけど…
私は何だか…とっても密着でこんな時なのにドキドキする…不謹慎かな?

だって……レンジさんの部屋で2人っきりなんだもん……

「初めてレンジさんの部屋に来ちゃった…」
「ん?ああ…とにかくゆっくり話をしたかったからな…」
「怒って…ました?」
「は?」
「呆れて…ました?」
「何でだ?アイツ等に腹立つのは当たり前だろうが。まあ呆れたと言えば呆れたけどな。」
「いえ…あの2人じゃなくて…私…に…」
「何で智鶴に怒って呆れなきゃいけねーんだ?」
「…………」

レンジさんが…私が言って欲しいと思ってた言葉を言ってくれたから…

「……いえ…もう良いんです…もう大丈夫です…」
「ああ?何だよ?」

「ううん……嬉しかった…レンジさんが助けに来てくれて!ありがとうございました。」


私は本当にそう思ったから自分の中でとびきりの笑顔でそう言った。

きっと…レンジさんにはいつもと変わらない顔に見えただろうけど…





Back  Next






  拍手お返事はblogにて…