Love You !



21




「はぁ…買いすぎたかな…」

会社帰りに食料品の買い物をしてドサリとダイニングキッチンのテーブルの上に
2つの買い物袋を置いた。

「遠慮しないで作れって…言ってくれたもんね…それに…」


『俺は今…智鶴以外の女の事なんて考えてねえから…』
『こんなに可愛くていい女をよ…』


って言ってくれたもん ♪

もう私は昨夜から雲の上にいるみたいに気持ちがフワフワ…
地面に足が着いてない ♪


「その前に…やらなくちゃいけない事があるのよね…」

でもそれが何気に困難だったりする…

「かっ…掛けるわよ…」

私は携帯を握り締めて震える指先でボタンを何度か押す。

「これで繋がらなかったらメールだわ…」

とりあえず直接掛けてみる…それも結構勇気がいって…
出て欲しい気持ち半分の出て欲しくない気持ち半分…

何度目かの呼び出し音で繋がった…留守電…かな?

『智鶴。』

レンジさんの声が私の名前を呼ぶ…
それだけで私の胸がドキンと波打つ様になっちゃった…

「あ…はい…智鶴です!!こここ…こんばんは!い…今大丈夫ですか?」
『ああ…智鶴はいつもタイミングが良いんだよな。今休憩中。』
「良かった…」
『どうした?何かあったか?』
「え…あ…ううん…違います。」

本当は会社で永井さんが変な噂流してるんだけど…
それはレンジさんの耳に入れておく様な事じゃないから…

「あ…あの…今日お仕事終わったら私の所に寄れますか?」
『ん?』
「あ…あの…無理なら良いんです!!そんな大した事じゃありませんから…」
『智鶴がわざわざ電話まで掛けて来たのに大した事じゃないなんて無いだろ?
何だ?ちゃんと話せよ。』
「は…はい…あ…あの…明日の…朝ごはんこれから作りますので…
帰りに寄って持って行ってもらえたらと思って…あ!あの無理なら良いんです!
これから作るのでもし迷惑なら…まだ間に合いますので…やめます…から…」
『遅くなっても大丈夫なのか?』
「え?」
『多分10時は過ぎるぞ。』
「べ…別に構いません!何時でも待ってますからっ!!」
『じゃあ行く前に電話する。』
「はい…」
『後でな。』
「はい…」

そう言うと電話が切れた…

「………」

胸の中がホンワカとあったかくなる…

「フフ ♪ 」

私はもう顔が緩みまくってる ♪

「さて!まず目安は10時ね。圧力釜使えば煮物は何とかなるわね。後は…」

そんな事を呟きながら腕まくりをして買ってきた食材を取り出した。



「もうすぐかしら…」

時間はもう10時を5分程過ぎてる…撮影ですもん…時間が不規則なのは仕方ない。
何だか…こんな風に男の人を待つなんて初めて…かも?

正座して座ってる目の前のテーブルに携帯を置いてさっきから見つめてる。
髪の毛大丈夫…洋服も普段着に着替えたし…お料理も大丈夫!

「レンジさん!いつでも大丈夫です!!」

そんな事を呟いてた。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

「きゃっ!!」

待ってたのに急に携帯が鳴ってビックリした…

「わわわわ…まっ…待って…下さい…はああああ〜〜〜」

深呼吸して携帯を掴んだ。
相手は…予想通りのレンジさんから……お…落ち着いて…

「はい。」
『智鶴…俺だ。』
「は…は…はいっ!!お待ちしておりました!」
『くすっ…そんなに緊張すんなよ。』
「は…はい…ごめんなさい…」

ひゃあーーーーもう頭の中真っ白ーーー!!

『あと5分くらいで着く。』
「はい!じゃあ私外で待って…」
『ダメだ!何考えてる!部屋で大人しく待ってろ。』
「あ…はい…ごめんなさい…」
『じゃあな。』
「はい…」

そこで携帯が切れる……
来るって…レンジさんがここに…って…部屋…部屋に上がるわよね?
玄関先なんて失礼だし…大丈夫?部屋の中大丈夫かしら…
へ…変な物なんて無いわよね?ゴ…ゴミは?

なんてどうでも良い事まで気になりだして…お…落ち着いて…私…落ち着け〜〜〜!!



ピンポ〜ン ♪

「来た!」

あれから10分後玄関のチャイムが鳴って私は物凄い勢いで玄関に向かう。

「はあ〜〜〜」

まずは深呼吸…落ち着いて…鍵を開けて玄関のドアを開けた。
目の前にレンジさんが立ってた。

「レ…」

「何で確かめないでドア開けんだ。」

「え?」
「危ねーだろ!これが不審者だったらどうすんだ!」
「あ…はい…ごめんなさい…訪ねてくるのレンジさんしかいないと思ったから…」
「次はちゃんと確かめてからドア開けろよ。」
「はい…」

また親みたいな事言われちゃった…

「べ…別に…怒ってるわけじゃねーからな!」

なんかマズかったかと焦る。
そういや上から目線でどうのって美佐に言われたんだっけか?

「はい!次から気をつけますね!」

「!!」

「レンジさん?」

あれ?横向かれちゃった…言い方…いけなかったかな?

「………いや…何でもねー」

何でそんな素直な返事すんだよ…それにそのキョトンとした顔…ダメだ…
このまま抱きしめて押し倒してぇ!!智鶴〜〜!!ホントお前可愛すぎるだろ!!

「大丈夫ですか?」
「だ…大丈夫だ…」
「あの…どうぞ。」
「ああ…」

初めて…男の人を…レンジさんを部屋に招待した…


「何だかお弁当になっちゃって…」
「こりゃまた豪華だな。」
「ご…ごめんなさい!き…気合い入っちゃって…」

キッチンのテーブルの上には三段のお重箱が鎮座してる。

「あ…あれもこれもなんて思ったら…」
「見ていいか?」
「え!あ…はい…」

カタリと音がしてお重の蓋がレンジさんの手で開けられた。

「へえ〜」
「へへへ…変ですか??」
「いや…食っていいか?」
「あ…はい…ちょっと待って下さい。」

お箸をレンジさんに渡すとそのままそのお箸は私が作ったおかずに…

「あ!」
「ん?」
「いえ…お口に合うかな…って…」
「くすっ」

レンジさんがくすりと笑って肉じゃがのジャガイモ芋をパクリと食べた。
私はもう心臓がドキドキバクバク…

自分から作るって言っておいて今更後悔………だ…大丈夫?

「美味い!」
「ほ…本当ですか!?」
「ああ美味い。」
「良かった…」

本当にホッとして…


美味いと言ったら智鶴が本当にホッとした顔をした…
その顔がいじらしくて…本当にお前は俺にとって可愛い女だ…

「あ…」

レンジさんの片腕に抱き寄せられて腕の中に抱きしめられる…
もう何度目だろう…でも…ホッとする…だから何度でも抱きしめて欲しいな…

「………」

腕の中から見上げたらレンジさんが私の事を見下ろしてた…

「あ…あの…」

優しい眼差し…あんなに怒ったりするのに私にはこんなに優しくしてくれる…
会うたびに…私はどんどんレンジさんに惹かれていく…

レンジさんもそう思ってくれてるかな…
でも…私に惹かれるところなんてあるんだろうか?

「あ…」

不意にレンジさんの顔が近付く…

「ちゅっ…」

「ひゃん!」

いつもと違って頬にキスされたから耳元と首筋にレンジさんを感じて変な声が出ちゃった…
頬からレンジさんの唇が離れるとまたぎゅっと抱きしめられる……

「くすっ…変わった声だな…」
「だって……」

私は両手でレンジさんの胸の辺りの洋服を握り締めて俯いた…
どうしよう…甘えたくなっちゃった……でも…私はぐっと堪える…
もしかして…迷惑かもしれないから…甘えられるの嫌かもしれないし…

「智鶴」
「はい…」
「ご飯あるか?」
「え?」

そんな言葉で思わずレンジさんを見上げる。

「まだ夕飯食ってねーんだ…これ今食べていいか?」
「え!?そうなんですか!?やだ…言ってくれればいいのに!」
「食いはぐった。」
「じゃあ今から何か作りますから。」
「いやこれでいい。」
「だってそうしたら明日の朝と同じになっちゃうじゃないですか!
直ぐ出来ますから待ってて下さい!」
「面倒じゃねーのか?」
「全然面倒じゃありませんから!今お茶淹れますから出来るまでちょっと待ってて下さいね。」
「いつまでも待ってる。」
「そんなに時間掛かりませんから。」
「ああ…」

その後レンジさんにとびきり美味しく淹れたお茶を出していつも以上に気持ちを込めて
夕飯の支度をした。

そう言えば望まれて男の人に料理を作ったのって…これが初めて…
それがレンジさんだったから…すごく嬉しいな…

「フフ…」
「どうした?」
「ううん…何でもないです。」

その後作った料理をレンジさんは美味しいって言ってくれて全部食べてくれた。


「ここでいい。俺が出たら直ぐに鍵かけてチェーンも掛けろよ。
女の1人暮らしなんだって事自覚しろ。」

玄関の内側で帰り際のレンジさんのセリフ。

「はい。わかりました。」

レンジさんって結構心配性なんだな…なんて思った。
見かけによらず…もっと大雑把なのかと思ってた…

「じゃあな。」
「はい…お休みなさい…帰り気を付けて下さいね。
これでレンジさんが事故に遭ったら私後悔しちゃいますから…」
「そんなドジしねえ。」
「わからないじゃないですか!いくらレンジさんが気をつけてたって相手のある事なんですから!」
「心配性だな…智鶴は。」
「え?」

レンジさんには負けますけど…なんて心の中でそんな事を思ってた。

「メシ…ありがとうな。ホント美味かったぞ。」
「はい。明日もお仕事頑張って下さいね!」
「ああ…」
「あ…」

「ちゅっ!」

額にまた軽いキスをされる…お休みのキスなのかな…

「じゃあまたな。」
「はい…また…」

軽く手を振ってレンジさんがドアの外に消えた…
途端に私は淋しくなる…もうどれだけレンジさんに頼ってるんだろう…

言われた通り鍵を掛けてチェーンも掛けた……

「はぁ……」

さっきから…ほんの些細なことだけど……気になりだした…

「何でなんだろう……」

私は独り言の様に呟く……


どうしてレンジさんはキスするとき……

唇にしてくれないんだろう………





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