Love You !



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「はぁ〜少しは揃ったわよね…これでマトモな料理が作れるわ ♪ 」


初めてのレンジさんのお家のお泊りから1週間…
あの後…私とレンジさんは会ってないのよね……

レンジさんのドラマの撮影が忙しくて時間が不規則になったから…
朝早かったり夜中まで仕事だったり…今は3日間泊りがけのロケで留守…

そりゃ携帯で話したりはしてるけど…やっぱりレンジさんに会いたいなぁ……
会って…ぎゅう〜〜〜ってわたしがして…レンジさんにもしてもらって…もらって……

「きゃ〜〜〜!!やだぁ!!!」

なんて1人で赤面する事まで考えちゃってる!!!

「…………はぁ〜〜〜」

溜息は止まらない…

「レンジさん……早く帰って来て……」

そんな事をポツリと呟いちゃう……

私は1人…レンジさん家のに来てる…鍵はあの日に貰ったから…
ほとんど揃ってなかったキッチン用品を毎日ちょっとずつ買って揃えてはせっせと運んだ。

それが今日で殆んど揃って…
後はレンジさんの好みで買おうと思ってる小物関係を買うだけで…
でもそれはレンジさんと一緒に買いに行くつもり…

「これって…私の事信用してくれてるって事よね…」

お財布から1枚のクレジットカードを取り出してマジマジと見る…

『これで好きなの買えばいい。』

そう言ってレンジさんが渡してくれた…レンジさんのクレジットカード…

私はいいって言ったのに自分の家に置いておく物だからって…
自分が払うって頑として譲らなかった。

『智鶴がずっと使うんだろ。』

はい!!もう永遠に使いますから!!!

それって…それって!!!ずっと一緒にいるって事ですよね??
ずっと私がレンジさんの為にお料理作っても良いってことですよね??

「はぁ〜〜〜嬉しいです〜〜〜 ♪ ♪ レンジさん〜〜〜 ♪ ♪ 」

私は目の前のテーブルに置いたお揃いのお茶碗とお箸と…
お椀と湯飲みとマグカップに熱い眼差しを送る。

これは…自分のお金で買った…
だって…これは…2人の大切なモノだから……大切なモノにしたいから…

「レンジさん……会いたいです……」

そうだ…今度一緒に写真撮ってもらおうかな…レンジさんいいって言ってくれるかしら?
でもこう言う時に自分を慰めて癒すには絶対必要なモノだもの…

今度レンジさんに会えたらお願いしてみようかな……


それからそんな小物をちゃんと片してレンジさんの部屋を後にする…

レンジさんのいない部屋で寝泊りするなんて図々しい事は出来なかったし
それにやっぱり生活するには足りないものもあって不便もある。
それを持ち込んでまでなんて事は思ってなかったから…

レンジさんとの約束で遅くならないうちに自分の家に帰る事にしてるから
早々にレンジさんの部屋を後にした…

玄関を閉める時…振り返って中を見回す…

早くこの部屋の主さんが帰って来ます様に……
この部屋だって…寂しいよね……

私だって…すごく寂しいもん……

そう思いながらドアを閉めて…鍵もちゃんと掛けて…
レンジさんの家を後にした……



智鶴が俺の部屋に泊まってから10日経った…
撮影が忙しくなって時間が合わず今夜やっと会える。

こんなに長げぇ10日間は初めてだった…

夜中に自分の部屋に戻って何度そこに智鶴が待ってないかと思ったか…
智鶴は俺に遠慮してこの不規則な時間の間は俺の所には泊まらないと言った…

本当は帰った時ベッドに智鶴が寝ててくれた方が俺としては満足だったのによ…
確かにすれ違うかもしれねぇが顔が見れるだけでも良かったのにな…

なんて事を思うとやっぱ一緒に暮らしてぇな…なんて事を思う様になる…

智鶴にとってそれは迷惑な事なのか…負担になる事なのか…
どっちなんだろうな……
ロケ先で1人タバコを吸いながらそんな事を思ってた…

「レンジさん ♪ おはようございます。」

「おう…おはよう。」

挨拶されて振り向くと今撮ってるドラマでゲストで出てる共演者が立ってた。

「仲村 留美」 確か現役の女子高生で親が役者のいわゆる 「二世」 ってやつだ。
演技はまあソコソコ見れるがまだまだこれからだろうな。
親のコネでこの世界に入ったクチだって言うのを撮影に参加してくる前にここのスタッフに聞いた。
父親が大物俳優なんて言われてるらしいから本人も遠慮なくそれを生かしてるって言ってたな…
中にはそう言う奴もいる…まあ俺にしてみればそんな事どうでも良いことだけどな。

ニッコリと笑って立ってる。
顔も可愛い顔立ちしてっから周りからもチヤホヤされてて男からの人気もあるらしい。

俺はただの共演者の1人といてしか見てねぇが…
ただ…俺の横や目の前に立たれると思わず目が行く…

そいつの背の高さが智鶴と同じくらいで……重症だな…こりゃ…

「レンジさんと一緒に仕事できるのも後1日ですよ〜留美残念だな〜」
「また一緒に出来る時も来るんじゃねーの?」
「だと良いんだけどな〜」
「この仕事真面目に続けてればまた一緒に出来るだろ。」
「あ〜レンジさんは留美がいい加減に仕事してるって思ってるんですか?」
「別にそんな事思っちゃいないが?」
「………フフ ♪ 」
「あ?」
「やっぱりレンジさんってイイナ〜〜 ♪ 」
「何が?」
「なんか男らしいし〜ハッキリきっぱり言うでしょ?頼りがいがあるって言うか…
留美の知り合いの男の子って皆頼りなくて留美の機嫌ばっかり伺うし。」
「そりゃ気は使うんじゃねーの?親父に。」
「もう皆そうなんですよね〜だからレンジさんはそんな事無いから留美嬉しくて ♪ 」
「………」

自分で周りに気を使わせてるってわかってねーのか?
それともわかっててそう言ってるのか?こう言うガキの…特に女の考える事はわからねぇ…

「レンジさん。今日撮影が終わったら一緒に食事しません?
留美時間取れるの今夜しか無いから…レンジさんも今日夜なら時間取れるでしょ?」
「悪りいな。今夜はダメだ。」
「え〜〜どうしてですか?」
「家に帰る。」
「え〜?家に帰る前に留美と食事して下さいよ〜」
「待ってるから無理だ。」
「え?誰がですか?えーーー!!もしかしてお付き合いしてる人ですか?」

えーーおかしいな…彼女とは別れたって聞いたのに…

「あ…」

ああそうだと言おうとした時…

「ちょっとお嬢ちゃん!ウチのレンジにチョッカイ出すのやめなさい。」

「え?」
「!!」

凛としたそれでいて冷たい声…この声は…でも…何でだ?

「貴女なんかには10年早いわ!お嬢ちゃん。」

振り向くと黒のパンツスーツに身を固めたどう見ても性格のキツそうな女が
ちょっと斜めに立ちながら腕を組んで「仲村 留美」を上から目線で見下ろしてる。
実際背が170あると言ってたからヒール履いてると結構な高さになる。

「あ…あなた誰?」
「『鏡 レンジ』 のマネージャーの黒柳恭子です。良く覚えておきなさい。
ところで貴女のマネージャーは何処です?一言言っておかなければ。」
「なっ…何をよ?」

「そこそこの演技しかで出来ない様なヒヨッコが待ち時間に男を誘うなんて言語道断!
そんな事をしてる暇があるならセリフの稽古でもしておきなさい!」

「留美誘ってなんか…ただ一緒に食事しませんかって言っただけで…」
「それが誘ってないと言うなら何なんですか?まったく…
父親の力でこの世界に入ったのならその父親の顔を潰さない様に努力なさい!」
「ちょっと!失礼な事言わないでよ!私だって…」
「私だって何ですか?まさかあのくらいの演技で満足してるとでも?
フッ…これだから甘やかされて苦労もせずに入って来たお嬢ちゃんは困るわね。」
「な…何よ!」
「貴女よりも実力を持った人なんてこの世の中に沢山いるのよ!
ただチャンスが無いだけでね。それを何の苦労もしないままこの世界でやっていける幸せも
わからないで男あさりなんて許されないわ!貴女のマネージャーはどこ!
こんなヒヨッコを管理も出来ない様なマネージャー私が喝を入れてやります!」

「黒柳…いい加減にしとけよ。」
「レンジは黙ってなさい!これは今後この子の為にもなるのよ。」
「お前キツイんだよ。見ろよビビッてんぞ。」
「ん?」
「う…」

ついに仲村留美が泣き出した。

「泣いて誤魔化すんじゃありません!!まったく…直ぐ泣けば良いと思って…」

「レンジさ〜〜ん留美そんなに悪い事しました?クスン…」
「!!」

泣きながら俺の腕に掴まって俺を見上げてハナをすする。

「…………はぁ〜黒柳…こんな子供にそこまで言うな。それに他の事務所の奴だぞ。」
「レンジ!あんたってば女子供に甘いんだから黙ってなさい!今甘やかすと後々…」

「留美ちゃん!!!どうしたの?」

遠くから30ソコソコのスーツ着たなんとも頼り無さそうな男が走って来た。

「西山さん!」
「え?あ…何ですか?留美ちゃんが何か?」
「貴女がこの子のマネージャーですか?」
「は…はい…えっと…何か?」
「一体どんな教育をしてるんです?」
「え?は?」
「いいのよ!この人が変な言いがかりつけてるだけなんだから!」
「え?」
「言いがかりとは何です!私は貴女の事を…」
「いいから行くわよ!」
「ちょっと!話はまだ…」
「レンジさん!」
「あ?」

「今度!!絶対ですよ!!!」

そう言って自分のマネージャーを連れて離れて行った。

「…………」

こんな状況で人を誘うとは中々の根性だな…さっきのもウソ泣きか?
まあ一応女優なんだし…そんな芸当朝飯前か?

「まったく…マネージャーがあんなだからつけ上がるのよ!
あんな子の言いなりになってるなんて…情けない…」

「………どうしたんだよ?現場に来るなんて珍しいじゃねーか。」

いつも俺1人で何でもかんでもやらせてるくせに。

「何?迷惑?」
「いや…ただ珍しいからよ。」

「時々はこうやって見に来ないとね。どんなイケナイ事してるかわかないでしょ。」

「何もしてねぇよ。」

「そう?じゃあこの後仕事終わったらレンジの家抜き打ち訪問ね。」

「………は?」

「何?何か都合の悪いことでも?」
「……いや…」


こいつは来ると言ったら必ず来る。
どんな言い訳も通用しないし逆に疑われて余計話がこじれるから俺は素直に従うが…

何だよ…せっかく智鶴に会えるのによ…

その前に…黒柳と智鶴を会わせなきゃいけねーのか?





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