Love You !



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「黒柳 恭子(kuroyanagi kyoko)」 7年前からの俺のマネジャーで一緒に仕事してたのは最初の2年くらい…
後は重要と思える仕事やマネージャーがその場にいなけりゃなんねー時にいるくらいで
普段俺は放任されて1人で動いてる。

『自分の仕事でしょ?自分1人で出来なくてどうするんです!』

そう言われてサッサと突き放された。
と言ってもそんな事をしても俺が早々困らねぇ様にちゃんと根回しはされてて
大体の事は自分でどうにかなる。

ああだこうだ口や手を出されるのも俺の性分に合わねぇから丁度良いと言えば丁度いい。
逆に仕事や周りや事務所に対して責任感が湧いたしな…

最初っからそれが狙いだったのか…

黒柳は普段色んな場所に出向いてはオーディションをめぐったりその辺を歩き回って
新人を発掘してくる。

まあ毎回必ず誰か見つける訳じゃねーが事務所としては黒柳に一任してるから
それ相応の成果は上げてんだろうな。

『必ず惇哉くんみたいな逸材を見つけ出しますから!!』

それが黒柳の夢らしい…

黒柳は惇贔屓。
何度も懲りずにうちの事務所に誘ってるが惇の野郎は1度も首を縦に振った事はねぇ。

『オレ自分の事務所の社長好きだからさ。ごめんね恭子さん ♪ 』

いつもそう言って断られる。
でもメゲねぇよな…結構な回数チャレンジしてる気がするが…

ただ単に惇の野郎に会う為の口実か?
だから惇の奴が結婚した時は結構落ち込んでたもんな…

好きとは違って「俳優の楠 惇哉」 に惚れてるんだろうな…と言う事はただのファンか?

まあ一応これでも女だしな…確か年は俺より一廻りほど上だった気がしたが…違ってたか?
知り合った頃から変わってねぇからそれもまた不気味だ。

性格は…俺は黒柳は2重人格だと思ってる。
惇の奴は 『女版 レンジだろ!』 って言ってるが…
見た事が無いくせにホント惇の野郎はそう言う勘が鋭い。

もう1人の黒柳の顔…俺も数回しか見た事がねぇ…


「ふ〜ん…変な所は無いみたいね。」

「だからいつも俺は何もないだろうが。」

俺の家の抜き打ち訪問で黒柳が各部屋をチェックする。
まあザッと部屋の中を見廻すだけだがこれがまたマネージャーの勘とも言うのか…
以前俺じゃねーが所属してる若い俳優の部屋の抜き打ち訪問で
そいつがマリファナに手を出してるのを黒柳が発見した。
それ以来余計に黒柳のチェックが厳しくなった。

まあ俺にしてみりゃ何もやましい事はしてねぇからいつも気にならねぇけど。


「こ…これは…!!」

「あ?」

キッチンに入った黒柳が何かに気付いた?
そんな気になるようなもんあったか?

「何だよ?」

後ろから声を掛けると黒柳の奴が引き攣った顔してやがる。

「レンジ…」
「ん?」
「あなた恋人…変わったの?って言うかいつ別れたの?」
「は?」
「確か前付き合ってたのってどっかの服屋の女性だったわよね?スタイリストからの紹介の?」
「ああ…」
「でも今までこんな事なかったわ。その子がこんな事する様な性格じゃないのもわかってるし。」
「だから何だよ?何かあったか?」
「このキッチンよっ!!」
「は?」
「いつの間にこんなに食器やら調理器具やら…出窓にレースのカーテンまで掛かって!
観葉植物なんて置いてあるし!明らかに前付き合ってた女性とは違うわよね?」

俺も3日間の泊りがけのロケから帰って驚いた。
智鶴がチョッとずつ揃えたんだろう。

「ああ…美佐とは別れて今は他の女と付き合ってる。」
「なっ…」
「何だよ?別にそう言うのは今まで俺の勝手にさせてるじゃねーか?恋愛まで口出さねぇって。」
「そうだけどね…流石にレンジの選ぶ相手には嫌気が差してるのよ!」
「は?」
「毎回毎回はなもちならない高ビーな女ばっかり選んで!もう少し自分の好み考えなさい!
何でいっつも長続きしない様な相手選ぶの?あんたはっ!」
「惇と同じ事言うんじゃねーよ。」
「ほら見なさいよ!惇哉くんだってそう思ってるんじゃない!
もうレンジが振り回されんの見てられないから。今回は私口挟むわよ。」
「ああ?黒柳には関係ねーだろ?」
「どう見てもレンジに釣り合わない女なら事務所として反対するから。」
「ふざけんじゃねー!誰が納得するか!」
「今までの自分の女を見る目の無さを反省しなさい。レンジ!」
「うるせぇ!!」
「で?彼女はどんな相手なの?」
「………普通のOLだ。」
「へぇ…今日会うの?」
「ああ…もう直ぐ駅まで迎えに行く。」

駅に着いたら連絡が来る事になってる。

「そう。楽しみだわ。」

「…………」

コイツ…はなっから反対するつもりだな…ったく…
まあ反対されたって俺は智鶴と別れる気なんてねぇけどな!

「なに?その自信たっぷりな顔は?」
「自信たっぷりなんだろう。」

お互い担当してる俳優とマネージャーとは思えない睨み合いだ。

ガチャ ガチャ!!

「!!」

そんな時玄関から鍵の開ける音がした…智鶴か?
連絡するって言ってたのに…



「はぁ……けほっ…はぁ…はぁ…」

玄関を開けたら靴があった。

レンジさん本当に帰って来たんだ!

レンジさんに会える嬉しさで私はその隣にあったヒールの靴は視界に入らずに
慌てて靴を脱いでリビングに急ぐ。

10日ぶり……10日も会えなかった…でもやっと会える!!!

「はぁ…はぁ…お帰りなさ…」

あれ?飛び込んだリビングにレンジさんはいない…どこだろう?
寝室?もしかして疲れて寝てるのかしら?

とりあえず来る途中で買って来た夕飯の食材を置こうとキッチンに入ると…

「あ…レンジさん…」

目の前にレンジさんがいた…
私は嬉しくてその場に持ってた買い物袋をドサリと落とした。

「智鶴。」

レンジさんが私の名前を呼んだ。

「お帰りなさい!!レンジさん!!!」

会いたかったです!!!

私の目にはレンジさんしか映ってなくて…ホンの数メートルを全力疾走に近い勢いで走った。
と思う…って言うかそれくらい私は嬉しかったから!!

「レンジさん!!!!」

きっともの凄い勢いだと思うのにレンジさんは微動だにもせず
私をしっかりと受け止めてくれた!!うれしい〜〜〜♪

私はレンジさんにぎゅう〜〜っとしがみ付く。
はぁ〜〜レンジさんの温もり…レンジさんの逞しい身体…レンジさんの…とにかく一杯!!

見上げたらレンジさんが優しい眼差しで私を見下ろしてくれてる…
夢じゃないわよね…これ現実よね?

「はぁ…はぁ…本当に…レンジさんですか?」
「本当に俺だ。駅に着いたら連絡しろって言っただろうが。」
「だって…」

そう言ってレンジさんが私の火照った頬を優しく撫でてくれる…
はぁ〜〜〜レンジさんの手だ〜〜〜♪

もうこのまま倒れそうです〜〜〜安心して……

「はぁ…はぁ〜〜〜〜」

何とか息を整える…

「また走って来たのか?」
「だって…少しでも早く…レンジさんに…会いたかったから……」

そう言って見上げた智鶴はうっすらと額に汗を掻いてピンクの唇と頬に肩で息して…
俺に会いたい為に走って来たのか…

まったく…なんでそんなに健気なことすんだ…智鶴!!
黒柳がいようが関係ねー!!今智鶴の唇を奪いたい!!!


そう言いながら見上げたらレンジさんの顔がゆっくりと近付いて来た……

これって…これって…10日ぶりの…レンジさんとのキス……


「ん・んーーーーーーっっ!!!!」


「……え?」

どこからか…咳払いが聞こえて……って…
私達と反対側に黒ずくめの誰かがいた!!!

「だっ…誰ですか!!!え?…ま…まさか!!」

思わずレンジさんにしがみ付く。

「きゃあーーーー!!どどどど…どろぼーーーっっ!!
   けっ…警察!!!レレレ…レンジさん!!で…電話!!」

もう私はパニック!!

「誰がどろぼうですか!良く見なさい!」

「へ?」


そう言ったその人の声は………女の人の声?





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