Love You !



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『知り合ったのはお互い1人で飲んでて偶然隣同士で…』
『彼女とは結婚を前提に付き合ってます。』
『そうですね。なるべく近いうちにとは思ってますけど。』

「はぁ〜〜〜」

私はテーブルに頬杖を着いて再生されてるテレビ画面を頬杖をつきながら眺めてる。

もう何度見たのかしら…レンジさんの記者会見…
堂々と私との事を説明してくれて…レンジさん自身も仲村さんの事を否定してくれたし…
後で仲村さんのお父さんもちゃんと謝ってくれて…

私はその時レンジさんには申し訳ない事してたんだけど…
もう…その事は十分反省したし…レンジさんも忘れろって言ってくれたから…

「はぁ〜〜それにしてもレンジさん素敵だな〜 ♪ 」

テレビの画面に映るレンジさんはきっちりスーツを着こなして…
マスコミの人達の質問になんの迷いも無く即答で答えてる…
レンジさんの場合「イケメン」と言うよりは「男前」って言う言葉が似合うと思う…

でも自分達の事をこんな風に話してるのよね…何だか変な感じ…
にしても…

「やっぱりレンジさん素敵…」

私は見る度に同じセリフを繰り返してる。

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

緩んだ顔でテレビの画面を見入ってた私の携帯が鳴った。

『智鶴…俺だ。』
「はい…」

電話はレンジさんからだった…今日待ち合わせをしてて…

『もうすぐ着く。』
「はい。わかりました。すぐ出れる様にしておきます。」

そう言って電話を切ると見てたDVDをデッキから取り出してテレビの電源を切る。
バタバタと支度をして戸締りを確認する。

「うん。大丈夫!戸締りOK!」

多分今日はレンジさんの所にお泊りする事になると思うから
戸締りもしっかりとした。


大通りの信号を左に曲がると智鶴の家はもう直ぐだ。
あの事件から1週間経った。

一緒に暮らそうと言った俺に智鶴は今の住んでる所の契約が来月切れるからと
直ぐに一緒に暮らす事を先延ばしにした…

最近俺も仕事が夜中まで掛かる日が続いて結局智鶴はあの後自分の家に帰っちまった。
だから今夜は俺の所に泊まる為に迎えに来たと言うわけだ。

まったく…何で素直に俺の所に来ないのか…何か問題でもあんのか?

『おめでとうレンジ。記者会見お疲れ様。くっくっ…』

ぶちっ!!

記者会見終了後一番に掛かって来た奴からの電話を出た瞬間切った。
きっと電話を切った後も携帯握り締めて肩を震わせて笑ってる惇の姿が浮かんだ。

「ったく!」

気のせいか…惇の奴と同じ道を辿ってる気がしなくもない…
それを奴は分かってて俺に電話を掛けてきたんじゃねーかと思った。

車を智鶴のマンションの前の道に停めると直ぐに智鶴が玄関から顔を出して
通路からオレの車を確かめた。
そのまま玄関のドアを閉めて階段を降りてくる。
エレベーターを待つより直接階段を下りた方が早い。
マンションの入口から智鶴が大きめのバックを持って出て来た。
あれじゃ一体何日分なんだ?1日か2日分じゃねーか?
ったく今夜とことん言い聞かせなきゃダメか。
そんな事を思いながら智鶴の所に行こうと車のドアを開けた時…

「!!」

「え?」

智鶴に男が近付いていきなり肩を掴んだ。

「野郎!」

俺は駆け出して智鶴の傍に向かう。
俺の目の前で智鶴に手を出すとはいい度胸じゃねーか!
どこのどいつだ!嫌って言う程後悔させてやる!!
まさか永井って野郎じゃねーだろうな?

「ちょっ…」
「智鶴!…っつ…イテテテテ!!!」

後から智鶴の肩を掴んでる腕を掴んで男の背中まで捻って引き上げた。

「ふざけた事してんじゃねーぞこの野郎…テメェ誰だ?」
「イタタタ…」

顔はあの永井って野郎でも昔付き合ってた野郎でもない。

「あ…あのレンジさん!」
「警察突き出してやる。智鶴警察呼べ。」
「あの…」
「イタタタ…離せ!何が警察だ!逆にこっちが警察呼んでやる!」
「あぁ?ふざけた事言ってんじゃねーぞ!テメェ自分の今置かれてる状況わかってんのか?
この変質者野郎が!」

捻り上げてる野郎の腕を更に捻り上げた。

「アイタタタタ!!」
「レ…レンジさん…」
「ほら見ろ!こうやってすぐ暴力に出る様な奴なんだぞ!智鶴目を覚ませ!」
「何ほざいてやがる!人の女の名前勝手に呼んでんじゃねー!腕へし折ってやる!」
「わーー!!バカ!やめろ!!」
「誰がバカだ!テメェだろ!」

ギシギシと捻り上げていく。

「イテテテテ!!ギャーーっっ!!マジ腕折れるっ!!!」

「だからそのつもりだって言ってんだろうが!」

あんな事があった後で俺は余計神経を逆なでされた。
マジ折ってやろうかと頭を過ぎる。

「ダ…ダメです!!レンジさん!!やめて下さい!!」

智鶴が俺の腕にしがみ付いたがそれでも俺は野郎の腕を離そうとはしない。

「お兄ちゃんもレンジさんに謝って!!」

「!?」

は?今…智鶴は何て言った?
お兄…ちゃん?お兄ちゃんって言ったか?
お兄ちゃんってあのお兄ちゃんか?「兄」「妹」のお兄ちゃんか?

「誰がこんな奴に謝るかーーーーっっ!!この暴力男っっ!!!」




「……いたたた…」

「…………」

推定智鶴の兄貴が俺が捻り上げた腕の方の肩をさっきからずっと擦り続けてる。
まあ折ってやろうと思うほど捻りあげてたから相当痛かった筈…

そんな事を考えながら俺は何気にヒヤヒヤしてなくもない。
なんせ本当にこの野郎が智鶴の兄貴だったらちょっと具合の悪い事になりそうだからだ。

「智鶴。」
「はい。」
「この野郎は本当に智鶴の兄貴なのか?」
「はい…本当に兄です…ごめんなさい…」
「人の妹を呼び捨てにするな!それに何で謝るんだ!智鶴!」
「だって…お兄ちゃんがレンジさんの事怒らせるから…」
「怒ってるのは僕の方だろ!!いきなり腕の骨折られる所だったんだぞ!」
「なああんた…」
「………なんだ?」

俺が呼びかけたのが気に入らないらしい…とんでもなく嫌な顔された。

「免許証とか何か身分証明する物持ってねぇのか?」

「はあ?」
「何か証明出来る物見ねぇ事には納得できねぇ…」
「失礼な奴だなあんた!!」

顔は…なんとなく智鶴に似てなくもない…ちょっと頼りなさげの文化系タイプ。
背は俺よりは低くて痩せてるわけでも無いがガタイが良いとは言えない。
智鶴が兄貴と言うんだからそうなんだろうがどうも自分としては納得がいかねぇ…
ちゃんとした実証が欲しい。

「ほらっ!ありがたく拝見しろ!」

「!!」

目の前に印籠の様に差し出された。
カチンと来たが今は我慢してやる。

渡された免許証には 「 小笠原 敦(tutomu) 」 と名前があった。
歳は俺より2つ上…

「本物か?」
「偽造の免許証なんて持ってない!まったく!なんて疑り深い奴なんだ…」

ブツブツと文句を言う奴に免許証を返した。

「智鶴!」

今度は智鶴に向き直って上から目線の兄貴口調だ。

「な…なに?」
「これは一体どう言う事なんだい?」
「何の事?」
「何の事じゃない!お兄ちゃんに内緒でこれは一体どう言う事なのかって聞いてるんだ!」
「内緒って…別に内緒にしてたわけじゃ…」

「お兄ちゃんは反対だからね!」

「え?」

「!!」

「こんな何処の馬の骨とも分からない様な男に智鶴を渡さない!!」


いきなり現れた自称智鶴の兄貴…

俺の事を「何処の馬の骨とも分からない男」なんてほざきやがった。

これでも役者で飯食ってんだけどな!

何処が分からないんだか…俺の方がわからねぇって言うんだよ!!





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