Love You !



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「星崎さんが 「オレが良いよって電話するまで絶対誰からの電話も出ないでね」 って言ったから…」

俺と智鶴と智鶴の兄貴は3人でリビングのソファに座って智鶴が淹れたコーヒーを飲んでる。

何とか今までのゴタゴタも落ち着いて今日の智鶴と智鶴の兄貴の友達と言う
 「星崎」 って野郎との事を智鶴から聞いてるってわけだ。

智鶴の兄貴の話も合わせるとどうやら智鶴には何もしてないと言う事は
事実らしいから俺はホッと胸を撫で下ろした。
それは智鶴の兄貴も同じらしかった。

「だからって俺の電話にも出ないってのはおかしいだろう?」
「だって…」
「だって?」
「星崎さんが…お兄ちゃんを懲らしめるから絶対に誰とも連絡取っちゃダメだよって言ったから…」
「…………」

まあ…智鶴の兄貴にお灸をすえるって言うのには賛成だが…
その…俺からの電話も出るなって言うのは何だかしっくりこないが…
まあもう今更で何となくそれで全てが上手くいったみたいで…まあ良しとするか。

「お兄ちゃんと別れてすぐにタクシーに乗ったんですけどほんの数十メートル先の
角を曲がったらタクシーを止めてすぐに星崎さんは降りちゃったんです。」




「あの…」

タクシーを降りた星崎さんを私はタクシーに乗ったまま見上げた。

「これで小笠原の奴オレと智鶴ちゃん2人で出掛けたと思うだろ。」
「星崎さん?」
「いい?智鶴ちゃん。この後誰とも連絡取っちゃダメだよ。」
「え?」
「2人でどっかにしけ込んでるって思わせなきゃいけないから。」
「しけ…込んでる?」
「2人で楽しい時間過ごしてるって君の兄貴に思わせなきゃいけないからさ。」
「はあ…」
「頃合を見計らってオレが小笠原に連絡入れとくから。その後に智鶴ちゃんに
もう居留守使わなくても良いって連絡入れるからそしたらもう普通にしていいからさ。」
「それで…大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫 ♪ まあ後はオレの演技力に掛かってるけど任せなさいって ♪ 
これで二度と他の男とくっ付けようなんて思わない様にしてあげるからさ ♪ 」
「そんな事できるんですか?」
「出来る出来る!とにかくオレに任せて。智鶴ちゃんは彼氏の部屋にでも隠れてなよ。
彼氏の部屋の鍵持ってるだろ?」
「はい。持ってますけど…」
「携帯の電源は入れといてね。オレから連絡するから。
それに呼び出しても出ないって方が心配感が増すだろ?」
「そ…そうなんですか?」
「そう。いつ出るんだろう次のコールかな?次かな?なんてさ ♪ 」


……まさにその通りだったよ…ったく…まんまと嵌ったわけだ…俺は!


「それでレンジさんから電話が掛かってくる少し前にもう良いよって連絡があって…」
「はあ…まったく星崎の奴…」

まったくはこっちだっての!!
智鶴の兄貴を呆れた眼差しで見てたが気付きやしねぇ…

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

「ん?………あ″っ!」

お兄ちゃんが掛かって来た電話の相手を見てそんな驚きの声を上げた。

「どうしたの?出ないの?」
「え?ああ……」
「お兄ちゃん?」

それでも出ようとしない。

「いや……」

そんな変な態度でやっと電話に出た。

「……はい?」

『一体何処で何してるのーー!あんたはーーー!!!』

「…いっ!」

「!!」 「!!」

耳に当てなくても聞こえるくらいの大きな声が携帯から聞こえた。



「初めまして。椚 聡美 (kunugi satomi) です。」

「はあ…初めまして…」

お兄ちゃんに掛かって来た電話の相手はこの女の人だった。
あの電話の後お兄ちゃんに会いに来たと言うのでレンジさんの部屋に来てもらったんだけど…
短めな髪でクリッとした目に活発そうな感じ…それに綺麗…

「やぁ〜ん ♪ 本物の鏡レンジさんだわ〜やっぱりカッコイイわよね〜 ♪ 」

もうさっきからレンジさんにニコニコ…

「どうも…」
「お兄ちゃんこちらの方は?」
「えっ!?あーその…」

「私達付き合ってるんです。」

「え!?」 「 !! 」

初めて聞いた…

「お兄ちゃんお付き合いしてる人いたの?」
「うーん……まぁ…」
「やっぱり誰にも話してないのね!」
「なかなか話すチャンスが無くてね…」
「じゃあ妹さんの事言えないじゃない。」
「??」

「私達付き合ってる…って言うかもう一緒に暮らしてるの。」

「ええっっ!!お兄ちゃん本当?」
「え?あーうん。」
「それで良く俺達の事あーだこーだ言えたな。」
「男と女は違うし妹はもっと違う。」
「ものは言いようだな。フッ…」
「笑うな。」
「私達前同じ支店にいたの。今は私が別な支店に転勤になったんだけど
まだ2人とも通える距離だから一緒に暮らしてるってわけ。」
「お付き合いしてどのくらいなんですか?」
「えっと…半年くらいかしら?一緒に暮らし始めたのは付き合って1ヶ月くらい経ってからかしら?ね!」
「そうだったかな…」
「で?敦さんは何でここにいるの?」
「え!?」
「あれほど勝手に行っちゃダメって私言ったわよね。」
「………」
「絶対妹さんに迷惑掛けるんだからって。なのに人が仕事で留守にしてる間に…
この時を狙ったんでしょ?きっと迷惑掛けたんじゃない?智鶴さん。?」

いきなり私に振り返って聞かれたから…でも何て答えたら…

「え?あ…」

正直に話したらお兄ちゃん聡美さんに怒られちゃう?

「お察しの通りだ。」

「!!」

レンジさーーん!そんなあっさりと言っちゃうんですか!?

「やっぱり…」
「心配で…じっとしてられなかったんだから仕方ないじゃないか…」
「あ…あのお兄ちゃんは本当に私の事心配してくれて…あの…」
「ありがとう智鶴さん。でもその慌てぶり…やっぱり何か迷惑掛けたのね。」
「……え?」

ひゃ〜余計お兄ちゃんの立場悪くなっちゃったのかしら??

「あの…」
「言っちゃなんですけど妹さんの前に自分の事先にしてよね。いつご両親に紹介してもらえるのかしら?
智鶴さんはご両親には鏡さんとお付き合いしてる事ちゃんと話してたのよ。」
「だから…早いうちに話すつもりだよ。」

「じゃあ今から行きましょうよ。」

「え″っ!?」 「え?」

お兄ちゃんが驚いて私も驚いた。

「な…今から?」
「だって2人で休みなんて滅多にないわよ。ちゃんとご両親に紹介してよ。
結婚前提で付き合ってるって。それにもうこの2人の事は認めたんでしょ?」
「………完全に認めたわけじゃ…」
「往生際が悪りぃな。」

そんなお兄ちゃんを見てレンジさんがボソリと呟く。

「うるさいよ。」
「鏡さんの言う通りよ。いい加減諦めなさいよ。
それで本当に2人の仲がこじれてもあなたそれでいいの?」
「………」
「さ!善は急げって言うでしょ!行くわよ敦さん!」

お兄ちゃんの答えを待たずに聡美さんが立ち上がる。
もしかして結構せっかちなのかしら…この人…なんて思った。

でも…なんとなくお兄ちゃんにはお似合いな様な気がした…

「本当に?」
「本当よ!何?嫌なの?」
「そ…そんな事無いよ。」
「じゃあ決まりね。お2人共お騒がせしました。」
「あ…でもお兄ちゃん荷物が…」
「ああ!そうか…智鶴の部屋に荷物置きっぱなしだった。」
「じゃあ私も一緒に行くから。レンジさんすみません。
そう言う訳ですので今日は私自分の部屋に帰ります。」
「あぁ?」

ちょっと待て!

「あ!これお弁当です。レンジさんもこれからお仕事頑張って下さいね!」
「オイ…智鶴…」
「今日は仕方ないので諦めます。またお仕事が無い時連絡下さい。お料理作って待ってますから。」

オイオイ…マジでそう思ってるのか?ウソだろ…
あの流れでいったら今夜は俺の所に泊まるのが普通だろ?

「2人を見送ったら戻って来ればいいだろ?」

そうだよ…何もそのままいなくたってこっちに戻って来れば…

「いえ…ちょっと用事もあるので…自分の家に戻ります。」
「…………」

チラリとお兄ちゃん達を見ると2人で何か話してたから…

「レンジさん。」
「?」

智鶴が兄貴達を気にしながら小さな声で俺を手招きする。

「ん?」

なにか話があるのかと思ってちょっと身体を屈めた。

「ちゅっ!」

「!」

智鶴が素早く俺の頬にキスをした。

「…………」

「ふふ…」

智鶴がハニカミながらニッコリと笑う…何だよ…その顔は……可愛いじゃねーか!!
しかも頬にいきなりキスって…不意打ちで…智鶴の柔らかい唇が触れて…
くすぐったかったが……すげぇドキドキするじゃねーか!!

「………」
「レンジさん?」

レンジさんの頬にキスしたらレンジさんが急に自分の口を手で押さえて横を向いちゃった。
どうして?頬にキス…いけなかったかしら?

「レンジさん?」
「…………」
「頬にキスなんて子供っぽくてイヤでした?」

私にはしてくれるけどそうよね…レンジさんは男の人だものね…
しかもレンジさんですもん…イヤだったかも…

「いや……そんな事ねぇ…」

むしろいきなりのストレートパンチでKOされた気分だ。

「そうですか?」
「ああ…」
「良かった ♪ 」

またとびきりの笑顔で智鶴が笑うから本当ならこのままここで智鶴を抱きたいくらいだった。

そんな気持ちを抑えるのにどれだけ苦労したかなんて…

その後あっさり兄貴達と部屋を出てった智鶴にはわかんねぇだろうな……


なあ智鶴…次に会える時を楽しみにしてる…覚悟しとけよ…

なんて事を心の奥底で決意してるなんてこれっぽちも顔に出さずに俺は智鶴達を見送った。





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