Love You !



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「は…初めまして!小笠原智鶴と申します!!」


レンジさんのドラマの撮影も終わり前々から約束してたレンジさんのご両親への挨拶…

私は玄関に入るなり目の前に並ぶレンジさんのお義父様とお義母様に
ぶん!と音が聞こえそうな程思いきり頭を下げた。

「いらっしゃい。こんな所で立ち話も何だから上がって。」

優しい笑顔でそうお義母様が言ってくれた。

「ああ…」

レンジさんがそう返事をするとお義父様もお義母様も奥の部屋に向かって歩き出した。
レンジさんが靴を脱いで玄関から上がると多分見た目でも私が舞い上がってたのが
わかったんだろうと思う…レンジさんがポムポムと私の頭を撫でた。

「緊張すんな。そんな心配する様な親じゃねーから。」
「……で…でも…」
「智鶴なら大丈夫だ。」
「そ…そうですか?」
「ああ…」

レンジさんのそんな言葉で私はちょっと安心する。

でも本当に私のこと受け入れてもらえるのかしら…結婚も許してもらえるのかしら…

そんなこんなで頭の中はパニック状態!
でも…今日は絶対に失敗できないの!!頑張れ私!!


「俺が話すから智鶴は何も心配するな。わかったか?」

そう言って私の顔を覗き込んでくすりと笑うレンジさん。

「何なら他のことして気を逸らさせてやろうか?智鶴。」

「はい?」

そう言ってあのいつものいつもじゃない笑顔を私に寄越す。

「な…だっ…ダメです!!変な事したら怒りますよ!
レンジさんのご両親に誤解されたらどうするんで…ひゃん!!」

そんな事を言ってたらレンジさんに軽くハナを摘まれた。

「仲がいいって事でいいじゃねーか。」
「もう…本当にダメです!!」

一体どんな事するつもりだったのかわからないけど…
なんとなく想像が出来て先に釘を刺す。

「わかったわかった。」

そんな事を言いながらレンジさんがクスクスと笑ってる。

もう…役者さんだからか度胸が良いと言うか撮影とかでこんな緊張に慣れているのか…
それともレンジさんだからか…何でそんなに落ち着いてるんですか?1人だけズルイです!!

私なんて実は数日前からドキドキしてるのに…

通された居間に座卓を挟んでご両親と向かい合って座る。
私は小さい身体を更に小さくして大人しく座ってた。

チラリと見たお義父様は細い黒縁のメガネを掛けてて…
そう…レンジさんがちょっと前までやってたドラマの役に雰囲気が似てる…
と言う事はレンジさんはお義父様似ってこと?

お義母様はショートな髪の毛に全体的に細身な身体…
痩せてるって訳じゃなくて…スリムって感じがする…

2人共話しやすそうな…優しい感じ…


「そんなに緊張しなくても…肩の力を抜きなさい。」
「…はい…ありがとうございます…」
「そうよ智鶴さん。そんなに気が張ってたら疲れるわよ。」

そう言って目の前にお茶が置かれた。

「はい…」

私はもう緊張で喉がカラカラだったけどお茶を飲む事も頭から抜けてた。

「まあ大体の事は漣迩の話と記者会見でわかったし…ところで智鶴さん。」

「は…はい?」

お義父様が腕を組んで私の顔を覗き込む。

「本当にこんな男でいいのかい?」

「は…い!?」

いきなり何を聞かれたのかわからなくて…

「??????…えっと…」

「親父…どんな質問だ?ふざけてんのか?」
「大事な事だろ!智鶴さん。」
「はっ…はい!!」

思わず背筋が伸びる。

「コイツに脅されてるんじゃないのかい?」
「え?」
「結婚しなけりゃどうなるかわかってるか?とか親を人質に取られてるとか?」
「…え?あの…」

言ってる意味がわからないんですけど??

「お〜や〜じ〜!!!んなワケあるはずねぇだろーがっ!阿呆かっ!!」

「!!」

きゃ〜〜〜レンジさん!!お義父様にむ…向かって 「阿呆か」 なんて!!
穏便に終わらせる作戦が!!

「レ…レンジさん!!」

「だって…ねぇ…」

お義母様まで!!

「昔の漣迩見てたらこんな可愛い娘さんを捕まえるなんて…もっとこう…
元あちらです…みたいな方だったら納得するんですけど…智鶴さんそんな風には見えないし…」

「え?」

私が…?元あちらさん?って??………元ヤンキーさんって事ですか!?

「ぶっ!!!」

「!!」

レンジさんが盛大に吹いた!やだ!何想像してるんですか!!

「あ…あの…わ…私はごく…普通の…どっちかって言うと…目立たない…いや…ちがくて…」

って…わ〜〜〜ん!!一体なに言ってるのかしら??私??

「まあ…漣迩は昔から女の子には優しかったからな…こんな可愛い娘さんを放っておけなかったか?」
「え?」
「見た目こんなんだけど年下の女の子には人気があったのよ。」
「いつの頃の話をしてる?」
「え?あなたが小学校3・4年の頃?5・6年になると同級生の女の子に慕われたかしらね?」
「あのな…」
「でもその頃から目つき悪くなるし…見た目も近寄りがたくなっちゃって…
普通の女の子は近付いて来なくなっちゃったのよね…はぁ〜どうしてあんな風になっちゃったのかしら…」
「変に気が強かったからか?それに変な所で真面目だったしな…
何かあの頃あったか?漣迩?」
「今更そんな事を今この状況で本人に聞くな。別に何もねぇよ…自分がしたい様にしてただけだ。」
「そう?結構私なんてハラハラしてたのよ…毎日生傷が耐えなくて…」
「知るかよ。勝手に相手が俺に絡んで来たから相手をしたまでだ。 「売られた喧嘩は買う」 それだけだ。
親父だって剣道で試合申し込まれたら受けるだろ?それと同じじゃねーか。」

お…同じなんですか??レンジさん!?

「え?剣道って?」

「ああ…私は昔から剣道やっててね。平日の夕方からとか土日だけ地域や学校で剣道教えてるんだよ。」
「え?そうなんですか?」
「だから漣迩も最初はやらせてたんだがね…いつの間にかやらなくなったな…」
「道具使うより素手でやりあう方が手っ取り早かったからだ。」
「え?」

そう言う問題なんですか?レンジさん!?

「まったくお前ときたら…」
「変な真っ直ぐさは受け継いじゃったのよね…それで真面目だったら良かったのに…」

お義母様ががっくりと肩を落とす。

「昔だろ?高校の頃は何も迷惑掛けてねぇだろう。補導もされなかったしな。」

「 !! 」

ええーーーー!?補導とかされちゃってたんですか??レンジさん!?

「その度に私が根性叩き直してやったからだろ?」
「ああ…防具無しで散々ド突き回されたな。お蔭で喧嘩じゃ軽い怪我だったのが
親父のせいで痣だらけだった。」
「あら…あれって喧嘩の痣じゃ無かったの?」
「当たり前だ!そんなドジするか。」
「………」

ですからレンジさん…お義母様にそんな口の利き方…
もう私はさっき以上に心臓がドキドキのハラハラで…

「でも…そんなお前が結婚か…智鶴さん本当にコイツでいいのかい?」

今度はとっても優しい眼差しで私を見てる…お義母様もにっこりと微笑んで私が答えるのを待ってる…

「はい…あの…私……」

チラリとレンジさんを見るとやっぱり優しい眼差しで私を見ててくれてる…

「レンジさんと出会えて本当に良かったと思ってます…これからもずっと…レンジさんと一緒にいたいと思ってます。」

良かった…ちゃんと言えた…
ずっと前から心の中で練習してた言葉…聞かれたら絶対ちゃんと言おうと思ってたから…

「そう…漣迩の事よろしく頼むね。ガサツな所もあるけど根は優しい男だから…」

「は…はい!こちらこそ至らない所も沢山あると思いますが…宜しくお願いします。」

今度は畳に指を着いて思い切り頭を下げた。

「オイ!!」
「あ!」「ま!」

え?何ですか??
私は頭を下げながら3人の声を聞いて不思議におも…

ゴ ン ッ ☆ ☆ ☆

「…☆…ぎゃん!!」

額にウソみたいな衝撃が走った!!

「………うぅ〜〜〜!!!」

私は額を押さえてうずくまる。

「智鶴!?大丈夫か?」

レンジさんがうずくまってる私の身体を抱き起こしてくれた。
私はもう何が何だか…痛みと目の前がチカチカと…何?一体何が起こったの??

「タオル濡らして来ますね。」
「智鶴さん大丈夫かい?ああ〜赤くなって…タンコブ出来てるんじゃないか?今湿布持って来る。」

そう言ってお義父様もお義母様もワタワタと席を立ってしまった。

どうやら私は間抜けな事に…座卓の縁に思いきり額をぶつけたらしい。
もう…情けなくなる…

「あ…そ…そんな…これくらい大丈夫です!」
「大丈夫じゃねぇだろ…腫れてるぞ。」
「そ…そんなにですか?」
「結構…」

言いながらレンジさんが私の前髪を手の平でどかす。
ちょっと触れられただけなのにジンジンと額が痛み出した。

「……う〜〜…」
「痛いか?」
「は…い……今頃ズキズキしてきました…」

ホント結構な痛みが襲って来て…じんわりと涙が浮かぶ…

「骨には異常無いと思うけどな…ああ…やっぱ腫れてきたな…」
「………ごめんなさい…」
「ん?」
「私…こんな大事な時に…ドジな事ばっかりで…きっとレンジさんのご両親も呆れちゃいましたよね…」
「智鶴…」
「…………」

ああ…もう…穴があったら入りたいくらい…

「 ちゅっ… 」

「 !!……レンジさん!? 」

レンジさんが腫れてる額に…優しく触れるだけのキスをしてくれた…

「って…ダメですよ!ご両親が…」
「痛々しくてみてらんねぇんだよ…それに今は2人共いねぇし。」
「そう言う問題じゃ…あ…やぁ…」

ガッシリとレンジさんの両手に顔を挟まれて腫れてる額に何度もキスをされてたかと思ったら
最後は舌の先でペロンと舐められた。

「消毒。」
「もっ…レンジさん!!」

ぽかぽかとレンジさんの胸を叩く。
痛いのもどこかに行っちゃって…ってそれどころじゃ…

「大丈夫?はい…タオル絞ってきたからこれで冷やして。」

「は…はい!ありがとうございます!!」

私はレンジさんの両手を自分の顔から引き離した。
レンジさんも流石にわかったのかなんの抵抗も無く素直に私の顔から手を離してくれた。

良かった…

だって…これ以上ご両親に恥ずかしい所なんて見せられないもの…





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