Love You !



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何事も無く仕事も終わり1日が無事に終わって帰りは1人で電車で帰って来た。
レンジさんは今日最終回のドラマの打ち上げで今は家にいない…
私は簡単に夕飯を済ませてお風呂に入る…

レンジさんが仕事でいない時と同じはずなのに…今日は何でだか落ち着かない…
ううん…理由はわかってる……朝レンジさんが言ってた…

ソワソワとしながら時間を待つ。
ドラマの開始時間5分前にはコーヒーを持ってソファに座って準備OK!
って何でこんなに舞い上がって…

「はあ……」

本当はちょっと不安…
今までレンジさんとお付き合いする前は…レンジさんのドラマは見たり見なかったり…
でも今は欠かさずちゃんと見てる。

それに…今までそんなラブシーンなんて無かったと思うのに…
何で私とお付き合いしだした途端そんなシーンがあるのかしら…

「………」

でも…それがレンジさんのお仕事だから…

「しっかりしなくちゃ!!!しっかりしろ!私!!!」

ペチペチと両手で頬を叩く。

「はっ!」

そんな事を悩んでるうちにドラマが始まっちゃった!
先週のラストからの放送…レンジさん扮する五島(gotou)さんが海外に転勤が決まった所…
今まで反発してた兎束(totuka)さん扮する木梨さんが五島さんを好きだって気付いて
本当はその気持ちを伝えたいのに最後の最後まで言えない…
でもそんな木梨さんに五島さんが逆に告白する。

綺麗な夜景がバックに映る臨海公園…

私は膝の上に置かれてる自分の両手を無意識にぎゅっと握りしめてた…
一緒に握りしめたパジャマのズボンがシワシワになるくらい…

『オレが戻って来るまでちゃんと待ってろよ。』
『何よ!その上から目線!誰が待っててなんか…!!』

あ……

『ん…』

一応心の準備はしてたのに…いきなり目の前で2人の唇が重なり合う場面が飛び込んで来た…
ただ…唇が触れるだけのキス…ほんの数秒の時間…

『いい加減素直になれっての。』

そう言って彼女を抱きしめる。

『な…何よ…いきなり…』
『好きだ…』

トクンと胸が鳴った…

『なに…よ…』

レンジさんの胸に彼女が顔をうずめながら嬉しそうに微笑んでる…

『愛してる…』

ズキン!と胸が動いて…その後は変な熱さが込み上げて来る…

─── アイシテル ───

その後はまた2人のキスが映し出された…
さっきよりも…長い…時間のキス……

その後もその後の2人の生活が映されて…
この後には幸せな2人の生活が待ってる…って言うのを思わせるエンディングだった…


主題歌が流れて…CMが始まって……次週から始まる新しいドラマの紹介も流れて…
その後…次の番組のニュース番組が始まっても…私はソファに座ったままだった…

確かにキスは…普通のキスで…激しいとか…そんなのは無かった…
お話だって最終回に相応しい展開だったし……

あのシーンの撮影は…いつしたんだろう……

その後…レンジさんは…私と…キスをしたのかな?
その時…どう思ったんだろう……唇の感触が違うとか…そんな事思ってたのかも…

「そ…そんなこと…レンジさんが思うわけ……」

─── アイシテル ───

その言葉が…私の頭の中でレンジさんの声で繰り返される…

そう言えば…レンジさんに 『愛してる』 って言ってもらったのって…
あの時1度だけ……

結婚しようって言われた時…

「そう言えば最近 「好きだ」 って言うのも言ってくれてない…」

良く釣った魚に餌はやらない…なんて聞くけどレンジさんもそうなのかしら?

結婚も決まって…お互いの親にも許してもらって…一緒に暮らすようになって…
もう私が結婚をやめるなんて事が無いって…確信できたから?

確かに結婚をやめるなんてコレっぽっちも思ってないけど…

「やーーーー私…一体何考えてるの!!!」

やだ…きっとさっきのドラマのせい!!!
あれは演技!!演技なのよ!!!仕事!撮影なの!!!

さっきの映像を自分の中で上手く受け止められないから何だか変な考えが頭の中に浮かんできちゃった!!

だめーーーー!!ダメよ!!私!!!問題をすり替えちゃいけないわ!!

「…………」

でも……やっぱり…ちょっと…

「………」

レンジさんの声が聞きたいな…
バックから携帯を取り出してじっと携帯を見つめる。

「でも…せっかくスタッフの人達と楽しんでるのに…水差したら悪いかな…」

別に用事なんて無いし…ただレンジさんの声が聞きたいだけだし…
あと数時間待てばレンジさんは帰って来るんだし…

私はそのまま携帯をバックにしまった。



カタン…と音がしてなんとなく目が覚めた。
レンジさん?寝ぼけた頭でそんな事思って…ショボショボした目で時計を見たら夜中の2時過ぎだった…

何度かドアの閉まる音がして足音が寝室に近付いてくる…
でもその足音は何だか頼りなさげな…ちょっと足を引きずる様な音…

キイ…と寝室のドアが開いて閉まると服を着替えてる気配がして…
私はまだ半分寝てる状態のままのベッドの中に着替え終わったレンジさんが入って来た。

「……レンジさん…?」

プンとお酒の匂いがして…何となく動きが鈍いレンジさんで…
察するに相当飲んでるんだな…って思った。

「レンジさん…大丈夫ですか?」

後ろから身体に腕を廻されて引き寄せられた。
そのままレンジさんの腕と胸の中にすっぽりと納まる。

いつもと同じ…
でも今日はいつも以上にレンジさんの身体が熱い気がする…

「………んー」
「お水…持って来ましょうか?」
「……いい……寝る……」
「そうですか?じゃあ…おやすみなさい…レンジさん…」
「ああ………」

そんな短い返事の後あっという間にレンジさんから寝息が聞こえて来た。

本当は少し話がしたかったけど酔ってるんじゃ仕方ないかな…
なんて思って私もそのまま目を瞑った。

私の身体に廻された腕に自分の腕も絡めて…手を繋いで…レンジさんの温もりを感じる。

朝…目が覚めれば今のこの気持ちもきっと落ち着く…

そしたらレンジさんに昨夜のドラマの話をちゃんとしよう…
とっても良いラストでした…って…きっと言えるもの……

ああ…でも…寝る前に…おやすみのキスをしたかったな……
なんてちょっと残念に思いながら私もまた眠りについた……




「なんだこりゃ?」


遅くなったドラマの打ち上げで昨夜遅くに酔って帰って起きたら昼近い今だ。

今日は土曜日で智鶴は休みのはずなのにリビングもキッチンも静まり返ってるところをみると
どうやら智鶴は今家にはいないらしい…

いつも智鶴が休みの時は俺がいつ起きてもメシの支度はしてあって智鶴は必ず家にいた…

なのにキッチンには何も無くテーブルの上に……セロリが1本だけ置いてあった。


「なんでセロリなんだ?」



俺は訳がわからないまま…

テーブルに置かれてるそのセロリをしばらく呆然と眺めてた……





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