Love You !



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「智鶴さん!」
「黒柳さん!!」

あの電話から20分後黒柳さんが私のいる喫茶店に現れた。

「お久しぶりです。お元気でした?」

相変わらずのハキハキとした声とキビキビした動きの黒柳さんが私の反対側のイスに腰掛ける。

「はい。黒柳さんもお元気そうでなによりです」
「元気だけが取り柄ですから」
「そんな…」
「で?一体何があったんですか?」

お互いの挨拶を終えてやって来た店員さんにコーヒーを注文すると何の躊躇もなく尋ねられた。
それが黒柳さんだった……

「あの……」
「言いにくい事かもしれませんが遠慮なく言って下さい!絶対お力になりますから」
「黒柳さん……」
「智鶴さん」

ニッコリと笑う黒柳さん……だから……今日あった事を話した。

「なっ…なんですって!!」
「レンジさんには何も聞けずに飛び出しちゃったんですけど……」
「………」
「黒柳さん?」

何だか黙って肩がプルプル震えて…る?

「あの野郎……」
「え?」

唸る様な黒柳さんの声だった。

「智鶴さん!」
「は…はい!」

急に名前を呼ばれて思わず思いきり返事をしちゃった。

「まずは真実を知りましょう!」
「はい?」
「ちょっと待ってて下さい」
「はい…」

そう言うと黒柳さんは携帯を取り出してどこかに掛けだした。

「あ!お疲れ様です黒柳です。いつもお世話になっております。
実はお伺いしたい事があるのですが…」
「………」

洩れてくる会話から察するに昨夜の打ち上げの事を聞いてるみたいだった。

「どうやら相手役の兎束(totuka)さんでは無いみたいですね。彼女は途中で帰ったそうです」
「はあ……」

わあ……流石マネージャーさん……色々繋がりがあるのね……

「最後までレンジと一緒にいた相手がわかると良いのですけどね」
「はい……」

いえもう黒柳さんにお任せします。
私は黒柳さんがテキパキと動いている姿にただただ感心してた。

それから10分ほどして黒柳さんの様子が急に変わった。

「え?それは……本当ですか?あ…はい…はい……わかりました。
そちらに連絡取ってみます。はい……失礼します」
「?」

何だろう?何だか今までの黒柳さんとはどこか違って見えて……
ソワソワと言うか何だか落ち着きが無い様な……?

「黒柳さん?」
「ど……どうしよう……」
「え?」

私は目の前の黒柳さんにちょっとびっくり……だって……だって……
焦って照れてはにかんだ様な感じになって……そんな黒柳さん見るの初めてで……

「黒柳さん?」
「あ…昨夜惇哉くん……『楠惇哉』 くんが最後までレンジと一緒にいたらしいから
彼に聞いてみるわね」
「え?楠惇哉さん……ですか?」

確かに楠さんはレンジさんとは仲がいいから事情を聞くには一番いいかも……

「はい……」

そう返事をしたものの明らかに黒柳さんの様子がおかしい…?

「……あ!惇哉くん?黒柳です。ご無沙汰してます……あの今大丈夫かしら?」
「…………」

何だか声のトーンがちょっと違う?それにとっとも嬉しそうに見えるのは気のせいかしら?

「実は昨夜の打ち上げの事なんですけど……レンジと最後まで一緒だったって伺ったもので……
その辺のお話聞かせて頂きたいのですが……え?あ…そんな!!お忙しいでしょ?
電話で大丈夫……え?あ……そんな……はい……わかりました」
「?」

見間違いじゃなければ黒柳さん頬が赤い?
そのあとここの場所を説明したり他にも何か話した後携帯を閉じた。

「はあ〜〜」

閉じた携帯を胸の前で両手で握りしめてる……

「……黒柳さん?」
「ハッ!あ…えっと惇哉くんが今ここに来てくれるそうです」
「え?楠さんがですか?」
「はい」
「……だ…大丈夫なんですか?」
「大丈夫だそうです」
「はあ……」
「……」

何だか2人でソワソワ……
私もあの時……週刊誌にレンジさんとの事が騒がれた時に助けてもらってから
お会いしてないけど……由貴さんお元気かな……
そう言えばあの2人ってとっても仲が良くて……
由貴さんは楠さんのラブシーンとかってどう受け止めてるのかな……



「こんにちは ♪」

電話を切ってから20分くらいして本当に楠さんが私達の前に現れた。

やって来た楠さんはサングラスを掛けただけでごくごく普通のラフな恰好でやって来た。
それでもやっぱり目をひくのは確かで…でも当の本人は全く気にかけていない様子……

「恭子さんお久しぶり ♪」
「お疲れ様です。スミマセンお忙しいのに……」

黒柳さんが席を立って頭を下げる。
私も席を立って頭を下げた。

「どう致しまして。やだな恭子さん仕事じゃないんだから。
それに恭子さんにも久しぶりに会いたかったってさっきも言ったでしょ?」
「そうですけど……」
「その事は気にしなくていいから ♪ 2人共座って」
「あの由貴さんはお元気ですか?」

まだそんなにお腹は目立ってなかったけど由貴さんは妊娠してたから直ぐに聞いちゃった。

「母子共々元気だよ。またお腹が大きくなったけどね」

楠さんがとっても嬉しそうに笑う。

「本当ですか?また由貴さんとお会いしたいです」
「今度レンジと2人で遊びに来るといいよ。ウチなら由貴も落ち着いて会えるし」
「はい是非!」

絶対遊びに行こうと心に決めた。

「で?昨夜の打ち上げの事って?」
「あ…あの惇哉くん昨夜最後までレンジと一緒だったかしら?」
「一緒だったよ。アイツ珍しく酔っ払っててさ。普段あそこまで飲まないのに
昨夜はどうしてだかベロベロになるまで飲んでた」
「そうですか……その時誰か女性が傍にいませんでしたか?」
「!!」

黒柳さんのその言葉にドキン!と胸が痛んだ。

「どうしてそんな事聞くの?」
「………」

黒柳さんはじっと楠さんを見つめる。

「ん?」

ちょっと首を傾げた楠さん……一瞬黒柳さんがピクンとなった気がする。

「レンジの浮気疑惑です!」
「!!」
「………」

黒柳さんがキッパリと言い切って私はドキン!となって楠さんは黙って黒柳さんを見つめてた。

「何かあったの?」
「レンジの服と身体に口紅が付いていたそうです」
「へえ……」
「なのでレンジと最後まで一緒だった惇哉くんなら何か知ってるかと……」
「…………」

しばらく黙ってた楠さんがごぞごぞと自分のズボンのポケットを弄ると携帯を取り出した。
何度かボタンを操作して私達の方に携帯を向ける。

「もしかしてこの子が関係してるのかも」

「 !!! 」
「なっ!!!」

私も黒柳さんもその携帯の画面から目が離せなかった。


楠さんの携帯に写ってた写真……

場所は何処だか分からないけど…眠ってるレンジさんと……

その眠ってるレンジさんの肩に頭を乗せてやっぱり眠ってる……

女の人との写真だった……







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