呼び出されて事務所のいつもの部屋に入ると腕を組んで仁王立ちしてる黒柳がいた。
「へえーー逃げ出さずに来たかい」
多分そうだろうと思ってたが……案の定もうキレてる……
なんで黒柳がキレてる?
「なんだよ」
何となくキレてる理由はわかるが……それがどうして黒柳が絡んで来るのかがわからねぇ……
智鶴が黒柳に相談したのか?
「あんな可愛い恋人がいて何が不満なんだい?」
「不満なんかねぇ」
あるわけがねぇ!!
「じゃあこれは?」
「あぁ?」
ビシリ!!と携帯を見せられた。
「!!」
な…なんであの写真が黒柳の携帯にあんだ??って……ああ!!
「惇の野郎か?」
「どこで見られてるかわからないわよね」
「チッ!余計な事を……」
「自分のした事を棚に上げて惇哉くんをなじるんじゃないよっ!!」
「俺は何もしてねぇ!!こんな女しらねぇし別に2人っきりだったわけじゃねぇ!!」
多分!
「じゃあ自分に口紅が付いてたのはどう説明するんだ!!この女のもんじゃないのかい!」
「………」
それは……否定できねぇのが何とも……
「フン!いい訳も出来ないって事はハッキリ否定できる自信が無いってことだろう?
いい加減認めろって言ってんだよ!」
「だから俺はこんな女知らねぇっつってんだろうがっ!!」
「じゃあなんでこんな写真が存在するんだよ!!シカトすんじゃねー!!
ったく無防備にもこんな写真撮られやがって!自覚が足んねーんだ!」
黒柳の言ってる事は正論で筋が通ってる分俺は言い返すことが出来ねぇ……くそっ!!
「レンジさん!!」
「智鶴?!」
いきなりこの場に智鶴が飛び込んで来て俺はマジで驚いた。
飛び込んだ部屋ではレンジさんがズボンのポケットに両手を入れたまま
黒柳さんは腕を組んでお互いの身体が数センチの所で睨み合ってた。
2人共今にも手が出そうな雰囲気で……こっ…恐すぎますっっ!!
「お疲れ〜 ♪」
そんなとてつもない雰囲気の部屋に楠さんのこれまたとてつもない軽いノリの声が響く。
「惇哉くん!!」
え?一瞬で黒柳さんの態度が変わっ……た?
「惇…テメェ…」
レンジさんはさっきの雰囲気そのままに楠さんに詰め寄る。
「なにレンジ?」
「お前どの面さげて……」
「なに?責任転嫁すんなよな……もとはレンジが蒔いた種だろ?」
またお互いの身体数センチの所で睨み合う。
ひゃ〜〜〜!!楠さんもレンジさん相手に負けてないんですけどーー!!ウソみたい!!
って感心してる場合じゃ……
「レ…レンジさん!!まっ…待って下さい!!」
私はレンジさんの腕に飛び付いた。
「智鶴?」
「もう全部わかりましたから!!レンジさんが浮気なんてしてないってわかりましたから!!」
「え?」
今度は黒柳さんが驚いた顔をした。
「もーもっとレンジの奴焦らせれば良かったんだよ〜智鶴ちゃん優しいんだから」
「で…でも……」
「?」
私と楠さんとの会話を怪訝な顔つきでレンジさんは見てる……
「レンジ……お前マジで昨夜の事憶えてないの?」
「……所々は憶えてる。ただ帰った所は憶えてねぇ……あの女との事もな」
「オレが打ち上げに参加したときの事は?」
「何となく憶えてる……色々何か話もした気がするがあんま憶えてねぇ」
「はーーーーまったく!!人が勿体無くもアドバイスをしてやったのに……全部無駄かよ」
「アドバイス?なんだそりゃ?」
「その事はもういいよ。智鶴ちゃんに話しといたから智鶴ちゃんに聞いて」
「あぁ?」
「へ?」
レンジさんが無言で目で訴えながら私を見るから……
「ああああ…あの……えっと……それは後ほど……」
「ふぅん……じゃああの写真の女は?誰だ?」
「お前の愛人」
「!!」
楠さんのそんな言葉に黒柳さんの片方の眉毛がピクリと上がった。
「あのなぁ〜〜」
「今オレと一緒に仕事してる 「飛田 崇生 (hida takao)」 知ってるだろ?」
「飛田?飛田ってあの飛田か?」
何度か一緒に仕事をした事がある……まだ二十歳ソコソコの……男だったはず?
「ああ……レンジ達の打ち上げに顔出そうって事になった時何か面白い事しようってなって
一番後輩の飛田に白羽の矢が立ったってわけ」
その後私に話してくれた様に楠さんが昨夜の事を全部2人に話してくれた。
「良くあんな格好したな。完璧女に見えるぞ」
「だろ?まあ先輩の権限でやらせたんだけどね。面白そうだったし飛田も最初は
ブツブツ言ってたけど仕上がった自分見てその気になってたし」
「あれじゃ騙されんだろ」
「レンジも騙されてたけどな。酔ってたから余計だったんだろうけど……ってなわけで!」
「!!」
楠さんが今度はクルンと向きを変えて黒柳さんの方に向きなおす。
「お騒がせしてゴメンネ恭子さん ♪」
黒柳さんの両手をぎゅっと握り締めてニッコリと笑う。
「!!」
黒柳さんが一瞬で真っ赤になった!!え?なんで??
「あ……ああ…そ…そんな事ありませんから……お気になさらずに……惇哉くん……」
「そう?本当にごめんなさい。でも恭子さんにはレンジにお灸をすえて欲しかったから……」
「え?」
「この鈍感男智鶴ちゃんが1人で心細かった筈なのに自分だけ酒に逃げて挙句の果てはコレだったから」
「あ……やっぱりそうだったのね……レンジってば……」
「なんだよ」
「もういいわ。今回の事は惇哉くんと智鶴さんに免じてこれ以上は追求しないであげるわよ」
「は?何だそりゃ?俺は何もしてねぇだろ?」
「してないのが問題なんだよ!いい加減わかれ!この鈍感男!!」
「あぁ?」
「たまにはオレを見習えって事だよ!」
「っつ!!」
バシン!と後頭部を惇の野郎に叩かれた。
この俺に一発入れる野郎はコイツと黒柳くらいなもんだ。
「さて!そろそろ仕事に戻ろうっと ♪ じゃあね智鶴ちゃん今度本当に遊びに来てね」
「はいぜひ!!」
「レンジもたまにはウチに遊びに来いよ」
「ああ……」
「じゃあね恭子さん ♪」
「お世話様でした。あ!惇哉くん!」
「ん?」
出て行こうとした惇の野郎を黒柳が呼び止めた。
まさか……また言うつもりか?
「ウチの事務所に来ない?」
「はは ♪ ホント懲りないね恭子さん。ごめんね今の事務所気に入ってるから ♪」
「残念!でも諦めないから!!」
「粘るね?」
「それがとり得ですから。じゃないとこの世界やっていけません」
「そうだね。恭子さんらしいや」
「ありがとうございます」
「じゃあ ♪」
「あ…あの楠さん…色々お世話になりました」
「どう致しまして!」
私は笑いながら手を振って帰って行く楠さんに向かって頭を下げた。
Back Next
拍手お返事はblogにて…