Love You !



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大安吉日晴天!

どんだけ普段の行いが良いかってとこだろう。


「しかしお前紋付袴似合うよな」

惇の野郎が何とも言えない顔で俺に向かってそんな事を言う。

「褒めてんのか?」
「多分」
「じゃあ一応礼は言っとく」


とある晴れた日曜日…今日は俺と智鶴の結婚式だ。


親族だけの参加の神前式に惇の野郎だけは友達でも出席を頼んだ。

惇の時は確か惇がドラマや映画の仕事で忙しくて式と披露宴は別々だったんだよな。
しかも式は映画の舞台挨拶の合間を縫って札幌で挙げやがった。
だからホント身内だけの式だったはず…

仕事が落ち着いてからゆっくり挙げりゃいいもんを……
それでも遅いって文句タラタラだったんだよな…
嫁さんの望みで先に籍も入れられなくてグダグダ言ってたもんな……

そんなに所帯持ちたいのかと不思議だったが今ならその気持ちもわかるがな。

やっぱ全部において相手を自分のモノにしたいと思ったら一刻でも早く結婚してえと思う。

「メガネちゃんもういいのか?」
「ああ…この前1ヶ月検診で何も無いって言われた。元気だよ」
「侠哉は?」
「元気元気!まだちっこいけどすでにオレの母親と由貴の母親のハートをガッチリと掴んじゃってるしな」
「お前似なんだっけか?」
「なんだよな〜次は由貴に似た女の子が欲しいな。可愛いんだけどさ……
侠哉がマザコンにならない様に気をつけないとな……由貴はオレのもんだから」

真面目な顔で言ってる辺り昔から変わらないメガネちゃん溺愛……

「アホか……」
「お前も子供が……男が産まれりゃわかるよ」
「そうかね……」

1ヶ月ほど前惇の所に子供が産まれた。
男で名前は侠哉(kyoya) 智鶴と2人でお祝いがてら会いに行ったらとんでもなく小さくて……
でも産まれたての赤ん坊はそんなもんなんだと言われ……
俺は何だか壊れちまいそうでおっかなびっくりで抱かせてもらって早々に母親の元に返した。

自分の子供ならそんな事も無く堂々と抱いてられるんだろうか?
なんて思ってたら惇の野郎がニヤリと笑って見てたんで睨み返してやった。


「由貴も来たがってたんだけどな」
「仕方ねぇだろ」

メガネちゃんは大事を取って侠哉と留守番だと惇の奴がすまなそうに言ってた。

コンコン!!

「はい」

新郎の控え室のドアがノックされて智鶴の兄貴と婚約者が入って来た。
俺達より先に同棲して智鶴の親にも先に紹介してたのに結婚式は俺達の方が早かった。

どうやらまだ色々とあるらしいが一番は仕事の折り合いがつかないって事らしいが
一般の仕事してる奴がそんな理由ってあるんだろうか?と首を傾げる。

「おめでとうございます……って!!いや〜〜〜〜惇哉クン!?」

入っていきなり智鶴の兄貴の婚約者が惇を見て黄色い声を上げた。

「はじめまして。本日はお日柄も良く……おめでとうございます」

そう言ってごくごく普通に惇が頭を下げた。

「はじめまして!こちら智鶴ちゃんの兄の敦 (tutomu) で私は婚約者の椚 聡美 (kunugi satomi)です。
こちらこそお忙しい中ありがとうございます」

ナゼか兄貴じゃなく婚約者の方が頭を下げた。

「楠 惇哉です」
「はいはい ♪ 存じ上げてますよ〜きっと参列者皆驚きますよ〜〜 ♪ ね? 敦」
「…………」

兄貴はと言うと未だに俺と智鶴の結婚を納得してねえ。
まあだからと言って表立って反対するわけじゃねえが…
そんな態度は兄貴1人だからハッキリ言って俺にとっちゃ何の脅威にもなりゃしねえし
逆に兄貴1人がそんなんだから1人放っとかれてる気がして何だか哀れな様な気がするのは
俺だけか?

どうやら皮肉にも兄貴にとって一番気に入らない俺の俳優と言う立場は
他の親戚一同にとっちゃ一番の気に入る所らしい。
披露宴も夫婦招待がなぜか子供もれなくついて来て最初に予定してた人数をかなりの数で上回った。
まあその光景は智鶴の親戚の方が圧倒的に多かったが……まあ仕方ねえと諦めた。


「新婦様のお支度が整いましたので新郎様先に写真の撮影をお願い致します」

そんな事を考えてたら式場の係りが部屋に来て声を掛けた。

「智鶴ちゃん白無垢だっけ?似合いそうだよな。倒れんなよ」
「倒れるか!」

惇の奴がからかい半分で言って来る。

「敦!あなたも感極まって倒れないでよ!」

すぐ隣でもそんな会話が聞こえた。

「なっ!そんな事あるわけないだろっ!」

いや有り得んだろ?智鶴兄。

「そう?ご両親以上に大泣きなんじゃないの?」
「バ…バカな事言うな!何で僕が……」
「自分のシスコン自覚してないの?」
「僕はシスコンじゃない!妹の智鶴が可愛くて心配なだけだ!」

それをシスコンっつーんだよ!智鶴兄!!

「まったく……とにかく恥ずかしい真似しないでよ!レンジさんのイメージダウンになるんだからね!」
「知るか!!そんな事!!」

『なに?レンジ嫌われてんの?』
「…………」

惇の奴が面白そうに聞いてくる。

『んなわけねえだろ。追い追いわからせてる途中だ』
『へえ〜 ♪』
「………」

その面白そうな眼差しはやめろ!


「失礼致します」

俺を迎えに来た係りの女が新婦の控室のドアをノックして開けた。
流石に気を使ってか智鶴兄も惇も俺を先に入れてくれた。

「!!」

部屋の真ん中に……

頭には真っ白な綿帽子に身体にも真っ白な着物を着た智鶴が俺の方を向いて立ってた……

本当に上から下まで真っ白で……


「レンジさん……」


そんな真っ白な中から……はにかんだ智鶴の声が俺の名前を呼んだ。







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