とっても晴れた日曜日……今日はなんと私とレンジさんの結婚式だったりする！！

一緒に暮らす様になって約半年……
お互いの親にも会って反対も無くレンジさんの仕事も一段落ついた所で式の日取りを決めた。

何日も前からソワソワドキドキで眠れなかった……レンジさんはそんな事無かったのかな？
流石に昨日はお休みをとってゆっくりしてたけど……

鏡の前で少しずつ変わっていく自分を見つめてる……

レンジさんのお父様が出来れば神前式が良い……
と言う意向もあったし皆の前で誓いのキスは恥ずかしいとチョピリ思っていた私は
披露宴ではちゃんとウエディングドレスも着れるからと言うことで反対はしなかった。

『智鶴には白無垢を着てほしい』

とレンジさんが珍しく主張したのでまたまた私は反対することもなくあっさりと承諾した。


流石プロのメイクさん……自分がするお化粧なんて足元にも及びませんよ〜
しかも生まれて初めてつけ睫毛なんてつけちゃってますし！！
ひゃ〜〜カツラがちょっと圧迫感！痛くはないけど気になる重さだしオデコ全開です！！
恥ずかしい〜〜でも真っ白な布をかけられて…コレなんて言うんだろう？
あ！えっと確か　『綿帽子』　って言うんだよね……
ナイスなアイテムかも！だって俯いてたら顔あんまり見えないわよね？

鏡に映った仕上がった自分を見て何だか自分じゃないみたいでじっと見つめちゃう……
レンジさん……どう思うかな？似合わないって思われるかな？あまりにも普段と違うものね……

レンジさんって仕事で結婚式なんてやったことあるのかな？
もしあるとしたらその時の女優さんと比べたりしないかしら……

元々背のある方じゃないからちんまりした感じかな……なんて自分では思う……

「ふう……」

思わず溜息が出ちゃった……

「お疲れですか？」

傍にいた式場のスタッフの女の人がニッコリと笑って私の顔を覗き込んで聞いた。

「いえ！！大丈夫です。すみません……」

いけないいけない……

「お綺麗ですよ」
「ありがとうございます」

営業のお世辞でも嬉しかった。

「式の前に新郎様とお写真を撮りますから。その後神前式を終えて皆様と一緒に
お写真を撮りましてドレスに着替えてお２人でお写真を撮ります」
「は…はあ……」

わあ……そんなに写真って撮るものなのね……

「では新郎様をお迎えにあがりますのでこちらでお待ち下さい」

「はっ…はい！！」

思わず元気に返事しちゃった……恥ずかしい……


すぐに控室のドアがノックされて　「はい」　と返事をするとドアが開いて
袴姿のレンジさんが入って来た。

もう私はそんなレンジさんの姿にドキン！と心臓が波打って言葉が出ないほど感動した。

カ…カッコイイです〜〜〜素敵です〜〜〜レンジさん！！！
元々背もあるし……役者さんって言うのもあるんだろうか？紋付袴が似合う！！

「レンジさん……」

もう言葉が続きません！！本当にこの人が私の旦那様になるんですか？
私には勿体ないです！！

「智鶴……」

レンジさんが優しく微笑む……私……大丈夫ですか？

「レンジさん……」

「綺麗だ……智鶴」

「！！」

その一言で私は満たされる……

「本当……ですか？」
「ああ……綺麗だ……」
「あ……ありがとうございます……」

私は込み上げる涙を堪えるのに必死……そんな私にレンジさんの手が伸びて頬に触れた……
親指が動いて頬をそっと撫でる……

ふわぁ〜〜〜嬉しい……

「今から花嫁泣かしてどうすんだ」
「あぁ？いたのか？」
「いるって！」
「あっ！」

そんな会話でハッと気付く。

「楠さん！？」
「僕達もいるんだけど？智鶴！ついでに言えば他に式場の人もいるよ」
「……お兄ちゃん……」

ちょっと機嫌の悪そうなお兄ちゃんの声の方を向くとムッとしたお兄ちゃんとニコニコ顔の聡美さんと……
これまたニッコリ顔の式場のスタッフの人がこっちを見てた。

ひゃ〜〜！！つい２人の世界に入っちゃってました！！

「綺麗よ〜智鶴ちゃん　♪」
「ありがとうございます……」
「智鶴……」
「お兄ちゃん……」
「止めるならまだ間に合うぞ！」

真面目な顔でそんな事を言う。

「もう何言い出すのよ！今朝婚姻届けだってちゃんと出してきたんだから！
もう私達はちゃんとした夫婦なんです！！」
「なっ……」

お兄ちゃんがものすごくショックを受けてる。
もう本当に失礼なんだから！！
そうなの！式場に来る前にレンジさんと２人でちゃんと役所に婚姻届けを提出してから来た……
だから私はもう　『鏡　智鶴』　で……レンジさんの　『妻』　なのよね　♪

いつ届けを出そうか悩んでたけど結局結婚式と同じ日にした。
レンジさんはちょっと不満そうだったけど……私は会社でのことも考えて
式が終わってから苗字が変わった方がいいかな…なんて思ったから……

「いい加減諦めなさいよ！他に何か言う事無いの？」

聡美さんが呆れた顔でお兄ちゃんを肘で小突く。
その隣では楠さんがクスクスと笑ってる……もうお兄ちゃんったら……

「……綺麗だよ智鶴……」
「お兄ちゃん……」
「その男に見切りをつけたらいつでも帰って来て良いんだからね……」
「！！」

その言葉にレンジさんの眉がピクリと動いて更にクスクス笑う楠さんを睨んでる。

「めでたい日にそんな事言わないの！」
「イテッ！」

今度はさっきよりも強く小突かれてお兄ちゃんがヨロけた。

「そんなこと絶対有り得ないからご心配なく！」
「……そう……」
「お兄ちゃん……」

力無く笑うお兄ちゃん……本当は喜んでくれてるよね……

「敦は智鶴ちゃんの心配より私達の心配してよね！結婚式は智鶴ちゃん達より後なのに
式も挙げてない私達が子供は先なんて事にならないでよ！」
「わかってる……」

相変わらずお兄ちゃんは聡美さんに勝てないんだね……

「ではお２人はあちらのお部屋で写真撮影となります。ご親族の方は先に式場の方へ……」


そう言われてお兄ちゃん達は私達とは反対の方に歩いて行った。
ちょっと項垂れてるお兄ちゃんとは反対に妙なテンションの聡美さんが楠さんに話しかけてるのが何とも言えなかった。


「少々お待ち下さい」

スタッフの女の人がそう言って部屋から出て行くと通されたスタジオの様な部屋でレンジさんと２人になった。

「レンジさんごめんなさい……」
「ん？」
「お兄ちゃん……相変わらずで……でも喜んでくれてると思いますので！！」

見上げてそう必死で説明する私にレンジさんはクスリと笑ってくれた。

「大丈夫だ。気にしてねぇから」
「本当……ですか？」
「前回の事で智鶴の兄貴の事はわかってる」
「はあ……」

前回……お兄ちゃんが初めてレンジさんに会った時……
私とレンジさんを別れさせようとしてお兄ちゃんの友達の星崎さんまで巻き込んでとんでもない事になった。
今から思い出してもレンジさんや星崎さんに申し訳ない気持ちで一杯になる。

「まあこれも可愛い妹の事を考えて言ってるんだろ」
「はあ……」

本当にそうなんだろうかとちょっと疑問。

「智鶴」
「はい？」

「俺が智鶴を幸せにしてやるから」

「レンジ……さん……」

「前にも言ったが俺は浮気は絶対しねぇ……智鶴だけをずっと見てる……」

「…………」

ああ……ダメ……

「だから智鶴は何も心配せずに俺を信じてついて来い」

「…………」

嬉しくて……嬉しくて……

「わかったな」

涙が零れちゃう……

「ちゅっ……」
「ん……」

レンジさんが触れるだけの優しいキスをしてくれた……

「智鶴……愛してる……これから先俺が愛するのは智鶴だけだ」

そう言うとレンジさんはいつの間にか零れて頬に伝った私の涙を指先で拭ってくれた……

「レンジ……さん……」
「返事……してくれ……」

いつもとは違ったちょっと照れたような笑顔のレンジさん……
触れるだけだったキスなのにレンジさんの唇に口紅が薄っすらとついてる……

私はそっと手を伸ばしてレンジさんの唇についた口紅を指先で拭う……

「口紅……ついちゃいました……ふふ……」
「智鶴の口紅なら何も問題ねぇだろう？」

クスリとレンジさんが笑う。

「そうですね……」

だから私もクスリと笑う……

「レンジさん……」
「ん？」

「私もレンジさんだけを愛してます……これから先私が愛するのはレンジさんだけです……」

「智鶴……」
「あ！でも……」
「あぁ？なんだ？」

私が変な事言い出すんじゃないかとレンジさんがちょっと警戒する様な眼差しを向けた。

「２人の子供が出来たら……その子の事も愛しちゃいますけど……それは許してくれますよね？」
「！！」

レンジさんが今度は驚いた様な顔を一瞬してすぐに笑顔になる。

「当たり前だろ？そん時は俺も同じだ……智鶴は許してくれねぇのか？」
「へ？……あ！！」

その言葉で自分が変なこと言っちゃったのかな？なんて思った。

「ゆ……許します！！許しますよ！！って言うか愛してください！！」

「ああ……まかしとけ！智鶴の事も子供の事も愛してやるから」

「……はい！」


私は今どんな顔してるんだろう？

きっとこれ以上ないってくらいの幸せな顔で笑ってるんじゃないんだろうか……

でも……今日くらいいいよね？

だって……今日は私とレンジさんにとって……とってもとっても大事な日だもの……

『改めて今日から宜しくお願いします』

とレンジさんに向かって頭を下げたらレンジさんはまたニッコリと笑ってくれた。


そして……さっきせっかく拭ったレンジさんの唇に……
また私の口紅がついてしまって……その口紅を指先で拭った時……
部屋の扉が開いて式場のスタッフの人が入って来た。




とっても晴れた日曜日……今日は私とレンジさんの結婚式です　♪






　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｆ　Ｉ　Ｎ　〜〜

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