オレの愛を君にあげる…



30




そんな堂本君騒ぎがあった数日後、オレは勤務してる警察署の屋上にいた。
憩いの場所のようにチョトした公園みたいになっていて、何個かのベンチも置いてある。
そのひとつにオレは同じ署で、総務課の女の子 “香山 美登里” さんと腰掛けていた。

「はい、洗わなくてごめんね」

そう言って空のお弁当箱を渡した。
今日、彼女がオレのためにお弁当を作って来てくれたんだ。
それをオレは受け取り拒否もせず、ちゃんと完食して返しているというわけ。

「え?あ……いえ」
「60点」

唐突に言った。

「え?」 

彼女がキョトンって顔してる。

「オレ趣味が料理なの。もう少し慣れればいい味と、焼き加減ができるんじゃない?」
「あっ、す…すいません」

バツが悪そうな顔をオレにして俯いた。
あ!こーゆーのってダメ出しって言うのか?悪かったかな?まっいいか、別に。

「なんでオレにお弁当作ってきてくれたの?」
「え?あの……それは……」

急に聞かれて、赤くなってる。
まあ、理由わかるんだけどね。

「もう、こんなことしないでね」

タバコに火を点けながら、彼女を見もせずに淡々と言った。

「椎……」 

少しビックリした顔をして、オレの次の言葉を待っている。

「オレ、好きな子いるんだよね」
「知ってます……でも……」

また俯いて、か細い声で答えてる。
知ってるって、相手が男の子ってこともわかってて言ってるのかな?
それとも知らないのか?知ってたら言ってこないだろうし、知ってて言ってくるなら
自分に自信があるんだろうか?
それもちょっと勘弁なんだけどね。

「だから迷惑なんだよね。君のその気持ち」

ハッと彼女が息をのんだのがわかった。
でもオレは、彼女の顔も見ずハッキリと言い切る。

「オレその子以外、絶対好きにならないから時間の無駄だよ。そんなのもったいない。
他に見つけてそっちに行ったほうがいい」

彼女は俯いたまま、黙ってる。
オレはそんな彼女にお構いなしに立ち上がって、言い続ける。

「オレ、君が思ってるほどいい人じゃないよ」

普段は人見知りもせず、上辺だけの笑顔のオレを本当のオレだと思ってる奴等は簡単に騙される。
そんなオレを好きだなんて、笑えるんだよね。

「オレのことはあきらめてね。じゃないと君のこと、嫌いになるから。じゃあね」

ニッコリ笑って歩き出した。
泣いちゃたかな?動いてる気配がしない。
だからって別に気にしないけどね。
仕方ないんだよ。

──── オレには耀くんだけがいてくれればいい。耀くんだけがほしい。耀くんだけしかいらない ────


「!」

屋上を出ようと扉のところに行くと、堂本君が立っていた。
どうやらオレを探しに来たみたいで、今の話を聞かれたらしい。
少しムッとした顔してる。
なんで?

「なにもあんなふうに言わなくたっていいじゃないですか!想うことは自由ですよっ!!」

彼女の気持ちを代弁してるつもりなのか?
オレのこと許せない、って感じでつっかかってきた。

はぁ?なにコイツ?カッチーン!!ときた。

ふざけんなっ!!誰に向かって文句言ってんだ?あ″あ″?
あ!切れモード突入。

「……堂本ぉ〜〜」

オレは殺気を出し撒くって振り返った。

「それはお前が、オレの表の顔しか知らないからだよっ!!」

「へ!?し、椎凪……さん?」


椎凪さんを探しに屋上に行くと自然と聞えてきてしまった椎凪さんの言葉。
確かに恋愛感情のナイ相手に想われても困るかもしれないけど……もうちょっと他に言い方があるような気がした。
人を好きになる気持ちは、自分でもどうしようのないものだと思うから。
それをあんなふうに一刀両断されて、相手の人が可愛そうに思えた。
だからつい、勢いで椎凪さんに意見してしまったんだけど、突然振り向いた椎凪さんに怒鳴られた!
うわっ!!スゲー怒ってる!!なんで??

「オレは自分の周りの知り合いの女は相手にしないんだよっ!学生のときも住んでるところでも職場でもなっ!
毎日、朝も昼も夜もベタベタされんの大嫌いなんだよ!!」

手加減せずに、堂本君に怒鳴り続ける。

「特にあーゆー一途な子はな、はっきり言わねーと、どんどんオレに入り込んでくんだよっ!
現にオレに好きな子いるって知ってて、オレに弁当作ってくんだぞ!
傷つけないように優しくしてたら、もっとエスカレートしてくんだよっ!
オレ、しつこい女大嫌いなんだよっっ!!!それに万が一、オレを好きな奴がいるって耀くんにバレてみろっ!
今度は耀くんが不安になんだろーがっ!」

畳み込むように言い続けて、反論なんかさせない!

「耀くんを不安にさせることを、オレがほっとくわけねーだろっ!
ヘタすっと 『その子とうまくやって』 とか言われんだぞっ!そんなこと、できっかっっ!!」
「は、はぁ……」

あまりのオレの勢いに、堂本君はビビリまくってるらしい。
ちょっと腰が引けてるみたいだけど、オレはやめない。
堂本君のネクタイをグッと掴んで、自分のほうに引き寄せた。

「オレと耀くんとの不安要素は、どんな小さなことでも排除する!
オレと耀くんのジャマする奴には容赦しない!これが本当のオレ!いつもは猫被ってんのっ!
覚えとけよっ!堂本っ!!」

最後にトドメの一言を言い放つ。

「お前がオレに説教なんて、一万年早えーんだよっ!!!」

オレにネクタイを掴まれ、逃げることもてきず、至近距離でオレに散々文句を言われ続けた堂本君は
顔面蒼白になって、やっとの思いで……

「は…い……すみませ…ん」

と、言った。


当然のことながら、堂本君はお仕置き決定!
超有名洋菓子店の高級ケーキを、涙が出るほど買わせてやった。


もちろん耀くんへのプレゼント。

オ・レ・が!耀くんのために買ってきたってことで♪








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