オレの愛を君にあげる…



39




バンッ!

乱暴に玄関のドアを開けた。
口には医者から貰った薬の紙袋をくわえてる。
そしてオレの腕の中には、夕べから熱を出してぐったりしてる耀くんが苦しげに息をしてる。

「ほら耀くん、着替えて早く横になって!」

耀くんをベッドに座らせて声を掛けた。

「うん……」

か細い返事が返ってきた。
オレは気にしつつも、耀くんの部屋を出て薬をリビングのテーブルに放り投げた。
それからもう一度、耀くんの部屋に顔を出した。

「耀くん、オレちょっと買い物してくるけどさ大丈……」

って見れば、まだもたもたと洋服のボタンを外してる。

「あ〜もう遅っ! こんなときにサラシなんか巻いてないの!」
「あーー」

耀くんのことなんかお構いなしに、サラシを手早く剥ぎ取った。
巻かれてたサラシの下から現れた耀くんの胸を、しっかりと頭に記憶させる。
いつか近いうちにたっぷりと堪能させてもらうと誓って、今日は誘うように揺れる綺麗な胸を見逃してあげた。
オレがしっかりと見てたのに気づいたにもかかわらず、耀くんは怒る元気もないので好都合。

耀くんは時々、風邪をひいたわけでもないのに熱を出す。
それに深く眠ることも……耀くんにも理由は分からないみたいだけど、オレは耀くんの心の負担がピークになると
身体が堪えられなくなって、熱を出したり深く眠ったりするんだと思う。

オレは耀くんが食べれる物を買いに外に出た。

ポケットに手を入れると、耀くんの健康保険証が入ってた。
さっき医者で使ってそのままだった。

「性別……女なんだよな。耀くんどう思ってるんだろ」

ジッと見つめた保険証の性別のところを見て呟く。
きっとまた、暗示をかけられてるんだろうな……そう思うとなんとも重い気分になった。

「耀くんただいま、大丈夫? って! わぁ耀くん!! 大丈夫!!」

ベッドに寝てる耀くんが、茹でダコみたいに真っ赤になってる!!

「はぁ……はぁ……」

そして、浅く短い呼吸を繰り返してる。

「あちゃー、39.5度……」

オレは体温計を見つめて、ため息をついた。

「あ…アツイ…」
「!」

耀くんが掛け布団を剥いで、パジャマのボタンを自分で外し始めた。
肌蹴て、乱暴に脱いだパジャマから肩が露わになって……熱でほんのりと上気してる肌が見えた。

「うわっ! スゴイ汗……汗びっしょりじゃん」

これは決して下心からではない!
汗を掻いてそのままじゃよくない! マメに着替えないと!!

オレは洗面器にお湯を入れて、タオルで耀くんの身体を拭いてあげることにした。

「耀くん、ほら服脱いで。着替えるから」

そう声をかけても、耀くんは目を瞑ったまま答えない。
仕方なく、オレが耀くんのパジャマを脱がせることにした。

なんの躊躇もなく、テキパキと脱がしていく。

「ふう〜」

もちろん下着も脱がせた。
だから今、耀くんは生まれたままの姿。

「んー」
「ほら、じっとして」

絞ったタオルでまず顔を拭いてあげたら、微かに抵抗された。
そんな抵抗なんか無視して、首、腕、身体全体を拭いていく。
胸なんかは膨らんだ形に添って、円を描くようにタオルでなぞるように拭いていく。
何度かタオルを濯いで、汗ばんだ耀くんの身体にタオルを動かす。
たまにタオルを掴みつつ、伸ばした薬指と小指でタオルがなぞるのと同じ肌の上を滑らせる。

お腹の辺りと腿の内側を拭いたときには “あうっ” っていうなんとも艶かしい声と一緒に
耀くんの身体がピクンと跳ねた。

耀くんってば感じやすいんだね……。

「耀くん、次は背中」

肩に手を置いて、背中に腕を入れてうつ伏せにする。
色白で綺麗な背中が露わになって、オレは頬が緩むのを抑えられない。

あ…ヤバイ……遊び心が抑えきれず、耀くんの腰にチュッ♪ チュッ♪ と何度かキスをして
腰から背中にかけて舌で舐め上げた。

「あ…ん…」
「しょっぱい」

うつ伏せで横を向いてる耀くんの火照った顔に、少しあいてるいつもより赤い唇。
その唇から浅い息が漏れる。

ああ、耀くんってばオレの舌に感じてるんだ。

そう思うとオレはタオルを洗面器の中に放り込んで、うつ伏せの耀くんの身体を跨ぐように手をベッドに着く。
そして静かに身体を屈めると、耀くんの背中に触れるか触れないかというところで止まる。

触れていないのに、オレの唇に耀くんの体温が伝わってくる。

「好きだよ、耀くん。チュッ」
「は…ぁ…」

汗ばんだ背中に強めに唇を押し付けて、唇を背中にくっ付けたまま少し唇を開くと、
耀くんがちょっとだけ背中をのけ反らせる。
唇をつけたまま、舌を這わせて舐めながらときどき強く吸い付く。

「んっ……」
「感じるの? 耀くん……ふふ」

耀くんの背中を唇で移動しながら、たくさんのオレのシルシを散らしていく。

「好きだよ……愛してる」

きっと耀くんには聞こえていないけど、オレはいつもと同じように耀くんに囁く。

それからしばらくの間、耀くんの背中を心行くまで堪能した。
まあ、そのときに勝手に手が動いて、あんなところやこんなところに触れてしまったのは仕方ないことだ。



身体を拭いても、耀くんの熱は下がらない。

「はぁ…はぁ…」

荒い息遣いが続く。

「耀くん、薬飲める?」

目を閉じてる耀くんの耳元で聞いてみたけど、返事は聞こえてこない。

「って、無理だよな。ハハ」

ベッドに腰掛けて、耀くんを抱き起こして医者から貰った解熱剤の薬を耀くんの口に入れた。
オレが水を含んで、耀くんに口移しで飲ませた。

「コクン……」

飲んだ気配はしたけど、一応確かめた。
オレの舌で。
ゆっくりと、優しく、丁寧に。
耀くんの口の中に、薬が残ってないか。

「ん…んん…」

耀くんがまた力なく抵抗したみたいけど、気にしない。

「大丈夫、残ってない」

念のためにもう一度確かめた。
さっきより時間をかけて。

──── オレはときどきズルイ。

耀くんが寝てる間に、色々なことをしてる。

キスなんて当たり前。
さすがに抱いたりはしないけど、耀くんから見えないところにキス・マークもつけたりする。
耀くんは一度寝ると滅多なことじゃ起きない。
遅くまで起きてたときとか、お酒を飲んだら尚更。
ただでさえ朝が苦手なのに、絶対起きたりしない。

──── だからオレは耀くんの身体で遊ぶ。




「……ん?」

目が覚めて、しばらくボーとなっていた。
いつもと違う天井が視界に入る。
あれ? ここ……椎凪の部屋だ。
オレ……しばらく考えてハタと気づく。
そうだオレ熱が出て、医者に行って……ふと視線を下げると、自分が着てるのは椎凪の服だ。
あれ? これ……なんで?
ん? なんだ? 肌に当たる服の感触がいつもと違うことに気づいた。
オレは不思議に思って、チラリと服の中を覗いてみると……。

「なっ!!」

オレはベッドから飛び下りて、椎凪のところに急いで駆け寄った。
椎凪はいつもの朝と同じように、鼻唄を歌いながらシンクの前で料理をしていた。

「椎凪!!」
「あれ? 耀くん、身体大丈夫なの?」

朝ごはんの支度をしてた椎凪がオレの呼ぶ声に振り返って、ニッコリと微笑んでオレを見た。

「もーなんでオレ裸なんだよっ! それに椎凪の服って? どうして?」

慌てふためいて、椎凪に喚きながら訊ねてた。

「だって耀くん熱で汗びっしょりでさ。シャツ1枚のほうが着替え楽なんだもん」
「楽ってどういうこと……?」

椎凪のニコニコな顔に嫌な予感が頭をよぎる。

「え? 3回……? 4回着替えたもん。それにずっと傍にいたほうがいいと思って一緒に寝たし」
「はあ!?」

満足感いっぱいな椎凪の笑顔がかえってきた。

「なっ!! …………もーー椎凪のバカバカバカ!!」


病み上がりだというのに駆け足でバタバタとキッチンに飛び込んできて、
自分の意識がないときのことをオレに聞いてくる。

正直に耀くんの質問に答えてあげれば、耀くんが顔を真っ赤にしてオレをバシバシ叩いた。
オレはそんな耀くんの攻撃は痛くも痒くもないから軽く受けとめる。

「え? なんで? 仕方ないでしょ?」

オレの対処は間違ってないと思うけど。

「見た…の?」

真っ赤な顔でオレを見上げながら、耀くんが聞いてきた。
その顔がなんとも可愛い♪

「ちょっとだけね」

バチン☆ とウィンクつきで答えてあげた。
ちょっとだけなんてウソだけど。
心いくまでたっぷりと堪能させていただいちゃいました♪

「変なこと……しなかったよね?」

耀くんが潤んだ瞳で睨んでくる。
睨まれてもぜんぜん怖くないけどね。

「──── うん……」
「なに? 今の間は!」

あ、しまった。
つい耀くんのあんな姿やこんな姿やあんな声を思い出してたら返事がちょっと遅れて、
変な間ができちゃった。
耀くんがそんな間を、ここぞとばかりに責めてくる。

「え? なにもしてないよ!」
「…………」

耀くんが、じぃーーーーっと疑いの眼差しをオレに向けている。

「もーオレ、シャワー浴びてくる!!」

諦めたのか、耀くんはクルリと踵を返してキッチンから出て行った。

「無理しちゃ駄目だよ。まだ熱あるんだから、お粥作っとくね」

照れるように足早にキッチンを出て行く耀くんを見送りつつ、ホッと溜息をつく。
ヤバかった……あまりの嬉しさに、ボロが出るところだった。

「くすっ」

オレはまた鼻唄を歌いながら、耀くんがシャワーを浴びて出てくるまでに料理を完成させようと手を動かす。

「気づくかな? 気づかないか? 耀くんだもんな」


シャワーを浴びる耀くんの背中に、たくさんのキス・マークがついていることを……耀くんは知らない。





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