オレの愛を君にあげる…



55




家に帰ってから椎凪のテンションは上がりっ放しだった。
まあ、覚悟はしてたんだけど。

「んー♪ 耀くーん!!」

さっきからずっとソファに座って、オレを背中から抱きかかえてキスをし続けてる。
いい加減首が痛い。

「…………」

オレは抵抗しないでされるがまま。

「あーもう、オレ幸せっ!!」

そう言って、オレに頬をスリスリしてくる。
もう…あきらめた……好きにして。


「ねえ…椎凪…」

オレは振り返って、椎凪を見上げながら話しかけた。

「ん?」

椎凪がデレッとした顔をオレに向けた。
ホント嬉しそう。

「オレ、本当に椎凪に迷惑かけるかもしれないよ。それでも……オレでいいの? 椎凪」
「いいの。耀くんがいいの!」

ニッコリ笑って、オレのオデコにキスしてくれた。

「耀くんはなにも心配することなんてないんだよ。耀くんのことでオレは迷惑に思うことなんてなにもないから」

さっきよりもニッコリと笑ってる。

「本当? 信じてもいいの?」
「うん。 信じて、それとも信じられない?」

ちょっと意外と言いたげな顔で覗き込まれた。

「ううん……信じる…信じるよ」

きっと椎凪はずっとオレに安心をくれる。
今こうやって椎凪に抱きしめてもらってるだけで、こんなにもオレは安心できるんだもん。

「でもさ、ひとつだけ嫌なことがあるんだ」

椎凪が本当に嫌そうな顔で言い出した。

「えっ? なに?」

オレのことでなにかあるの?
椎凪が話すまでちょっとドキドキした。

「オレ達の大事な告白の場所が、堂本君の部屋っていうのがね。最悪なんだよね」

舌打ちでもしそうな椎凪だ。
そんなに嫌だったのかな。

「あーそれは、オレのせいだ。ごめんね、椎凪…」

オレがずっとハッキリしなかったから椎凪が出て行くことになって、堂本さんの家にお世話になることになっちゃったんだから。

「だから、それ以上の“初めて愛し合った日”で、今日を記念日にしようよ! ね?」

今まで見たことのない笑顔で、椎凪がオレに同意を求めてきた。

「ええっ!? ど、どうしてそうなるの?」

椎凪のいきなりの提案に、オレはうろたえるばかり。
だって……そんな……それって……“愛し合った”って…………“そういう”ことするってことだよね?

「オレ、耀くんの全部をオレのものにしたい。お願い……耀くん」
「ええっ!! お…お願いって…オレ…そんな…」

ひーヤバイっ! こ、このままじゃ椎凪の思いどおりに話が進んじゃうじゃないか?

「え!?」

椎凪が体勢を変えて、オレをそのままソファに押し倒した。

「あっ! ちょっと…」
「耀くんの部屋に行く? それともオレの部屋?」

慌てまくってるオレを気にもせず、椎凪がオレの耳元で甘く囁く。
えーほ、本気?
オレはなにも言ってないのに、椎凪がオレを抱き上げて歩き出した。

「え!? し、椎凪、ホントに? やめて……くれないの?」

一応、お願いしてみた。
無理だって判ってたけど。
だって椎凪はここでやめる気なんて、さらさらないんだもん。
でも、オレだっていくらなんでもさっきの今で、心準備もなにもできてない。
椎凪と両想いになれたのは嬉しいけど……そんなすぐになんて思ってなかった。
椎凪相手に無理だろうなとは、今思ったけど。

「もう、半年待ったよ。だから、もう待たない」

抱きかかえたオレに優しく微笑みながら、椎凪が言った。
その細められた椎凪の瞳はさっき見せた欲情のこもった瞳じゃなくて、オレを慈しむような……優しい愛情のこもった瞳だった。
だから、躊躇してたオレもつい絆される。

「半…年?」
「大丈夫だよ、耀くん。オレ、今までにないくらい優しくするから」
「優…しく?」
「うん。愛してるよ、耀くん」

ちゅっと軽いリップ音のあと、オレの唇を確めるように椎凪が自分の唇をオレに重ね合わせた。
そのあとは、椎凪に求められるままお互いの舌を絡ませあって……。

椎凪が静かに……自分の部屋のドアを閉めた。 「半…年?」
「大丈夫だよ、耀くん。オレ、今までにないくらい優しくするから」
「優…しく?」
「うん。愛してるよ、耀くん」

ちゅっと軽いリップ音のあと、オレの唇を確めるように椎凪が自分の唇をオレに重ね合わせた。
そのあとは、椎凪に求められるままお互いの舌を絡ませあって……。

椎凪が静かに……自分の部屋のドアを閉めた。





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