オレの愛を君にあげる…



57




「…はぁ…はぁ…」

もう何時間、こうしてるんだろう。
今日、耀くんがやっとオレのこと『好き』って言ってくれた。
そう言ってほしくて、ワザと一緒にいれないって……部屋を出たオレを迎えに来てくれた。
告白の場所が堂本君の部屋っていうのが納得できなくて、だからそれ以上の記念にって……
初めて愛し合った記念日にしようって。
驚いて嫌がる耀くんを強引にベッドに連れて行って抱いた。
別に告白の場所なんて気にしてなかった。
耀くんを抱く口実が欲しかっただけ。

初めての耀くんは触れなくてもわるほど緊張して震えて、恥ずかしがって……すっごく可愛かった。
オレは半年振りっていうのもあるけど、やっと耀くんを抱けるのが嬉しくて、耀くんを離せなかった。
耀くん……初めてなのに、きっと無理させてる。
オレに触れる手に、力が篭ってない。
わかってる……わかってるけど、やめることができないんだ。
自分でもわからない。
いくら耀くんを抱いても、満足出来なくて。
もっと…もっと…こうしていたい。


「椎…凪…」

耀くんがオレの名前を力なく呼んだ。

「ん?」
「…少し…寝てもいい? このままじゃ、講義中に眠っちゃうよ…」

だいぶ慣れた耀くんが、オレに攻められながらも話しかけてきた。

「あー明るくなってきたね」

言われて気がついた。
カーテン越しの外はもう夜が明けかかってるらし、くうっすらと明るくなり始めてる。
ということは、一晩中耀くんのことを抱いてたのか?
今もオレは耀くんを攻めることを忘れてない。
オレに押し上げられてオレが動く度に、耀くんも同じように揺れる。
同じ回数だけベッドも軋んでる。

「うん…」

軽く目を瞑って、今にも寝ちゃいそうな耀くん。
オレとの刺激で辛うじて起きてるって感じだ。
そんなこと、させるもんか。
ちょっと悪戯心が働いた。

「じゃあ、あと1回耀くんがイったら終わりにする。フフ♪」

ニッコリと悪戯っぽい笑顔で笑った。
耀くんは薄っすらと目を開けてだけで、そんなオレに気がつかない。

痛さがなくなったころ、耀くんの身体に『イク』ことを覚えさせた。
オレは“イク”耀くんを見る度に、背筋に電気が走ったみたいになって鳥肌がたった。
今まで他の娘を抱いてもそんな感覚はなかったのに、耀くんは違う。
なんでだろ?
でもそんなゾクゾクとする感覚がなんとも言えず気持ちよくて、何度も何度も味わってる。
だから余計、やめることができないのか?
そんなことを思いつつ、オレは体勢を変えて耀くんの両方の腿を抱え上げた。

「…ん…絶対…だよ…そう言って…全然やめて…くれないんだもん…んあっ!」

そうだったけ? 記憶にない。

「多分、大丈夫。仕方ないから諦める」

さっきよりも激しく腰を動かしながら、心にもないことを呟いた。

「はぁ……んんっ! なに…それ? 本当は…やめる気なんて…ないんだろ? ああっ…」

鋭い、耀くん!
正解だから1回を3回に増やしてあげることにした。





「……ん…」

ボンヤリと目を開けた。
辺りは薄暗い。

「…あふ…」

部屋の景色が違う。
オレの部屋じゃない。
ああ……ここ、椎凪の部屋だ。
よく見ると、椎凪のシャツ着てる。
なんで?

ベッドから出ようとしたけど身体が思うように動かなくて、危うくベッドから転げ落ちそうになる。
んーーー? 昨夜から記憶がない。

「えっと……」

どうして椎凪の部屋なんだっけ?
オレまたあの夢を見て、夜中に椎凪の部屋に来ちゃたんだっけ?

「…………あっ!」

思い出したら、一発で目が覚めた!
オレ、昨夜椎凪と…椎凪と…椎…凪…と……

「わあああああーーーー!! 恥ずかしいっ!!」

床にベッタリと座って、ベッドに勢いよく顔を押しつけた。
それにオレ、椎凪に『好き』って言っちゃったんだ。
だから昨夜、椎凪とあんなこと……。

「ううぅ……」

オレは顔でお湯が沸かせるほど真っ赤になった。




恐る恐るキッチンに向かった。
もう椎凪はベッドに居なかったから、キッチンにいるのかと思ったんだ。
椎凪の部屋の時計は6時ちょっと前だったから、朝ご飯の支度でもしてるのかな。
でも……どんな顔して椎凪に会えばいいんだ。
恥ずかしくて恥ずかしくて、オレ倒れちゃうかも。

「ふう〜〜」

意を決してリビングに入ったのに、椎凪はいない。
リビングからキッチンが見えるから、すぐにわかる。

「あれ? シャワーでも浴びてるのかな?」

冷蔵庫を開けて、飲み物を飲んだ。
妙に喉が渇いてたから。
飲みながら、ふとリビングの時計に目がいった。
椎凪の部屋の時計と違って、リビングの時計はデジタルで……ん? うそ!?

「え? 17時……47分!? え? 夕方の5時? えっ? えっ? もう夕方? うそ……大学は? え? ええ!?」

信じられなかったけど、オレはどうやら1日中眠ってたらしい。
薄暗くて、てっきり朝の5時だと思ってた。
うそ……凄いショック。
二重にショックなんですけど。

「耀くん! ただいまっ♪♪」
「わっ!」

突然リビングの扉が開いて、椎凪が帰ってきた。
オレはビックリして身体が跳ねる。

 「え? 椎…凪?」

心臓が飛び出るかと思うくらいビックリした。
そんなオレを、椎凪がギュッと抱きしめる。

「もー会いたかったよ、耀くんっ! 夕飯の前に、軽く1回しよう♪」
「へ? 軽く? 軽く、なにするの?」

ワケがわからず、首を傾げるオレに満面の笑みを椎凪が向けた。

「なにって、決まってるじゃん♪」
「え? え? ええーーっっ!! ちょっと待って、椎凪……」

そのままリビングのソファに引っ張られて、押し倒された。
そして、あっという間にシャツのボタンが全部外された。
ちょっと……オレ、下着つけてないって。
だから裸の身体がすぐに現れる。
そんなオレを見て、椎凪がニヤリと笑う。
これって……まさ…か?

「ちょっ…」

 両腕を一緒くたに掴まれて、頭の上で押しつけられた。

「椎凪、オレ今起きたばっかりで……」

片手で閉じてた脚を強引に広げられて、椎凪が滑り込んでくる。

「ちょ…しい…やだっ…あっあっ…んっ!!」

椎凪の指がヌルリとオレの中に入ってきて、確かめるように中を擦っていく。

「ふうっ…んっ…」
「フフ、これなら大丈夫。昨夜たくさん解したからね」
「アンッ!」

最後にオレが敏感に感じるところを撫でて、椎凪の指がオレの中から出ていった。

「まだトロトロだよ。耀くん」
「え? あっ! くっ…ああっ!!」

なんの躊躇いもなく、椎凪がオレを押し上げた。
痛さはないけど、圧迫感が半端ない。
オレと椎凪の体格差を考えてよ!

「やっ…椎…凪…んっ…んっ…」
「耀くん……」

オレの言葉なんか耳に入ってない。
オレのことなんてお構いなしに、椎凪がオレの上で動き始める。
そのたびに、オレも一緒に動きだす。
最初っからかなりの激しさで、息が苦しい。

「んあっ! あん! あっ!」
「耀くん、最高♪ 愛してる……」

腰をオレに叩きつけるように動かしながら、耳元にそんな言葉を囁く。

「ああ…もう…耀くんが好きすぎて……どうにかなりそうだよ……」

今度はキスで口を塞がれる。
もう……椎凪のばかぁ。
オレは諦めて目を瞑って、椎凪からのキスを受け入れた。




グッタリとソファで横になって起きれないオレの視界に、ハイテンションの椎凪が夕飯の支度をしてる。
なにが軽くだよ。
思いっきりしたくせに。
ブツブツとオレは頭の中で椎凪に文句を言った。

それにしても椎凪ってば、昨夜オレとあんなにしたのに普通に仕事にも行ってさ。
さっきもあんなにしたのに、何事もなかったみたいにシャワーも浴びて、夕飯の支度もしてる。
寝てないはずなのに、なんであんなに元気なの?
オレは自分と比べて、椎凪の元気さが不思議で不思議で仕方なかった。

「はあ〜〜〜」

しばらくしてからやっと動けるようになって、シャワーを浴びた。
もう時間の感覚がなくなってて、変な感じだ。
それもこれも全部、椎凪のせいだ。
そんなことを思いつつ、ふと自分の身体に目がいった。
ん? なんだこれ?




「椎凪! 椎凪!!」

オレは浴室から飛び出すと、慌てて椎凪のところに駆け寄った。

「ん?」

椎凪がお皿を片手に振り向いた。


「うおっ!!」

耀くんがオレを呼んでる。
振り向くと、バスタオルを巻いた耀くんがオレ目がけて走って来た。
うそっ! なんて可愛くて、色っぽいっ!!

「椎凪! なんか身体に変なアザがいっぱいあるっ! なにこれっ!? なんで? オレ、なにか病気?」

心配そうな顔で、真面目にオレに聞いてくる。
もしかしてそれって……

「ほらっ! 胸とかお腹とか腿とか、赤いアザがいっぱいあるの!!」

なんの躊躇もなく、パラリとバスタオルの前を左右に広げて身体をオレに見せてくれた。
うわぉぉぉ! いいのか? 丸見えなんだけど。
そんな……やっぱ愛し合うと、こうも違うのか?
オレはそんなことを思いながら、ニヤニヤとニヤけた顔で耀くんのハダカの身体を眺めてしまった。
そんなオレを見て、耀くんがハッと我に返る。

「あっ! うわあっ!!」

慌てて身体にバスタオルを巻いた。
チエッ、失敗した。
素知らぬ顔で見てればよかった。

「はは…それね、キス・マークって言うんだよ。知らなかった?」
「キス・マーク?」
「そ! オレがつけたの」
「椎凪が?」
「あとで教えてあげる。さ! ご飯食べよ」

話はあとでと告げて、夕食の並べられたテーブルに耀くんを促す。
まずは、ちゃんと腹ごしらえをしなくちゃね。
お腹が一杯になったら、今日もたっぷりと愛し合おうね。
耀くん♪




キシキシとリズミカルな音が、さっきからずっと続いてる。
ここは椎凪の部屋で、なんだか昨夜からずっとここにいるみたいな錯覚に襲われる。
本当はそんなことないんだけど相変わらすベッドが軋む音を出していて、オレは椎凪に抱かれてた。
昨夜からずっと、ハダカでいるみたい。
時間の感覚もなくなってきてるし、身体もダルくて動かないのに椎凪の舌や手に敏感に反応して、勝手に身体が跳ね上がる。
今まで出したことのない声が、さっきから部屋中に響いてる。
恥ずかしくて黙っていたいのに、どうしてもとめることができない。
椎凪がオレを俯せにして、オレの背中にまわった。
お腹の下に椎凪の腕が回されて、軽くオレの身体を持ち上げる。

「…はぁ…はぁ…な…に…?」

首だけ持ち上げて、椎凪に聞いた。

「色々と、ね。フフ♪」

椎凪がクスって笑う。
ワケがわかんない。
身体に回してた腕を外して、今度は両手で少し上がってたオレの腰を掴む。
え? なにする……

「ひゃあ! んあっ!! やあっ…!!」

うしろから、椎凪に貫かれた。
今までと全然違う衝撃がオレの身体を走る。
ちょ…こんなの…だめ……耐えられないって。

「あっ! あっ! あっ! あっ! 椎…凪…だめっ… やめ…て…ああんっっ!!」

その日も明け方まで、オレの掠れた声が寝室から聞こえてた。





椎凪と愛し合うようになった。
椎凪は毎晩、オレを求めてくる。
オレは椎凪のことを全部受けとめるって決めたから、拒んだりはしないけど。
椎凪がこんなに、こーゆーことが好きだったなんて思わなかった。
ちょっと前までオレはキスしか知らなかったのに、訪れた夜の数の何倍も椎凪と愛し合ってる。
最近は、朝オレのことを起こすのに抱く寸前のことまでされてるし。
下手すると、抱かれちゃうんだ。
ホント、椎凪って朝から元気。

そんなに……するものなのかな?
オレは椎凪しか知らないからわかんないけど、みんなもこんなにしてるのかな?
オレはよくわからないから椎凪にまかせちゃうけど、少しは断ったほうがいいのかな?
本当に素朴な疑問で、毎晩オレは『これでいいのかな?』って思ってた。
こんなに毎晩、求められるものなのかなって。

「ねぇ…あーゆーことって、必ず毎晩何回もするものなの?」

至って真面目に、オレは祐輔に聞いてみた。

「ぶはっ! げほっ! ごほっ!」

なのに、祐輔が吸ってたタバコの煙で咽た。

「なっ…いきなりなんだよ…ケホッ」
「だって……聞ける人、祐輔しかいないんだもん。オレわんないから。でも、毎晩疑問でさ。
あーゆーことって付き合ったら、毎晩しなくちゃいけないの?」
「…………」

何気に頬を赤らめて言ってることは他人に聞くことじゃないんだが、耀は至って真面目らしい。
不思議に思ったのか?
耀らしいって言えば、らしいんだけどな。

「嫌なのか?」
「別に嫌っていうわけじゃないんだけど、あんなにするものなのかなぁ…って。他の人ってどうなのかなって思ってさ」

そんな疑問に思うほど、やってんのか?
相手があのエロ椎凪なら、頷けなくもないが。
なんか……ムカつく。

「だったら断れ」
「え? 断ってもいいの? 椎凪、ガッカリしないかな? イジケない?」
「ハッキリ言ってやんねえと、あのエロ椎凪にはわかんねえぞ!」
「やっぱり…毎晩は…シナイ…の?」
「オレは和海と一緒に暮してるわけじゃねえからな。でも、一緒に暮してても毎晩はしないかもな」

なんでオレはこんなこと力説してんのか。
オレも椎凪のことをとやかく言えた義理じゃねえが、今はそんなこと知ったこちゃない。
しないって言ったほうが、耀にとっていいことには変わりない。

「そっか…毎晩することじゃないのか…」

それはふたりの問題で、そういうことが好きなら別に1日中してようがかまわねえことなんだが、相手が耀となればオレとしては話は別だ。
いつかふたりは付き合って、こんな関係になることは百も承知だったことだが、実際そうなってみると不安がよぎる。

耀はきっと、椎凪を拒むことはしない。
気を使って、とかじゃない。
耀自身、それが普通のことだからだ。
椎凪の要求を、全面的に素直に受け入れる。
だから、知らないうちに無理をする。

他のことなら椎凪に任せておいて問題はないと思うが、このことに関しては椎凪は信用できねえ。
あの欲望の塊みたいな男だ。
きっともう耀に無理させてるに決まってる。
耀がオレにこんな質問すること自体、どんだけ耀のこと抱きまくってるかわかる。
あの野郎。
だからたまには断るように、耀に言い聞かせた。
どこまでオレの言うことを聞くかは疑問だが、今日ぐらいは聞くだろう。
それに、あんまりにも目に余るようならオレは黙っちゃいねえぞ。椎凪!


オレは祐輔がそんな決意をしてたなんて全然知らなくて。
でも、たしかにちょっと身体がキツかった。
祐輔にも、昔からウソがつけない。
オレのことがなんでもわかっちゃうんだもん。

その日の夜、先にベッドに入ってたオレは椎凪がニコニコしながらいつものようにオレの上に覆いかぶさったとき、
意を決して言ってみることにした。

「あ…あのさ…椎凪…」
「ん? なに? 耀くん?」

椎凪がニコニコ笑いながら、オレにかかった布団を捲り始める。
そんな掛け布団の端を、ギュッと掴んで捲られるのを防いだ。

「た…たまには…しないで…眠りたいな…」

ドキドキしながら言ってみた。
椎凪は、なんて言う……

「!!!!」
「え?」

椎凪が、今まで見たことがないくらいの驚いた顔をした!

「……椎…凪?」

恐る恐る、椎凪に声をかけた。

「な…なんで? どうして? 耀くん……」
「え?」

見る見る椎凪の瞳が潤んでいく。
え? なんで?

「オレのこと……嫌いに…なちゃったの?」

震える声で、椎凪がオレに確かめ始めた。

「違うよ…」
「じゃあ…他に…す…好きな人が…できた…の?」

すごく辛そうに、椎凪が言葉を絞り出すように話す。

「ち…違うよ…」
「じゃあ……なんで? なんで急にそんなこと言うの? オレに抱かれるの……イヤ?」
「そうじゃなくて、たまには椎凪と話しながら眠りたいなあ…って思っただけだよ。
前はよく話しながら眠っただろ? オレ、ああいうのも楽しくて好きだから。最近してないなって思ってさ」
「本当?」

椎凪がオレの顔を覗き込んで聞いてくる。
今にも涙が零れそうだ。

「本当だよ」
「本当に、オレのこと嫌いじゃない?」
「嫌いじゃないよ。 大好きだよ、椎凪」

触れるだけの優しいキスを椎凪にしてあげた。
椎凪は安心したのか、ニッコリと笑ってくれた。




「……でね、あのデパートに新しいパフェの専門店ができたんだって。だから……」

耀くんが楽しそうに、色々なことを話してくれる。
そういえば、最近耀くんとゆっくりと話したことなかったな…って反省した。
毎日でも、一日中でも、オレは耀くんを抱いていたい。
離したくなくて、ずっと傍にいて愛し合いたいと思ってる。
それは今も変わらない。

でもそんなことをしなくても、耀くんはオレに愛をくれる。
優しくて、言葉でオレに安心をくれる。
最初言われたときはビックリしたけど、たまにはこんなふうに眠るのも悪くない。

オレはそんなふうに思える自分にちょっとビックリしつつ、耀くんの話をニッコリと微笑みながらいつまでも聞いていた。





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