☆BL感漂う…かな?
そうでもない気がします。
警察署の食堂で、珍しく署内でお昼を取ることができた。
「え? 寝るとき? オレ、裸」
「えー? ハダカって、全部ですか? 下着も着けないんですか?」
「うん」
「きゃー! うそぉー!!」
「はずかしーですっ」
同じ署の若い女の子が、椎凪さんと話している。
明らかに女の子達は椎凪さんと話すことが嬉しくてたまらないと言った感じが、はしゃいでいる態度からわかる。
「だって、自分しかいないんだからいいじゃない? あ! それとも一緒に寝てる人がいるのかな?」
椎凪さんも相手に合わせて、楽しそうに話してる。
「えーいないですよー。そんな人」
「もー椎凪さんってばっ!」
そんな世間話をしばらく続け、女の子達は満足したらしい。
「スイマセンでした。お食事中に」
「どういたしまして、全然平気。またね」
まったく……人懐っこいんだから、椎凪さんは。
「もー椎凪さん、刑事辞めてホストになったほうがいいんじゃないんですか?」
呆れたように話しかけた。
それは自分は椎凪さんみたいに女子と上手く話せないから……なんて、羨ましいからでは決してない。
うん、たぶん。
「え? なんで?」
「だって…」
顔がよくて、落ち着いた声でお喋り上手で、男の色気もあって……女の人に好かれそうだし。
「そうかい? 僕は椎凪君は刑事が向いてると思うけどね」
向かい合って座ってた内藤さんが話しに加わってきた。
「でしょ? さすが内藤さん。大人の男ですね。堂本君は見る目がないなぁ〜」
なんですか?
その、もの凄い呆れた顔は?
「どーせ俺はガキですよ!」
不貞腐れてた俺の耳元に、椎凪さんがそっと顔を近づけた。
「……え?」
ドキッと心臓が波打つ。
「オレが大人にしてあげようか」
甘い声で、そっと囁かれた。
椎凪さんの息が、フワッと耳にかかる。
その瞬間身体がビクン! と跳ねて、背中から頭に向かってピリピリとなにかが走り抜けた。
「うわあっっ!! ちょっと!!」
ガタッという大きな音と一緒に、勢いよく椅子から転げ落ちた。
「え?」
椎凪さんが不思議そうに、床にヘタリこんでる俺を見下ろしてる。
「やだな、なにビビッてんの? クスクス♪ 堂本君からかうとおもしろーい」
「…………」
真っ赤になりながら立ち上がった。
超恥ずかしい。
「え? なに? 堂本君、まだ大人じゃないの?」
内藤さんが面白そうに加わってきた。
さっきの……聞えてたのか?
「お、大人ですよ! ハタチですもん!」
そのときはムキになってたから。
あとから考えると、超恥ずかしいことを口走ってた。
「年齢いってれば大人ってワケじゃないよー。クスッ」
「椎凪さんっ!」
一言多い!
「え? なに?」
ワザとらしく、内藤さんが聞き返す。
顔が楽しそうですよ!
これ以上ここにいたら、どんな醜態を晒すかわかったもんじゃない。
ふたりを促して、早々に食堂をあとにした。
今日は珍しく内籐さんが一緒だったんだ。
内籐さんも掴みどころのない人なんだよなぁ……などとジッと見つめていると、
「なに? オレになにか言いたいことがあんの?」
軽く笑われて、顔を覗き込まれた。
「えっ? あ…いえっ…」
マズイ…気づかれた。
「残念だけど、オレは女の子を紹介できないよ。悪いね、大人にしてあげられなくて。クスッ」
「ちがいますっ! なんスか、内藤さんまでっ!」
未だにクスクス楽しそうに笑ってるし。
「オレも最近女の子に縁がないんだよなぁ。だから紹介できないから、やっぱりオレが相手しないとダメかな。
男でもOKだよね? 堂本君」
椎凪さんもそんなことを言って笑ってるし。
「遠慮しますっ!」
そんな相手いらん!
「えーしてもらえば? 椎凪君、上手だよ。きっと」
内藤さんが平然と言ってる。
「なにが上手なんですか! なにがっ!!」
まったく……ふたりして俺のことからかって。
俺は顔を真っ赤にして、この勝てそうもないふたりの間に挟まれながら食堂からの廊下をブツブツと文句を言いながら歩いていた。
『あーいいオモチャ』
と椎凪と内藤さんのふたりは同じことを思っていたのでした。