オレの愛を君にあげる…



66




耀くんはときどき、オレにすごく甘えるときがある。

「んー椎凪…」
「耀くん」
「ちゅっ♪ ちゅっ♪」

オレの名前を呼んで、何度も何度もオレにキスしてくれるんだ。

耀くんからキスしてくれるなんて、あんまりない。
常にオレが耀くんにキスを求めるから。

「んー」

オレに抱きついて、胸にキスをしてくれる。
軽いキスだから、すっごくくすぐったい。
今は頬ずりに変わって、鎖骨の下辺りをスリスリしてる。

「んーキモチいいー」

耀くんが安心しきった顔で目を閉じたまま、オレに頬を摺り寄せる。
絶対抵抗しちゃいけない。
ただ黙って、耀くん動くのを邪魔しないように優しく抱きしめて、耀くんの好きなようにさせてあげる。
今度はそのまま顔を上げて、オレの首筋と耳にキスをしながら舌を這わせてる。

「……ふぅ……はふ……」
「……んっ…」

ピチャピチャと舐める音がダイレクトに耳に響くと、耀くんを抱きかかえながら少し感じ始めるオレ。

今まで女の子にそんなことされても、感じることなんてなかった。
耀くんにされると、こんなに自分が感じるなんて初めて知った。

どんどん耀くんの行動がエスカレートする。
今度は反対の首筋と耳にキスをし始めた。
チクリと首筋が疼いた。
あーキスマークをつけるつもりらしい。
ずっとオレの首筋に耀くんの唇と舌の感触が当たって、それが暖かくて柔らかい。
耀くんの吐息さえ甘く感じる。

ちょっと満足したのかオレの正面に回ると、上目ずかいにオレを見つめてくる。
だからオレも見つめ返す。

「ふふふ……」

笑って、テレた顔が可愛いったら。
それからオレの顔を両手で挟んで、キスをしてくれる。
最初は触れるだけのキスだけど、オレが唇と舌で誘いをかけると途端に濃厚な舌を絡めるキスをしてくれる。
なにもかも初めてだった耀くんに、このキスを教えたのはオレだ。
首に両腕を絡ませて、何度も角度を変えて情熱的なキスをしてくれる。



「椎凪ぁ……オレのこと好きぃ?」

トロンとした甘ったるい声でオレに訊ねる。

「好きだよ、当たり前でしょ」
「本当?」
「本当!」
「オレも大好き。好きだよ…椎凪…」

オレは返事の代わりに、ニッコリと微笑んであげる。
そして今度はオレから、触れるだけのキスを耀くんの唇にしてあげる。

耀くんがお酒も飲んでいないのにこんなふうになるのは、耀くんにも理由はわからない。
でもときどき無性にオレに甘えたくなるらしい。
どんな理由があってそのスイッチが入るのかわからないけど、オレは大歓迎だ。
でも、オレに抱いてほいわけじゃないんだ。

「んーーちゅっ♪」

今は背中に何度もキスをしてる。
なぞるように、歯も立てる。
痛いわけじゃないし、逆にくすぐったいくらいに軽い。
背中にあたる耀くんの髪がオレの素肌を撫でるたびに身体中がゾワゾワして、それだけでも ってしまいそうになる。
そこは胸と一緒に耀くんの好きな場所だから、満足するまで堪能するつもりらしい。
だからオレも、そこを執拗に攻められると弱いんだろうか。

耀くんはオレの身体で遊ぶ。
オレを感じさせたいとか、そんなんじゃない。
自分の気が済むまで『オレ』で遊んでるだけなんだ。
だからしばらくすると、

「椎凪…椎凪…」

オレの名前を呼んでオレに抱きついて、オレの胸に顔を摺り寄せてくる。
だからオレは優しく頭を撫でてあげる。
何度も……何度でも。

「大好き……椎凪…大好きだよ…」

満足して、満たされた声で言ってくれる。

「愛してるよ、耀くん。ずっと耀くんだけを愛してる」

だからオレも、答えてあげる。

「…………すぅ……」
「あれ? 寝ちゃったの? 耀くん」

いつの間にか、耀くんが静かになってた。
腕の中の耀くんを見下ろすと、可愛い寝顔の耀くんが安心しきった顔で眠ってた。

「クスッ」

最後はいつもこう。
安心して寝ちゃうんだ。

無意識にいつも心に負担を抱えてる耀くん。
きっと知らないうちに無理をしてるんだ。
熱を出すときもあるけど、きっとこれで心のバランスを取ってるんだよね。

オレで耀くんが癒されるなら、いつだってオレを好きにしていいんだ。
耀くんを癒しながら、本当はオレも癒されてるんだよ。
だからオレを……オレだけを求めて……耀くん。
耀くんがオレだけを必要としてくれるなら、それがオレが生まれてきた意味で生きていく理由だから。

「耀くん……」

もう少しこのまま耀くんを抱きしめて過ごすことに決めて、オレの腕の中で安心しきって眠る耀くんに触れるだけのキスをたくさん贈った。

そんな耀くんを抱きしめて、オレも静かに目を閉じた。






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