いつもの朝。
隣を見ると、耀くんが静かに寝息を立ててスヤスヤ眠ってる。
オレはそのまま耀くんの上に覆いかぶさって、しっかりと耀くんを抱きしめる。
頬ずりをして、おはようのキスをして、もちろんしっかりと舌を絡ませる深いキスだ。
耀くんは筋金入りの寝起きの悪さだけど、ちゃんとオレに反応してくれる。
ただ、このくらいじゃ起きないけどね。
だからオレは勝手に耀くんで遊ぶ。
首筋に舌を這わせて、耳たぶを軽く噛む。
「…んっ…」
さすがに感じたかな?
耀くん感じやすいから。
「…椎…凪?」
珍しい、耀くんが起きた。
「おはよう、耀くん」
「んーおはよう…」
軽いキスを交わす。
起きてもオレの気分が変わることはない。
まずはパジャマのボタンを外す。
いつやってもドキドキする。
ナゼか耀くんは必ずパジャマを着て寝るんだよな。
どうせオレに脱がされるのに、なんでなんだろう?
ん? あれ? でも、なんか変だぞ?
…………ん?
「な゛あ゛ーーーーーーっっ!! む…胸が……耀くんの胸が……ないっ!?」
オレは叫んで飛び起きたっ!
耀くんが眠たそうに目を擦りながら起き上がって、
「なに言ってんの? 椎凪。オレ男なんだもん、当たり前じゃん」
平然とそう言った。
「うっ…うそ…だ…違う…よ…」
情けないほど声が震える。
「なんで? 昨夜も愛し合ったじゃない」
「う…うん…そうだけど…」
たしかに昨夜も、長い時間愛し合った。
でも、そのときは胸があった……と思う。
「変な椎凪」
ニッコッと笑った顔は、紛れもなくいつもの耀くんだ。
いつもと同じ朝、いつもと同じ部屋、いつもと同じ会話。
全てがいつもと同じ。
耀くんが本当の男の子って以外は、みんないつもと同じ。
オレだけが違うのか?
あっという間に夜が来た。
出かけた記憶がないのに、自分の中ではちゃんと仕事をしたような気がする。
いつものように耀くんとベッドに入った。
ちゃんと耀くんはパジャマを着てるし、いつもとなにも変わらない。
キスの仕方も、耀くんの感じる声もいつもと同じ。
でも……
「どうしたの? 椎凪」
耀くんがいつもと同じ瞳でオレを見てる。
「えっ? ううん…別に…」
ナゼか耀くんから視線を外した。
「オレが男だから、イヤなの?」
「えっ!? 違うよ。そんなこと……」
ヤバイ…耀くんの機嫌が悪くなってきた。
「うそだ! オレが男だからしたくないんでしょ?」
「ち…違うって…」
「椎凪、オレが男でも女でもどっちでもいいって言ったじゃないか!」
「そ…そうだけど…」
オレは耀くんが男でも、本当に抱ける。
でも、どうもいつもとなにかが違う。
耀くんだけど、耀くんじゃない。
大体手術もしてないのに、あった胸がなくなるっておかしいだろ?
どんなイリュージョンだよ!
なにこれ? 夢?
「もー椎凪のばかっ! 椎凪なんて大嫌いだ!! 別れてやるっ!」
「!!」
その言葉がグッサリとオレの胸に突き刺さって、気がつくとベッドの上で飛び起きてた。
「ハァ…ハァ…ハァ……」
息が荒い。
心臓もバクバクいってる。
今は夢? それとも現実?
「…………」
隣で耀くんが静かに寝息を立てて眠っている。
オレは勢いよく布団を剥ぎ取って、耀くんの上に馬乗りになった。
慌てふためいていたオレは気を使うこともできず、乱暴に耀くんの身体を仰向けにした。
そこまで乱暴にされて、さすがに目が覚めたらしい。
目を擦りながら、オレの名前を呼んだ。
「ん? 椎…凪? どうしたの?」
オレはボタンも外さずに、パジャマの前を掴んで左右に思いっきり広げた。
「!!」
何個かのボタンが弾け飛んだ。
耀くんがビックリして、言葉も出ない。
「胸がある。本物だ。こっちが現実だ……」
ホッとした。
耀くんが女の子だからホッとしたんじゃない。
いつもと同じに戻れたんだと安心したんだ。
「椎……凪?」
耀くんが驚きながら、信じられないといった顔をしてる。
「もう、いきなりなにすんの? ヒドイじゃん!」
慌ててパジャマの前を押さえて、防御体勢だ。
でもオレはパジャマを掴んでるその手を掴んで、耀くんの頭の上で交差させてオレの片手で押さえ込んだ。
空いてるもう片方の手で、パジャマのズボンを無理矢理脱がせる。
「あっ!?」
耀くんが焦ってる。
閉じかけた足を片手で押し広げて、無理矢理耀くんの脚の間に自分の身体を押し込んだ。
そのまま慣らしもしないで耀くんを貫いた。
「うっ! ああっ!」
優しくとかゆっくりとか、考えてる余裕がなかった。
思いっきり耀くんの身体をオレの身体で押し上げる。
昨夜の行為の名残で少しは潤っていたから、抵抗がありながらも一気に耀くんの身体の奥まで辿り着いた。
そのまま大きく動き出す。
「……いたっ…やっ…あっ…椎凪…ヒドイ…いきなりなんて……」
耀くんが身体を仰け反りながら、呟くように言った。
ギュッと目を瞑ってちょっと辛そうだ。
「ごめん…耀くん…でもね…嫌な夢を見たんだ……耀くんに別れるって言われた」
言いながら、さらに激しく耀くんを揺さぶる。
「あっ…オ…レに? でも…夢…だろ? んっ…んんっ! あっあっ!」
耀くんも感じ始めてる。
すぐにオレに反応する身体になってきたんだ。
「夢だけど…辛い…慰めて…耀くん…」
耀くんの腰に手を伸ばして、オレのほうに引き寄せた。
「椎…凪……あ…あっあっ…」
耀くんの息も弾んできてる。
「でも……オレが別れるって言うなんて一体なにしたの? 椎凪?」
「え゛っ!?」
思わず動きが止まる。
まさか男の子の耀くんを抱けなかったなんて言えない。
「ねえ……なにしたの?」
耀くんが明らかに疑いの口調でオレに聞く。
「……夢…だから…耀くん……」
顔が引き攣ってるのがわかる。
頑張れ、オレ!
「でも、それで今オレは強引に椎凪に抱かれてるんだろ? ねえ? なんで?」
「…………」
なんだか……ヤバイ沈黙?
「浮気したの? 椎凪」
重〜い言葉と言い方だった。
うわぁ……マジ、ヤバイ!!
「ちっ、ちがうよ!」
「じゃあ、なに?」
明らかに、怒ってる。
「もっ、もう忘れちゃったっ! 忘れた!」
オレはどうしょうもできなくて、情けないことに誤魔化してしまった。
「あーー! なんかそれってズルイ!」
「わっ!」
途中だったのにベッドから蹴り落とされた。
しかも、
「もう今日は椎凪とはしない!」
って、耀くんに言われちゃったしーー!!
考えてみたら、これって今年初めての『H』だったのに……ウソだろーーっ!!
「耀くん! ちょっと考え直してよ」
「やだっ! 夢でも浮気した人と絶対しない! 初夢でそんなの見る? ヒドイ! 椎凪!!」
「だから、ちがうって!」
オレはそのあと裸のまま耀くんの誤解を解いて、今度は最後までお相手してもらえるように説得しなければならなかった。
新年早々、なにやってんだ……オレ。