オレの愛を君にあげる…



70




「ん…あっ…」

オレが動く度に、耀くんから声が漏れる。

「椎…凪…ベッド…行こうよ…んっ…」
「なんで?」

なんでかなんて、わかってるのに聞き返す。

「だって……立ってすると……すごく感じる……」

最後のほうは、恥ずかしそうに呟く。

「じゃあ、余計やめられないなぁ……」

耀くんに向かって宣言すると、さらに激しく耀くんを攻め始めた。


シャワーを浴びて浴室を出ると、ちょうど耀くんが寝室に向かうところだった。
だからそのまま耀くんを掴まえて、廊下の壁に追い詰めてその場で愛し合ってる。

「ああっ! ちょ…椎…」

オレを掴んでいる耀くんの手に力が入る。
弾んでる息も、どんどん早くなる。

「耀くん……オレ、耀くんのことが好きで好きでたまらないんだ。でもね……」

耀くんの頬を撫でながら、話し続ける。

「耀くんをメチャクチャに壊したくなる。なんでなんだろう。こんなに好きなのに……」

耀くんを抱いても抱いても満足することがない。
だから、耀くんを離すことができなくてずっと抱いていたい。
耀くんが、オレの前からいなくなってしまったらどうしよう。
そんな恐怖がいつもある。
だからいつも抱いて、キスして離さない。
離せない……離したくない。


疲れきった耀くんをベッドに運んでキスをした。

「ん……ごめん…椎凪…オレ…動けない…」

荒い息のまま、耀くんが呟く。

「いいんだ、耀くん。オレが勝手に耀くんのことを抱くから」

耀くん……好きだよ。
愛してる。
耀くんが動けないのわかってても抱くなんて、オレひどいよね。
でも……オレ、不安で不安でたまらないんだ。
本当にオレのこと、ずっと好きでいてくれる?
いつか……このオレの好きっていう気持ちが、耀くんを苦しめるのかな。
重荷になるのかな。
オレは相手を求めすぎるから。

オレの愛し方は、倫子さんには拒絶された。
耀くんに拒絶されたら、オレ……どうしよう。
どうしよう……耀くん!!
そう思うと怖くて不安で、力一杯耀くんを抱きしめた。

「椎……凪?」
「オレのこと……抱きしめて……お願い……耀くん」
「うん「椎……凪?」
いいよ」

耀くんがギュっとオレを抱きしめてくれる。



「椎凪……」

オレを求めすぎて、不安になっちゃったの?

「好きだよ、椎凪。大好きだよ。大丈夫、椎凪の気持ちは全部オレが受けとめてあげるから。
椎凪はなにも心配しなくていいんだよ」
「耀くん……」

椎凪……泣きそうになってる。
そんなに不安になっちゃったの?

「椎凪、言ってくれたろ? オレは椎凪のために生まれてきたって。だからオレは椎凪のために生きていく。
だから椎凪の想いもすることも、全部受けとめるから。大丈夫だから」

椎凪の唇にそっと指で触れる。

「もっとオレを愛して。もっとオレを抱いて。椎凪が満足するまで、オレは平気だよ。
壊れたりしないし、椎凪の気持ちが重荷になることもないから。
好きって……愛してるって言ってくれないと、オレ不安になるから。抱いてくれないと、嫌われたのかと思うから。
椎凪だけなんだよ、オレのこと好きって……愛してるって言ってくれるの」

指先で、椎凪の頬を撫でる。

「だから……ずっとオレの傍にいて。絶対オレの傍から離れないでね。
椎凪が居るべき場所はオレの傍だから。どこにも行っちゃだめだよ」
「うん……行かない。どこにも行かない……いつも耀くんの傍にいる」

オレの手を椎凪がギュッと握りしめてくれる。

「うん。約束ね、椎凪」
「約束するよ。耀くん」

そう言って、オレにキスをしてくれた。

椎凪と付き合うって決めたとき、自分で決めたんだ。
オレが椎凪のこと、全部受けとめてあげる。
不安を取り除いてあげる。
オレにしかできないこと。

それがオレの存在する理由で、オレの生まれてきた理由。
そして……オレが生きている理由。


耀くんをしっかりと抱きしめる。
耀くんはオレをわかってくれる。
今も不安になったオレを、安心させてくれた。
こんな小さい身体なのに、心は広くて深い。
オレを受けとめて、理解してくれる。

胸の暗くて深い穴が塞がる。
耀くんで満たされてく。
耀くんがオレを愛してくれる。


そんなことがあった翌日。
オレは最高に気分がよくて、ウキウキしていた。
耀くんに愛されてるって実感できてるから、なにも不安じゃなかった。

街の遊歩道で人とぶつかった。
普段滅多に人にぶつかることはないのに、相手がオレが避けたほうに向かって来て、オレに気づいてなかったからだ。

「痛ってーなっ!」
「余所見してたの、そっちだろ?  一唏 いっき
「げっ! お前……」
「お前じゃない。椎凪」


考えごとをしながら歩いてたら誰かとぶつかった。
かなりの衝撃で、一体どこのどいつだと相手を見れば、あのいつかのムカつく野朗じゃねえか!
くそっ…ヤな奴に会った。

「…………」
「彼女にでもフラれたの?」
「ぐっ! う、うるせえなっ!」
「当たり? ハハ、わかりやす♪」

俺はコイツが気に入らない。
なぜかわからないが、コイツを見てると、俺がバカにされてるように感じるからだ。
コイツと恋人のイチャイチャぶりを、この前見せつけられたせいもある。

俺にも恋人は いる。
幼馴染みで、居候してる家の娘だ。

俺のお袋は親父と離婚して、他に男をつくった。
そして俺のことが邪魔になったらしい。
いつの間にか、俺を置いてどこかに出て行った。
まあ、毎日“俺がいなければ”って殴られるよかマシだったから、俺は気にしてないけど。

親戚も引き取ってくれなかったから施設行きかと思ったけど、なんの気紛れか隣に住んでた
あきら のおふくろが俺を引き取ってくれた。
央のところも母親しかいなかったけど、医者だから金はある。
俺ひとりくらい、面倒見てやるって言ってくれた。
小3のときだ。
央は小5。
元々俺は央が好きだったから同じ屋根の下に住めて嬉しかったし、男の影がちらつけばすぐわかる。
央が高校に入学するとき、俺のものにしときたかったから無理矢理俺のものにした。
かなり早目の初体験だったが、それから央は俺のもんだ。
と、思ってた。

でも最近、俺が抱いても反応がイマイチと言うか。
拒否はされない。
でも、なにかおかしい。

央に気持ちを聞いたことはない。
そんなことは、必要ないからだ。
きっと俺達はお互い好きなはずだから。
じゃなきゃ、黙って俺に抱かれてるはずがない。

「君のことだから、強引に迫って嫌がられた?」
「うるせーよっ!」

なんでわかんだよっ!
ムカつく。

「まあ、オレには関係ないから。じゃあね」
「お前ら、男同士で上手くいってんのかよ!」

思わず口走ってた。
そんなこと、聞いても仕方ないのに。

「うまくいってるよ。君みたいに相手がなにを考えてるかわからないなんてオレ達にはないからね」

うっすらと、笑って返事をするアイツ。
俺を見下したようにかえってきた返事に、思わずキレてしまった。







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