Love You !



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「オイ…もう少し安全運転で走れないのか?」
「うるせぇ…あんたは黙ってろ!」
「…………」

やっと連絡が取れた智鶴が彼の部屋に居る事がわかって彼の車で向かってるんだが…
その運転の荒い事荒い事…

でもそれは智鶴の事がそれだけ心配だからだろうとわかる…

僕は星崎の電話に動揺して…何も考えられなかった…
自分のせいで…智鶴に取り返しのつかない事を……

でも智鶴は彼の部屋に1人で居ると言う…
一体それはどう言う事なのか…星崎は智鶴と一緒にいるって言っていたのに…

マンションの駐車場に着いて車を停めてる間もエレベーターを待つ間も
玄関のドアの鍵をあける間もとにかくここに来るまでの全ての事が
彼にとってとんでもなくイライラする事に思えた。

それくらい彼は急いでた……智鶴の為に…?

「智鶴!」

玄関を開けた途端彼が智鶴の名前を呼んだ。
何となく気分が悪かったが今は黙る。

「レンジさん。」

奥の部屋から智鶴が出て来てこっちに向かって廊下を歩いてくる。
その智鶴の姿は数時間前に別れた時と同じで何事も無かった様だ…
違ってると言えば淡いパステルカラーのエプロンを着けてるくらいで…
何だか新婚の新妻みたいだと思った。

だけどそんな事よりも智鶴の無事な姿を見て僕は智鶴の傍に…

「!!」

そんな僕よりも彼の方が先に智鶴の傍に駆け寄った。

「あ…レンジさん…あの…お兄ちゃんが…」

レンジさんがお兄ちゃんの目の前で私をぎゅっと抱きしめたから…

「智鶴…」
「レンジさん…」
「何で電話に出ねぇんだ…心配すんだろうが…」
「ご…ごめんなさい…んっ…」

私を抱きしめてたレンジさんの唇が首筋に押し付けられたから…身体がビクンと跳ねた。
でもそんな跳ねた身体をレンジさんの両腕がしっかりと押さえた。

「ちゅっ ♪ ちゅっ ♪ 」
「ひゃん!」

また顔中にキスされる。

「なっ!?」

お兄ちゃんの驚いた声が聞こえた…

「レンジさん!?」

ひゃぁ〜〜〜お兄ちゃんが見てるんですけど…でも……拒めない…

「智鶴…」
「は…ぁ…」

また首筋に今度はレンジさんの頬が擦り寄せられる…
私はもう身体中が痺れて力が抜けちゃう…

「寿命が縮んだぞ…」
「ごめんなさい…ンッ…」

今度は唇に深い深いキスをされる…
レンジさんの舌が確かめる様に私の舌を絡めて離さない…

「ふ…ぅ……んん…」

お兄ちゃんが…見てる……

「ンンッッ!!あ〜コホン!!!」

「チュッ…」
「は…ぁ……」

そんなわざとらしいお兄ちゃんの咳ばらいで触れるだけのキスを最後にして
やっとレンジさんがキスを止めてくれた。

「敦さん。」

レンジさんが私の肩を抱きしめながらお兄ちゃんの方を向いて話し出した。

「……何だ。」

「俺の事が気に入らないのわかる…智鶴の相手として受け入れられないなら
それでも俺は構わない。でも今日みたいな事はもうやめてもらえるか。
でないと…智鶴の兄貴でも俺はあんたを許せなくなる。」

「………」

「どんなに反対されても認めてもらえなくても俺は智鶴と別れたりしない。
だからって智鶴を危険にさらす様な事はもう二度としないでくれ…頼む。」

「僕だって智鶴を危険な目に遭わせることなんてするつもりは無いよ。
今日は…まさかこんな事になるなんて想定外で…」

「お兄ちゃん…」
「!」

「お兄ちゃんが私の事心配してくれるのわかるし…嬉しい…でも私レンジさんの事が好きなの。
レンジさんの事が誰よりも好き。ずっと傍にいたいと思ってる…だからお兄ちゃんにも認めて欲しい。
私が選んだ人を信じて欲しいの…」

「智鶴…」

「お願い…お兄ちゃん…」

「……星崎には何もされてないの?」
「うん…あの後…お兄ちゃんと別れた後すぐに星崎さんとは別れてその後はずっとレンジさんの家にいたの。」
「……そう…」
「星崎さんも今好きな人がいるって。」
「え?……そうか…なんだ…だったらそう言ってくれたらいいのに…」
「でもまだお付き合いはしてないって言ってた。」
「そう…」
「お兄ちゃん…」
「…………」

お兄ちゃんはとっても悩んでる顔でしばらく黙ってた…

「彼が…智鶴の事を大事に思ってるのはわかった…ここに来るまでの間の彼を見てたら
この僕にもどれだけ智鶴の事を心配してたのかわかる…
ただやっぱり僕は芸能人と付き合う事はあまり賛成出来ない…
きっと普通の人とお付き合いするよりも色んな事が起きると思うよ。」

「お兄ちゃん…」

お兄ちゃんの心配する事はとってもわかる…
あの事だって…レンジさんが俳優と言う職業だったからあの人につけ込まれてしまったんだし…

でも……

「大丈夫だから…お兄ちゃん。」
「ん?」

「その時はレンジさんと2人でちゃんと乗り越えるから……」

「智鶴…」

「大丈夫だから…他にもちゃんと助けてくれる人もいるから…」

「智鶴には俺がずっと傍にいる…だから安心してくれ…敦さん。」

「………はぁ…」

お兄ちゃんがガックリと項垂れて溜息をついた。

「後悔しないの?智鶴…こんな暴力男…僕に拳を叩き込んだんだよ。」
「ええっっ?!本当ですか?レンジさん??」

驚いてレンジさんを見上げた。

「脅しただけだ。ちゃんと外しただろ。」

そんな事をレンジさんがサラッと言う……本当に…やったんだ……

「今まであんな事されたこと無かったよ。」
「貴重な体験が出来たな。」

彼がイヤミっぽく笑う。

「………ほら!いつまでくっ付いてるんだ!僕の目の前でそれ以上智鶴とイチャイチャするな。」
「お兄ちゃん…」
「なんだ?」

「ありがとう…大好き。」

「!!………本当にちょっとでも嫌な事があったらサッサと別れろよ。」
「縁起でもない事言うんじゃねーよ。」
「君はもう少し年上を敬え!それに僕は智鶴の兄だよ!!」
「俺だって普段はちゃんとそう言う面では気を使ってる。でも一応人間性見るからな。」
「どう言う意味だ!」
「まんままだよ。まんま!」
「はあ?僕には敬語を使うのも考えると言う事か?」

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

「ン?」

そんな時に鳴った僕の携帯の相手は星崎からだった。

「もしもし。」
『フフ…智鶴ちゃんに会えたか?』
「お前…」
『小笠原にはいい薬になっただろ?』
「効き過ぎだ。」
『そうか?お前にはそのくらいが調度いいんだよ。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるぞ。』
「殴られる所だったよ。」
『マジか?はは ♪ 流石 「鏡レンジ」 か?』
「まったく…」


「レンジさんお仕事大丈夫なんですか?」

お兄ちゃんが話してるのを横目にレンジさんに話し掛けた。

「また夜に戻る。今空いた時間戻っただけだ。」
「そうなんですか…」

そっか…ちょっとガッカリ…かな…

「何だかイイ匂いがするな。」

今まで気付かなかったがキッチンから料理のイイ匂いが漂ってる。

「あ…待ってる間に色々作ってたんです。
最近レンジさんに作ってなかったから…あ!これから戻るならお弁当作りましょうか?」
「作ってくれるのか?」

「もちろんです ♪ とびきり美味しいのを作りますから!」

「ちゅっ ♪ 」

「あ…」

レンジさんが額にキスしてくれた。

「兄貴が帰ったら…な。」

私の耳元にそんな言葉をコッソリと呟くといつもの 「いつもじゃない笑顔」 を私に向ける。

「………」

私は一気に顔が赤くなる。

「ちゅっ ♪ 」
「んっ…」

今度は唇に触れるだけのキス…

「レンジさん……」

私はレンジさんを見上げて…何だかとっても嬉しくてニコニコしちゃう。

「こ…こらっ!イチャイチャするなって言ってるだろっ!!!」



お兄ちゃんが何か言ってるけど…今の私には何にも聞こえない……


だってレンジさんの両腕が私の身体をしっかりと抱きしめてくれて…

私の身体で…レンジさんの温もりを…その全部を感じてるんだもん ♪





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