想い想われ?



番外編・プレゼント大作戦! 02 ああ、なんて幸せな時間なんだろう




「メリークリスマス」
「メリークリスマス」

12月24日の夜、すべての予定を避けて静乃さんとのイブの夜を確保した。
今までなら仕事上、巷でのイベント事を優先することはなかったけれど、静乃さんと知り合ってからは巷でのイベント事が気になりだした。
特に今回はふたりにとって、初めてのクリスマスだから余計なのかもしれない。
予約したお店は、ふたりには思い出深い店だ。
まだお互いがすれ違っていたころ、突然僕の前からいなくなってしまった静乃さんに再会した場所。
お互いのグラスをカチンと合わせて微笑みあう。
ああ、なんて幸せな時間なんだろう。


「綺麗……ありがとう、史明くん」
「いえ、静乃さんに似合うと思って」

僕が送ったゴールドペンダントネックレスを、箱から出してニコリと微笑む静乃さん。
真珠を一粒使ったもので、シンプルだけど華美をあまり好まない静乃さんにはとても似合うと思う。
僕は席を立って静乃さんのうしろに回る。

「貸してください、つけてあげます」
「ありがとう」

静乃さんの手からネックレスを受け取る。
つけている間、静乃さんの白くて柔らなそうな項から目が離せない。
今着ている服に合わせて、今日は髪をアップでまとめているから。
ああ……項が眩しすぎて思わず目を細めてしまう。

「はい、できましたよ」
「ありがとう」

本当はそのまま、項に口づけを落としたかった。
けれどここは公衆の店内。
なんとか思い止まって自分の席に戻る。

「とても似合いますよ」
「いつも高価なもので申し訳ないわ」

静乃さんがちょっとだけ眉を下げて困った顔をする。

「いい加減慣れてください。僕はそれだけの収入がありますし、静乃さんが心配することはなにもありませんから」
「それはわかってるんだけど……やっぱり気になっちゃうのよね」
「本当に気にしなくていいんですよ。その代わりと言ってはなんですが、僕は静乃さんからいつも僕が贈った以上のものを返していただいてますから」
「そうかしら?」
「ええ。それに僕が贈ったものを、静乃さんが身に着けていてくれるのがとても嬉しいんです」
「史明くん……」

僕の言うことをわかってくれたのか、身体の中から温まるようなホッコリ笑顔で笑ってくれた。
ああ……もう……静乃さん、愛してます!

静乃さんからのプレゼントは、有名なデザイナーがデザインしたという革のベルトだった。
今までプレゼントを貰ったことがあるけれど、ベルトというのは初めてだった。
ネクタイは貰ったことがある。

「色々考えたんだけど、ほとんど物は史明くん持ってるし。それに車で移動してるから、定期入れとか必要ないものね。
秘書もいる副社長に仕事関係の物もなかなか思いつかなくて。
お財布も……ね、史明くんちゃんとしたもの持ってて、まだ新しかったから。
ネクタイも考えたんだけど、あまり贈られたことがないかなあってベルトにしたの」
「たしかに、初めて貰います」
「そう? 気に入ってもらえると嬉しいんだけど」
「もちろん、気に入りました! この金具のところも洒落てて素晴らしいです!!」
「有名なデザイナーさんが制作したんですって」
「ありがとうございます! でも、僕は静乃さんからでしたらどんなプレゼントでも嬉しいですよ」
「ふふ…」

僕の言葉に静乃さんがまたフンワリと笑う。
ああ……今日は最高のクリマス・イブだ!

途中、昔馴染みのオーナーと話をしたりシェフとも話をしたりして、もてなしも料理も満足のいくものだった。





「んっ……史明……くん……あふ……」
「静乃さん……」

お店から森末さんの運転する車で家に帰って、ずっと我慢していた想いがついに抑えきれずに玄関に入った途端、静乃さんを抱きしめて唇を奪う。
靴も脱がずに静乃さんのキスを貪るように求めると、最初はギュッと僕の上着の襟を掴んでた静乃さんの手から力が抜けていった。

「……はあ……」
「静乃さん……」

名残惜しげに静乃さんの唇を放して、額同士をくっつける。
近い距離でお互いの視線を合わせると、潤んだ静乃さんの瞳とぶつかった。

「ん……史明くん……」

ちゅっと軽く触れるだけのキスを静乃さんの顔中に贈る。
額、瞼、頬、ハナの頭、そして唇へ。
そこから首筋に唇を落として、軽く口を開いてカプリと軽く押しつけるように静乃さんの首を上に向かって噛んでいく。
噛んでチロリと舌先で舐めるたびにピクンと静乃さんの身体が跳ねるけれど、そんな静乃さんを抱きしめたまま同じことを繰り返す。
柔らかそうな静乃さんの耳たぶに辿りつくと、優しくハムリと噛んだ。

「……んんっ……やあ……」

噛んだあと耳の輪郭をなぞるように舌の先で舐め上げると、くすぐったいのか感じているのか静乃さんが身体を捻って逃げようとする。
そんな静乃さんを抱きしめる腕に力を入れて逃がさない。

「静乃さん……貴女が欲しい……」
「……あ…ん……」

自分の耳の近くで聞こえる静乃さんの悩ましい声で、僕の欲情がさらに掻き立てられる。
静乃さんの背中と膝裏に腕を入れて抱き上げると、靴を脱ぐのももどかしいほどに静乃さんを抱き上げたまま寝室に向かう。
途中静乃さんに自分の靴のことを指摘されたけれど「あとで僕が脱がしてあげますから」と言ってそのまま寝室のドアを開けてベッドの上に優しく静乃さんを下ろした。

「静乃さん……」

横たえた静乃さんの靴を脱がせ、優しく包み込むように覆い被さって耳や首に唇を這わず。
それに応えるように、静乃さんの両手が僕の腕をなぞって首に回される。

「史明くん……」

名前を呼ばれて、それを合図のように静乃さんの身体に手を伸ばす。
唇に触れるようにしていたキスを、貪るような深いキスに変えながら僕と静乃さんを隔てる服を剥ぎ取っていく。

「ん……はあ……」

目の前にいつもと同じ、静乃さんの柔らくて温かくてなめらかな素肌。
指先でたしかめれば、今日は僕が贈ったネックレスが静乃さんの首に光り輝いてた。

「静乃さんにとても似合います」
「……え?」

目を細めながら、指先で真珠の部分を静乃さんの肌の上で転がす。

「それに裸にアクセサリーだけを纏ってるって、とても情緒的で悩ましい」
「史明くんが……服を脱がせたんでしょう」

組み敷いているんだから静乃さんが上目遣いに僕を見つめるのは仕方ないことなのに、そんなことまでも今の僕には煽る要素にしかならない。

「ああ、もう……今夜は加減できそうにありません」
「…………」

静乃さんが一瞬目を瞠(みは)ったけれど、そのあとすぐにすべてを受け入れることを承諾したようにクスリと笑った。

「静乃さん……」

僕も微笑み返すと、静乃さんの唇に自分の唇をそっと重ねた。









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