ひだりの彼氏


21




「もうやっぱりシングルに2人はキツイわよ!あなた背高いし…」

泊まりたいと言う彼の申し出を自分の判断ミスで泊める事になってしまった……
あんなに心配する顔が胸キュンって……どんな顔の構造??
何か顔からビームでも出てるんじゃないのかと思っちゃうほど焦って慌てまくって…
泊まる事をOKしちゃった私…大反省!!

「全然キツくないし。」
「そりゃあなたは壁際じゃ無いからでしょ!大体なんで私が壁際…」
「仕方ない。そっちがオレの右側なんだから。いいよ交換しても。」
「いい!そっち側嫌い!」
「なんで?」
「………どうしても!」

本当はそっちから彼の顔を見ると胸の中が何でだかざわめいて…
ソワソワして…落ち着かないから…

なんだけどそんな事彼には言えないから…

「………」
「なに?」
「どうしてこんな事になってるのか悩んでるの。」
「諦め悪いね。奈々実さん。」

ベッドの上に彼が仰向け私は俯せで寝っころがってる。

「だってあなたまだ高校生なのよ!こんな事良くないわよ!」
「そう?」
「そうよ!」
「意外に真面目なんだね。奈々実さんって。」
「私は真面目です。」
「だから誰とも付き合ってないの。」
「か…関係ないでしょ!」
「そうだね。今の奈々実さんには関係ない。」
「………」

「奈々実さん。」

「!!」

スイッっと彼の顔が近付いたからサッと顔を後ろに引いた。危なかった!

「あ!逃げた。」
「そりゃ逃げるでしょ!」
「なんで?」
「なんでって…当たり前…あっ!」

彼の腕が伸びて後頭部を手の平がしっかりと掴む。

「んっ!!…ふ…ぅ…」

最初からかなり近い位置にいたから逃げられるはずもなく…簡単に口を塞がれた。

「ん……ちゅっ…ちゅっ…ンン…」

舌は…絡ませてこない…
唇の触れるだけのキスが延々と続く……

「も……やめ……ンッ……」

彼の肩を掴んで押し戻す…
足もジタバタしたけど全く気にする気配が無い!!

「くっ……奈々実さんくすぐったい。」

「はぁ…はぁ…」

流石に脇の下くすぐったら離れた。

「あ…あのね…こんな事するなら帰って!!」
「こんなこと?」
「また惚ける!!キスよ!キス!!」
「だからキスじゃ無いって。いてててて…」
「どう考えてもキスでしょ!!このエロ高校生!!」

思い切り頬っぺたを抓ってやった!

「これはお休みの挨拶だって…もう痛いな。」

抓ってた手を捕まれて離された。

「挨拶でもキスはキスでしょ!勝手にそんな事しないのっ!
大体どんなのがキスだって言うのよ!!あっ…」

「………」

つい…そんな事言っちゃった…今日は失敗だらけ…

「いいよ…奈々実さんになら…キスしても…」

あの無表情な顔で言われて…本気に思えて…怖くなった…

「あ…い…いい…しなくて…いいから…」

彼が怖いんじゃない……
自分の気持ちが…揺らぎそうで…怖い……だって…

「やだ。」
「だから…良いってば…」

彼に背中を向けて逃げた…どうかこれで諦めて!


それからどの位経ったのか……うんともすんとも言わない…


「…………」

ソロッと背中越しに振り向いた…なっ!!寝てる!?
私の方を向いたまま彼が気持ち良さそうに寝てるっっ!!!

「もう…ウソでしょ…まったく…人がどれだけ気にしてたと…」

軽く閉じられた彼の唇に目が行く…淡いピンク色…柔らかかったな…

「って…何考えてるんだか…」

相手は高校生よ…年下よ…8つも…

「はあ…」

私は彼のお姉さんと年が同じくらいって言ってたから…
彼の中で私はお姉さんと同じ感覚なのかも…
だから…いちいち彼のする事に振り回されちゃ…

「やっとこっち向いた。」
「え?」

寝てたと思った彼が目を明けた…

「待ちくたびれた。」
「ちょっ…」

彼が上半身だけ起き上がって私の身体を跨いで手を着いた。
私は彼を下から見上げてる…彼の左耳にあの蝶のピアスが見えた…

「!」

手を伸ばして彼の耳と一緒にピアスに触れる…

「学校で大丈夫だったの?」
「うん。」
「そう…」
「いててて…痛い。奈々実さん。」

久しぶりにマジマジと見た彼の左目の下の泣き黒子を人差し指でグリグリと押した。

「この黒子が曲者なのよ……」
「なに?」
「何でもない……」
「奈々実さん。」
「ん?」

「この気持ちは何だと思う?」

「?」

「何だろう。」

「私に聞かれてもわかるわけないじゃない。」
「確かに。でも奈々実さんには触られても嫌じゃない。」
「?」
「奈々実さんが傍にいるとホッとするんだから当たり前か。」

そんな事を言いながら私を跨いだまま頬杖を着きだした。

「あの…考えるならどいて。」
「なんで?」
「この体勢…困る…」
「困るの?」
「………」
「ふむ…あれ何だっけ?」
「は?」
「ああ。」
「!!」

何の躊躇も無いまま…彼の唇が私の唇に触れて…塞がれて…

「うっ……ふ…ぅ…」

今までとは違う…ちょっと積極的なキス…

「奈々実さん…」

唇がちょっと離れた時に彼が囁く様に私の名前を呼んだ…
その声が…呼ばれた名前が…私の抵抗する力を奪う…

「高校生の…くせに…」
「奈々実さん…」

ちゅっ…と触れるキスをされた…
くすぐったい様な…でも彼の柔らかい唇はいつも気持ちがいい…

「年下の…くせに…」
「オレの名前呼んで…」
「?」
「まだ1度も呼んでくれてない。」
「呼んで…なんか…やらないわよ…ンッ…う…」

喋ってる隙をついてまた口を塞がれて今度は初めて彼の舌が入って来た。

「んんっ…ンッ!」

逃げても追い掛けられて舌を絡ませてくる。
私よりちょっと彼の舌が熱い気がするのは気のせい?

「は…ぁ…ん…」

最初は私が逃げようとしてたからか強引とも思えるキスだったけど…
途中から私が抵抗しなくなると今度は優しく…撫でる様に舌を絡ませて来た…

このキスは一体いつまで続くのかしら?

「ん…」

クチュクチュと舌の絡み合う音が響く…

私…一体何を考えてるのよ…やめなきゃ…こんなキス…やめなきゃ…

そんな事を思うなら…彼を泊めなければ良かったのよ…彼を遠ざければ良かった…


でも…彼が私の車に乗ってきたんだもの…


「ん…ふ……」

いつまでもお互いの舌が絡み合う…
どのくらいしてるんだろう…彼はまだ離れる気がないみたいで…

ぎこちないわけじゃない…と言う事は慣れてるの?
そうよね…高校生って言ったってもう3年で…
でも今まで恋愛経験なんて無いみたいな事言ってたけど…
遊びなら…経験あるってこと?

「ちょっ……はぁ…んっ…もう…お終……い…ンン!!」

顔を背けてもやめてもらえない…

いつの間にか覆い被さってた彼の腕が私の頭の下を通って肩を抱き寄せてた…
だから仰向けだった私はしっかりと横を向いて…彼のTシャツを握り締めてた。

「んっ!んんっ!!!」

今度は彼の肩をぽかぽかと叩く…今更だけど……

「ちゅっ………はぁ…はぁ……」

やっと彼の唇が離れた…私は息があがって肩で呼吸してる…

本当はまだ離れたくなかっ…た?お互い離れる瞬間まで舌を絡ませてた…

「…………ハァ…」

彼もちょっとだけ息があがってる…

「ハァ……これがオレのキス。自分からしたの初めて。」
「え?」

今なんて??

「い…今初めてって…言った?」
「うん。自分からはね。」
「…………え?」
「ん?」
「あ…あの…聞いてもいいかしら?」
「何を?」
「前から聞きたかったんだけど…なんで触れるだけのキスはキスじゃないって言ってたの?」
「そう言われたから。」
「だ…誰に?」
「絢姉さんの友達。」
「絢姉さん?お姉さんのお友達?」
「オレの一番上の姉貴。その友達がオレにそう言ったんだ。」
「はい?」

言ってる意味がわからないんですけど?

「オレが中学上がる前だったかな…
姉さんの友達が 「これはキスって言わないのよ」 って言って良くオレにしてたから。」

「え”っっ?」

それって……

「ただの挨拶だって…」
「…………」
「皆そう言ってたからそうなんだと思ったし 「これがキスって言うのよ」 ってされたのは今奈々実さんとしたキス。」
「お友達って?いくつくらいの人?」
「オレが中学校上がる前だから相手はハタチかそこらじゃない。姉さんには内緒ねって言って良くされた。」
「…………」

も…もしかしてそれって…弄ばれてたって事??それともただふざけられてただけ?

「い…嫌じゃなかったの?」
「皆優しかったし…嬉しそうにしてたし…って言うかオレそんなのに興味無かったから。
逆にこんなのの何処が良いんだろうって思ってた。
その頃にはもう女子に興味なかっからどうでもよかったしね。」

み…皆?興味無かったって…

「んー3.4人にされたかな?時々遊びに来た時に姉さんに隠れて。」
「…………は?」

……さ…3.4人?

「それがキスだって多分自分でもわかってたけど確かに 「これがキス」 って言われたのとは
全然違うからそうだよなって勝手に納得してただけだけど。やっぱり違うでしょ?」

「え?」

「ただ触れるだけと今みたいにお互いの舌を絡めるって。」

「…………」

また無表情な顔で言う…
結構重い話だと思うのに…彼は軽く話す…

「自分から他人と…女子としたのは奈々実さんが初めて。」
「うそ!」
「うそじゃない。」
「うそでしょ!」
「なんで?」
「だって……」
「だって?」
「…………」

上手だったもの…
ってそりゃ私もそんなに大勢としてるわけじゃないから偉そうな事は言えないけど…

確かに…私の記憶の中では…1番だった…かも…
こんなにドキドキしながらキスしたのって初めだったし…
なのに自分からするのが初めてって…

「ふあ〜〜眠っ……」
「え?」

彼が大きな欠伸をした…

「もう寝ようよ奈々実さん。オレ眠い。」
「は?」
「お休み…」
「ちょっ…」

そう言うと彼は私の上からどいてコテンと横になった。
そして目を瞑るとあっという間に寝息が聞こえた。

流石熟睡男!

「くぅ……」

本当に…あっさりと寝た…

あんなキスしといて何も感じなかったって事?本当に試しただけ??


こっちなんてあんなにドキドキしたのに…

って!何ドキドキしちゃってんのよ!私!!

もうやだーーーーー!!





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