目の前に立ってた女の子の横を彼が通り過ぎて…
だから彼女も彼の後を追って行くのかと思ったらそのまま…ちょっと俯き加減で立ってた。
「あ…あの…わざわざごめんなさいね…私も気がつかなくて…」
「………」
えーと……どうしよう…
ずっと立ってる彼女を目の前に私は立ち去っていいものかどうか迷ってた…
きっと彼を捜し回ったはずだし…
「アイツとは…」
「はい?」
「アイツとは…どう言う関係なんですか?」
「え?」
彼女が俯いてた顔を上げて真っ直ぐと私を見て切り出した。
「立ち入った事聞いてるのはわかってます。でも教えてもらいたいんです。
アイツは…あなたは彼女じゃないって言ってました」
「………」
「本当ですか?」
「………本当よ…」
そう…私達は付き合ってるわけじゃないから…
「遊び…ですか?」
「え?」
「あたし見ちゃったんです…カラオケに行った時…」
「?」
すぐにその言葉の意味を理解できなくて…
「男の人と…廊下で…抱き合ってましたよね?」
「!!」
カラオケ……そう言われて間宮さんの事を思い出す…
確かにあの時廊下に女の子が2人いたのは覚えてる…
でもあの時は相手の顔なんて見る余裕も無かったし…
早くあの場所から離れたかったから…
でも…あの時にあそこにいたのが彼女だったんだ…
「………」
本当はこんな事…この人に聞いても仕方ない事だってわかってた…わかってたけど…
さっきのアイツが……いつもはしない…自分から女の人に手を出して触れるなんてことするから……
それに…並んで歩いてる2人を見てたらあの夏祭りの2人をリアルに思い出しちゃって……
黙ってられなくなった…
「あの人が彼氏じゃ…ないんですか?」
「………」
「図星…ですか?」
「………」
年上の彼女はあたしの質問に黙ってた…だからそれは肯定だってこと?
「やっぱり若い男の子がいいですか?」
「!!」
あたしのそんな言葉に年上の彼女は一瞬ピクンとなった。
「アイツなら遊び相手にちょうどいいですか?
ちょっと変わってるし…自分に執着しなくて遊び相手にはもってこいですか?」
「………」
「なんで何も言わないんですか?あたしの言ってる事が全部図星だからですか?」
「……そう…」
ちょっとの間があって…年上の彼女はそう言った。
「最低……」
本当にそう思って…自然とそんな言葉が口から零れた。
「彼氏が詰め寄るの仕方ないと思う」
「………」
それでも年上の彼女は何も言わず黙ったままだった。
年上と付き合う事が悪いなんて思ってない…現に大学生と付き合ってる子だって何人か知ってる。
でも…彼氏がいるくせにアイツにも手を出してるなんて…
アイツがそんな相手と一緒にいる事も嫌だった。
「歳相応の相手がいるんだから高校生なんて手を出すのやめたらどうですか?」
「…そう…そうね…あなたの言う通りだわ…
休日のデートが高校の文化祭なんて子供臭くてつまらないし…」
「高校生なんだから仕方ないんじゃないですかそれがアイツの本当の歳なんですから」
「そうよね…高校生ですもんね…同じ高校生相手にするのが一番いいわよね…」
「二股かけられるよりはいいと思いますけど?」
「……そうね……貴重なご意見ありがとう。あなたの言う通りよね……
お互い歳相応の相手が一番だわ。やっぱり年下の…高校生なんて物足りなかったわ」
そう言いながらふと彼女が笑う。
「歳が離れすぎなんじゃないですか?」
「……そうかもね……あんまり歳の差があるのはやっぱりダメね…」
「じゃあアイツとはもう……」
「そうね…終わりにするわ………あなた彼のクラスメイト…よね?」
「そうです。水谷って言います」
何だか目の前の年上の彼女に自分の名前を堂々と言えるのが誇らしかった。
「そう…じゃ…」
「………」
そう言うと年上の彼女はあたしに背を向けて歩き出した…
これで良かった…のよ…ね?
だって2人の仲に何かしらあるのならあたしが何を言ったって余計なお世話だって
言えばいいのに…それも言わないで素直に三宅との事を終わらせるって言ったんだから…
あの人だって三宅の事は本気じゃなかったってこと…
それにあの人も高校生相手じゃ物足りないって言ってたし…
これで…彼氏と上手くやるんだろうか……
まあこの後あの人が彼氏と上手くいこうがいくまいがあたしには関係無い事だけど…
ただ…もう三宅には関わって欲しくないと思った…
遠ざかる年上の彼女を横目にあたしは反対方向の校舎に向かって歩き出した。
あたしは心のどこかで……ホッとした気持ちが湧いていた……
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