ひだりの彼氏・ショート


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期末試験も終わって2学期もあと3日。
今日と明日は学校全体の球技大会。
でも腕を怪我してるオレはどの競技にも参加できないから見学するしかない。
本当は休んでも良かったんだけど欠席は出席日数にもかかわってくるから休むのは止めた。
だから朝から保健室のベッドで昼寝タイム。
これが奈々実さんの膝枕付だったらどんなに心地イイかと考えるとキリがないから
仕方なく自分の腕を枕に眠りについた。

期末試験も終わって2学期もあと3日。
今日と明日は学校全体の球技大会。
私が参加してるのはバトミントン。
経験なんて全くなかったけど他の競技に比べればまだやる気になったから。
バスケなんてあんな動き回って硬いボールを受け取るなんて無理だもの。
だって爪が割れちゃったら嫌だから。
バレーボールだってあんな気合の入った相手のボールなんか受けられない。
受け損なって顔面レシーブなんて目も当てられなし。
しかも次の日に腕に青痣なんてそんなの怖すぎる。
後はテニスだけど走り回るのなんてごめんだし。
男子は他にサッカーや野球なんかもあったけど女子はもともと人数が男子より少ないから球技も少ない。
それに球技大会なのにバトミントンなんて…

しかも手抜きでやってた試合でコケて手を擦りむくなんてホントやんなっちゃう!
だからサボリも兼ねて保健室にやって来たってわけ。
しばらくここで時間つぶそう。
そのためについてくるって言った友達も取り巻きの男子も連れてこなかったんだから。


そう……私こうみえても結構人気者なのよ。
自分も他人も認める可愛いらしさ。
自意識過剰なんかじゃないわ。
中学のころからそんな感じでモテモテなのよ。
ちょっとどころじゃない大いに鼻高々よ♪
1年の中じゃ……ううん……この高校の女生徒の中でもダントツに可愛いと思うの。

でも特定の彼はまだいない。
何人か告白されたけどこの人って思える人がいなくて……
それに特定の彼氏なんて作ったら私の人気も半減って感じでしょ?
誰のモノでもないっていうところに皆希望を繋げるんだから。

ガラリと開けた保健室には人の気配はなくて暖房の動いてる音しか聞こえなくて静かだった。


「あら?先生?」

入った保健室に先生はいなみたい。

「自分でやらなきゃだめかしら?」

まあそんなたいしたケガじゃないから消毒してバンドエイドでも貼れば大丈夫。

「ん?」

ふと見ると3つ並んでるベッドの一番窓際に誰か寝てる?
足しか見えないけど雰囲気で男の人?
一体どんな人かとちょっと近寄って枕の方を覗いたら……

「え?」

王子様が眠ってた……

「うそ……」

こんな人がこの学校にいたの?

背はベッドに仰向けに寝て片方の脚は膝を曲げてるから良くわからないけど
ちょっとベッドの長さが足りなさそう。
サラサラの短い黒髪にスベスベのお肌……整った顔に伸ばしたらスラリと長そうな脚……

え?一体どこのどなた?

「…………」
「あ……」

彼が目をあけてゆっくりと私の方を見た。
あら……左目の下にホクロがあるのね……何だか妙に艶っぽくてドキドキするわ。

それに蝶のピアスも洒落てて彼に似合ってる。

きっと 『誰?』 って声を掛けてくれるはず……
ああそれとも私のことを知ってて『1年の景山寧々(kageyama nene)ちゃんだね』
なんて言ってくれるかも。
そんな期待を胸に秘めながら仕切り用のカーテンを軽く掴む。

「…………」
「あの……」

彼がじっと私を見てる……あ!手まで伸ばして……私に触るつもりなのかしら?

初対面なのになんて積極的!きっと私のことを知ってるのね!
ええ……ええ……かまわないわ!髪の毛や頬に触れるくらいは許して……

シャッ!!

「え!?」

一瞬で目の前が真っ白になったのはナゼ?

って……ええーーー!?カーテン閉められた?

う……うそでしょ?いくら何でもこんな失礼なことするものかしら?

「うぅ……」

だからってカーテンをこっちから開けるわけにもいかないし……
仕方なく床に視線を落とすと脱いだ上履きが見えた。
名前は書いてなかったけどあの上履きの色は3年生。

決めたわ!!

これから私の情報網を使ってこの人が一体誰なのか調べてみせるわ!!





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